表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍の聖女ティア ~鳳翼の異名を持ち龍力を自在に操る光輝なる第13王女~  作者: 狩野生得
第一章 至龍の試練(しりゅうのしれん)
7/53

7.せんかれっこうけんをアレンジした聖女様、もうこはさいけんもマスターする

 過剰回復魔法オーバーキュアは邪魔された。でも、千花裂孔拳せんかれっこうけんなら余裕で出せる!

 そして私には、魔法拳まほうけんがある!


 私は拳に過剰回復魔法をまとわせた。


 魔法拳や魔法剣には、メリットが二つある。

 一つはゲームでもおなじみ。相手が苦手としている属性で攻撃できること。

 もう一つは、攻撃が当たる度に、魔法の効果が得られること。これは、実際に魔法が使える世界にきて、自分で魔法を使わないと、実感しにくいかもね。


 実は、魔法というものは、呪文を唱え始めてから実際に効くまで、意外と時間がかかる。

 回復系の魔法は、特にそう。

 強力な魔法ほど、効くまでに時間がかかる。その間、使用者は動けない。


 そして、魔法は一度限りの使い切り。

 連発するには、呪文を繰り返し唱えなきゃならない。


 魔法拳は、そんな時間をゼロにできる!


 つまり、こういうことよ!


「千花裂孔拳!」

 過剰回復魔法を纏った連撃!

 さすがに千発はなさそうだけど、100発は軽く超える拳がカーズマのメカ部を直撃!

「グオォォォォッッ!」

 カーズマの悲鳴!

 右足のメカ部がボロボロと崩れる!


 ドッドーン!


 カーズマが倒れた!

 100を軽く超える回数の過剰回復魔法を受けた右足は、立っていられなくなるほど損傷した模様。

「グガァァァァァァァァァ!」

 カーズマが転げまわる。装甲の破壊部から、腐食した金属っぽい破片がこぼれ落ち、サラサラと崩れる。

 これは、まだ過剰回復魔法が作用してるんだろうなぁ。


 ゴトッ!

「あ゛」

 カーズマの右足のひざから下が外れた!

 足指、甲、かかとすねって感じで、装甲のパーツがばらけてる。中は空っぽ。身をほじった後のカニだね。

 あ、右脚も外れた。

 もしかしたら、過剰回復魔法がメカ部全体を覆っちゃったのかもしれない……。


  ☆


 カーズマの動きが急に小さくなった。

 そのタイミングで、天の声が届く。

《条件を満たしました。オリジナル拳技<毛枯破細拳もうこはさいけん>を習得しました》

《条件を満たしました。称号<機竜きりゅう撃破>を獲得しました》

《称号<機竜撃破>の効果により、便利魔法<ステータス>を獲得しました》

《称号<機竜撃破>の効果により、スキル<行動分析>を獲得しました》

《称号<機竜撃破>の効果により、スキル<行動予測>を獲得しました》

 声の終了と同じタイミングで、カーズマは完全に停止した。

 中身のないアダマンタイトの装甲が、ああちこちに散らばってる。

 このアダマンタイト……ドロップ品ってことでいいのかな……?


 などと考えてたら、御使みつかい様の声。

『機竜の扉クリア。選択の間に戻ってください』

「!?」

 声が終わると同時に、カーズマのドロップ品(アダマンタイトの装甲)が消えた!

 アダマンタイトは希少品。持ち帰れば、ひと財産築けたのに……。

 ……ハッ! ひょっとして、死んでも生き返れるルール、竜にも適用されてる?


 私の前に物々しい扉が現れた。

 ドロップ品が消えたので、ここにいる理由はない。

 私は扉を開け、選択の間に戻った。


  ☆


『やりましたね、ティア』

「はい、ありがとうございます!」

『明日も楽しみにしてますよ。ゆっくり休んでください』

 選択の間に戻った私は、御使みつかい様に休むよう言われた。

 正直、これは意外。

 試練を急ぐよう勧めたのは、他ならぬ御使い様。

 それに、私は全然疲れてない。むしろ、カーズマと戦う前より調子がいいくらいだ。

 ただ、御使い様は、そーゆーのを全部承知の上で、私に休むよう言ってるわけで……。

 うん。今日はここまでにしておくのが吉だね。色々調べたいこともあるし。

「はい。明日もよろしくお願いします」


  ☆


 神のほこらを出た私は、転移門ゲートに向かう。


 ここは、山頂に龍神が住むとされてるマアト山の七合目付近。

 マアト山は、人が登るには険しすぎる山。ふもとからの登山道など、あろうはずもない。

 なので、往来には転移門が使われてる。私たちの生活区域は、南側の麓にある。


 生活区域の南側は、マルクト教の聖地になってる。大陸中から集まる巡礼者や観光客で賑わう区画だ。あ、総本山があるのは他の場所よ。

 生活区域の北側は、神職や聖職者の修行の場。私の生活の場は、この区画になる。

 そして、聖地と修行の場を隔てる形で、聖騎士団の総本部がある。イメージとしては、外敵から聖域を守る砦だね。

 そんなマアト山一帯が聖域ディルムン。その名の通り、神様に一番近い場所だ。


 私は転移門をくぐった。程なく足元に光の輪が現れ、私はワープ。行先は修行の場の転移門よ。



「ティア様、もう試練は終えられたのですか?」

 転移門から出た私に、ビシッとしたお姉さんが声をかけてきた。

 彼女は聖騎士のシャルラ。今日の警備責任者だ。

 神の祠は、基本立ち入り禁止。なので、転移門は聖騎士さんたちが交代で警備してる。

 聖騎士さんは男性の方が多いんだけど、今日は私が使うので、女性二人のペアになってる。

 うん。修行中の聖女は、たとえ家族でも男子禁制なんだ。正式な聖女になれば、この制限はなくなる。


「ご苦労様。今日はもう休むようにって、御使い様に言われたの。続きは明日よ」

「承りました。本日の試練、お疲れ様でした」

 年齢はシャルラの方が上。でも、聖女の身分は伯爵以上の貴族と同等。まして、私は王族。

 なので、こんな感じの会話になるわけ。

 ちな、聖女の必修科目には、貴族レベルの礼儀作法も入ってます。もちろん、私も履修してるわ。


  ☆


 自室に戻った私は、ソファーに腰を下ろした。スッと沈み込むような、何とも言えない感覚。

 そのまま身を任せて、しばらくの間、何も考えずにボ~~ッとする。

 ふう。竜とのバトルで上がりまくってたテンションが、ようやく落ち着いた。


 そして同時に、私は自分がとんでもなく強くなったと確信した。

 そうだね~、聖騎士の中堅クラスから……。うん、世界最強の一角と言われてる聖騎士総長と同等以上だ。


「!」

 な、なんだってー! 自分で言ってて驚いた。

 いやいや、ちょっと待て私。なんぼ何でも、それは盛りすぎちゃうか~?

 でもなぁ、私の直感は、そう言ってるんだよ。

 天の声もいろいろ言ってたし、順番にチェックしようか。


 まず、毛枯破細拳というパンチ技を覚えた。これは……過剰回復魔法の魔法拳だね。

 さっきは千花裂孔拳で連発したけど、これは単発。でも、技を使えば自動で過剰回復魔法がのるメリットがある。

 生物な雑魚敵に使うのに、ちょうどいい感じだね。

 過剰回復魔法がオリジナル魔法なので、毛枯破細拳もオリジナル技になる。

 名前の由来は、体毛を枯らし、細胞を破壊するから。


 ちな、千花裂孔拳の名前の由来は、「千の花が切り裂き穿つから」とも、「無数の衝撃が突き抜けた背中に、千の花が咲いたように見えるから」とも言われてる。

 名前も由来も私は考えてないんだけど、それを追及しないのがオトナですよ?


 次は称号。

 ジを撃破した時と同じように、機竜撃破の称号をもらった。

 そして、称号の効果で、魔法を一つとスキルを二つもらった。


 ここで、疑問が一つある。

 鏡竜かがみりゅう撃破でもらったのは、スキルが一つだけだった。

 もらえたモノの数だけ見ると、無視できない差があるよね。


 例えば、蜘蛛が主人公な異世界は、称号一つにスキル二つと決まってた。

 その代わり、称号の入手難易度に見合うスキルがもらえるようになってた。


 実際のところは、おそらくジを倒したことで、私は魔法拳と千花裂孔拳をもらえた。

 なので、数的には同じだとも言える。

 でも、それだと天の声が無かった理由がわからない。


 それに、ジとカーズマを倒した後で、程度の差はあるけどいきなり強くなった理由もわからない。

 しずくの記憶の時みたいに、天の声があれば納得できるんだけどね~。

 ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


 本作を書くきっかけになったダイ大ネタ、千花裂孔拳せんかれっこうけん毛枯破細拳もうこはさいけんが出そろいました。

 もう、思い残すことはありません(嘘)


 今後の展開ですが、2話使ってステータスをアレコレし、以後のバトルは私TUEEEEになります。

 13話で第一章終了。閑話を挟んで第二章になる予定です。

 第二章開始まで、何日かかかるかもしれません。

 今のところ、そんな感じです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ