51.厨二病な聖女様、ラストのボツ案は後書きに(笑)
マルクト聖国教皇と悪魔合体したデーモンロードを倒した翌日。
王城の地下一階にある騎士訓練場。
騎士団員たちが見守る中で、母上とシャルラが対戦中。
何をしてるのかというと、シャルラの入団試験です。
二人の装備は訓練用。
手で持つ物――武器と盾――は木製で、身に着ける物――鎧や手甲の類――は革製よ。
どちらも実戦を想定した作りで、本物とほぼ同じ重さになってるわ。
騎士は職業軍人だからね~。訓練のための訓練などという無駄なこと、エリシュじゃ誰もしませんよ?
母上の武器は身の丈ほどある大剣で、防具は一切なし。
あり余ってる闘気を全身に纏って戦うので、防具は必要ありません。
ついでに言っておくと、大剣を普通の剣みたいに軽々と振り回してます。
大剣って、一般人じゃ、正眼に構えるだけでも大変なんだけどねー。
対するシャルラは盾と短剣を手に持ち、全身鎧を装備。
はい。彼女本来の戦闘スタイルじゃありません。
エリシュの騎士は、大盾を使わないからねー。これは仕方がないんだよ。
ルールは制限時間内に一本取った方が勝ちなので、これもシャルラにやや不利かな?
彼女の戦い方は、どちらかというと防御寄りだからね~。
なぜ入団試験をしてるかというと、半端な強さの騎士団員ズを納得させるため。
毎度のことだけどさ、一線を超えられないモブは、一線をはるかに超えてる者同士の比較ができないんだよ。
冒険者にSSランクがいないのと同じ理由だね。
母上は訓練用の大剣で、正式装備のモブ騎士を一蹴するレベル。
なんせ、木剣で金属製の盾をスパッと斬っちゃうからね~。
闘気の使い方を極めると、それぐらい普通にできちゃうという好例です。
私が闘気技を短期間で使いこなせてるのは、母上の血を引いてるからなのです。
そんな母上を相手に、訓練用装備で互角以上に立ち回れたら、その人の実力は母上以上だと認めざるを得ないよね?
とゆーわけで、二人にはガチで戦ってもらってます。
素人目には、二人は互角。
母上渾身の打ち込みを、シャルラが上手くいなしてる。
でも、私が見たところ、勝負がつくのはもうすぐだね。
「あー、参った。降参よ」
声の主は母上。
これまで攻めに攻めまくって、それでもシャルラを崩せなかったからねー。
これ以上は無駄だと判断した模様。
「はい。手合わせ、ありがとうございました」
一呼吸ほどおいて、シャルラが構えを解く。
ギャラリーがどよめいた。
うん。これでシャルラの実力は証明されたわね。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
そして翌日。
私はエスメロウドとシャルラを引き連れ、聖国の調査に来てます。
国境を守る不思議な力は健在。
でも、今日はすんなり入れました。
理由? そんな無駄なことは考えないわ。入れたという結果がすべてよ。
調査の対象は二つある。
一つめは、聖都を襲ったトンデモなエネルギー。
いや、一昨日は逃げるのに必死で頭が回らなかったけどさ、あれ、調べておかなきゃマズいっしょ?
私が知ってる限り、この世界には、街を丸ごと消し去ったような事件の記録はない。
神罰にしろ、天変地異にしろね。
そして、規模的にもタイミング的にも、あれが自然現象だとは考えにくい。
仮に、あれが隕石だったとしよう。
狙ったみたいに街に落ちる確率って、微レ存もいいところだからね。
実際のところ、トンデモなエネルギーは、真上から街の中心に降ってきた。
となると、Q訳な聖書に出てるソドムとゴモラみたいに、神の裁きだった可能性が高い。
マルクト様が言った「私たちは見守る存在」から外れるけどね。
そして、仮にそうだった場合、神罰を受けたのは誰かっていう話も出てくる。
聖国かもしれないし、教皇かもしれないし、私たちかもしれない。
で、どの場合でも言えるのが、神々は一枚岩じゃないってこと。
Q訳な聖書の神と行動理念が似てるというのが前提になるけどね。
Q訳な聖書だと、ノアもロトも神罰が下る前に警告を受けた。なので、多少なりとも余裕をもって、難を逃れてる。
つまり、神罰の対象が私たちじゃなかったら、警告はもっと早い段階であったはず。じゃなきゃ、私たちが聖国を出てから神罰を下す選択もあったと思う。
そう考えると、神罰の対象が私たちだったと考えるのが自然ってことになる。
でも、それだと警告は来なかったはず。
私たちが地上で揉めてるみたいに、神々も揉めてるのかもね。
というわけで、気配感知や瘴気感知をメいっぱい使いながら、聖都跡地まで慎重に接近。
安全そうなので、降りて調べてるところです。
しかし、すごいね、これ。
見事にクレーターになってるもん。
テクタイト――隕石が落ちたときにできる天然ガラス――っぽいものは無いから、温度はそれほどじゃなかった模様。
でも、瓦礫っぽい物も見当たらないんだよね。
超高温なしの爆風だけじゃ、瓦礫を粉々にできないはず。
トンデモなエネルギーは、魔法的な力を持ってた可能性が高いね。
ふむ、街を一つ消せる魔法か……。
上空に飛んで、龍聖闘気を超圧縮して放てば、私にもできそうだね~。
あ、でも、身体が耐えられそうにない気がする。漫画みたいに変身できないと無理だね(笑)
現地調査はあっさり終了。
使えそうな新素材とか、危険そうな残留物は無し。
他に調べることも思いつかなかったので、二つめの調査対象に移動しよう。
☆
二つめの調査対象は、四神相応だった謎の街。
そう。神様にクエストを頼まれた街だ。
そして、この街は、聖国内で都市伝説になってた。
街の名はダイアト。所在地は不明。神に選ばれた者しか立ち入れない街。そんな伝説だ。
その伝説を教えてくれたシャルラは、一昨日、街にいた間、ず~っとそれを考えてたとのこと。
まあ、確かになー。
都市伝説の街が実在しただけならともかく、自分がそこに入れてるだなんて、そりゃあ、考え込むって。
だってさ、自分だけじゃなく、偶々同行することになった相手までが特別な街に入れるなんて、普通はないよ?
例えるなら、普段着でツレと出かけて、知り合いと偶然再会して、「お茶せえへん?」と目についた店に行ったら、そこは厳しめのドレスコードがある店だったけど、全員入れたようなものだよ?
それはさておき、なぜダイアトに来たかというと、古代の叡智を手に入れるためです。
セフィロトでダイアトに対応してるのはダアト。描かれないことも多い11番目のセフィラで「知識」と訳される。
もうね、何かが隠されてる匂いがプンプンしてるよね?
伝説によると、叡智は四か所に隠されてる。具体的に何なのかは不明。
生活の知恵かもしれないし、何かの超理論かもしれない。謎素材かもしれないし、超技術を駆使した魔道具かもしれない。
もうね、ワクワクが止まらないよね?
そして、叡智は選ばれし者にしか入手できない。
さらにさらに、すべてが揃うと門番が現れ、隠された場所に行けるのだとか。
もうね、厨二心に強烈に訴えかけてきてるわけですよ(笑)
叡智の隠し場所の見当はついてる。
それはズバリ、東西南北にある四神相応な構造物か、その付近よ。
一昨日は伝説を知らなかったから、二つの祠も門もアーチも、ただ見ただけだった。
でも、今日はアレコレ調べるわよ。
とは言っても、西の白い祠だけは、何も起きないと思ってる。
神様が現れたってのもあるけど、白い髪の持ち主がいないからというのも理由よ。
逆に言うと、青い髪の私は東の祠で、赤い髪のエスメロウドは南のアーチで、黒い髪のシャルラは北の黒い門で、何かを起こせると思ってます(キッパリ)
「さあ、シャルラ。隠された叡智を探すわよ」
「はい、ティア様」
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
最後のセリフは↓にしようと考えましたが、思いとどまりました。
「さあ、シャルラ。隠された叡智を探すのよ! 展開次第で、冬童話2021に番外編を書けるわ!」
「はい、ティア様」
現状いっぱいいっぱいなのに、冬童話の二作目を書いてる時間はありません><




