45.(元)教皇vs聖女様、肉の壁は反則だと思います!
私はステータスでデーモンロードを見た。
種族:デーモンロード
名前:アレフール
年齢:0歳
総合力:SSS
脅威度(=総合力)は最高。予想通りのSSS。
それが勇者王と同じレベルなのか、それともはるかに上なのか?
残念だけど、そこまではわからない。
確かなのは、ギリSSSだったとしても、単独で世界を滅ぼせるレベルだってこと!
勇者王レベルの強さなら、互角以上に戦える。スキルで弱体化してるのが、大前提になるけどね。
でも、勇者王をワンパンできるレベルだと、分が悪いかもしれない。
これは、戦ってみるまでわからない。
そして意外だったのが、デーモンロードが名前持ちだったという事実!
名前が教皇と同じってことは、悪魔合体した相手の姿だけじゃなく、名前もゲットできるってことだね。
こうなると、名無しのSSSより1ランクぶん強い可能性が高い。正直、こーゆーのは勘弁してほしいわ……。
年齢が0歳なのは、悪魔合体した時点からカウントされるんだろう。
外見がアークデーモンってことは、鎧を着てる間は魔法が効かないと思った方がいいわね。
それじゃ、同じパターンから試しますか。
漫画じゃないけど、力が不明な強敵と戦う時は、最初から決め技を使った方がいい。
それで倒せればベスト。大ダメージを与えられたら、こちらが有利。それ以外なら勝ち目が薄いって、すぐわかるからね。
全開! 龍聖闘気!
究極の闘気を込めた拳で、邪魔な鎧を砕く!
「千花裂孔拳!」
ガカァッ!
光速拳の効果音!
手応えはアークデーモンの時とほぼ同じ!
無数の拳がデーモンロードの鎧をガラスのように砕く!
漆黒の鎧は、粉々に砕けて飛び散った!
「!?」
なんてこと!
私が毛枯破細拳を繰り出すより早く、鎧が元に戻った!
さすがはSSSの魔物ね。とんでもない復元力だわ。
うん。これはマズいね。
今の私だと、千花裂孔拳に続けて魔法を使うより、千花裂孔拳から魔法拳につないだ方が早いんだ。
つまり、鎧を砕いて魔法を撃ち込むのは、私一人じゃ無理ってことなんだ。
こうなると、私が鎧を砕くと同時に、エスメロウドとシャルラに攻撃してもらうしかないわね。
「龍の聖女の力というのは、凄まじいものですな。ここにいた者だけで大丈夫かと思っておりましたが、そうもいかぬようですな」
えっ!?
デーモンロード、何が言いたいの?
「フレッシュバリア!」
「?」
デーモンロードの謎ワード!
「!?」
それに呼応し、何かがたくさん現れた!
「!」
それは、元は聖騎士だったもの。
デーモンたちの死骸だった。
死骸は肉のまま混じりあい、鎧の表面を覆っていく。
まさか……、フレッシュバリアって、肉の壁……?
死肉を纏い、さらに大きくなったデーモンロード!
その姿が、私には漫画に出てきた超魔ゾンビっぽく見えてきた。
外見じゃなくて、予想される厄介さが……ね。
☆
外れてほしい予想ほど、よく当たる。
前世紀末、そんな法則が流行ったらしい。
そして今、私はそれを思い出してる。
デーモンロードの肉の壁、マジで凶悪でした!
まず、とんでもないレベルで衝撃を吸収する!
TVショッピングでよくやってる、目の高さから卵を落としても割れないなんちゃらなんて、比べるのもおこがましい!
彗星拳タイプの千花裂孔拳を撃っても、鎧の手応えを感じない! つまり、全然効いてない!
脂肪や贅肉じゃないので、流星拳を北斗柔破斬的に使っても、肉は移動しませんでしたー! ひでぶぅ~!!
そして、刃物にもメッチャ強い!
どれぐらい強いのかって? デーモンを難なく斬ってたエスメロウドの剣が、鎧まで届かないレベルだよ!
彼女の剣の腕は、世界最強の剣士と言われてた母上より上!
彼女が持ってる剣は、私がアレコレ付与しまくった、伝説級の逸品!
それで斬れないんだから、武器で斬るのは不可能と言っていい!
さらに厄介なことに、肉の壁は、触れた物を強力に腐らせる!
私の拳、エスメロウドの剣、シャルラの盾、見事に全部やられました!
あ、拳は魔法で治したし、剣と盾はスペアを使ってるので大丈夫です。
そんなわけで、唯一通る攻撃は、シャルラの討魔滅裁刃だけというありさまなのです。
それすらも、鎧には浅い傷しかつけられなくて、肉の壁ともども瞬時に元通りになってるとかもうね……orz
うん。肉の壁の材料、大聖堂の外にたくさんあるんだよ。
私たち、聖騎士団をマジで全滅させちゃったからね!
唯一の救いは、肉の壁が肉襦袢の役目も果たしてるようで、奴の動きが遅いこと。
遅いといっても、デーモンよりは速い。でも、シャルラが何とか対応できるレベルなの。
そのおかげで、今のところ全員無傷よ。
とは言うものの、このままじゃ、負けるのは確実に私たち。
なぜなら、こちらは疲れて消耗する一方だけど、相手はエネルギーを補充できるからね。
肉の壁の材料は、奴のエネルギー源でもあるんだ。
材料を使い切らせることは、不可能じゃない。
ダメ元で天帝の龍撃を使ってみたら、肉の壁を消せた。
そしたら、間髪入れずに材料が現れたからね。
ただ、材料がなくなるまで天帝の龍撃を撃つのは、出来れば避けたい。
こちらがヤバくなったら、回復魔法と蘇生魔法が命綱になる。だから、MPは温存しておきたいんだ。
そんなわけで、早く打開策を見つけないと、マジでヤバイ!
「どうしました? そろそろ、打つ手がなくなりましたかな?」
デーモンロードは余裕の声。
ここで攻守を交代するのは、ヤバイ気がする。
時間稼ぎも兼ねて、新技を使うとしよう。
技のベースはブラックディスクレイド。
円盾に込めた闘気の刃で相手を斬る、聖騎士総長の技だ。
私は円盾を扱えないので、それはカット。そも、デーモンロードには無意味だろうし。
というわけで、超圧縮した闘気で円形の刃を作り、それを飛ばして敵を斬るとしよう。気¥斬のイメージだね。
超圧縮した闘気は黒く見えるから、名前もそのまま使えるわ。
狙いは……、とりあえず右腕で。
「漆黒円刃襲!」
ウルト○マンっぽいフォームから漆黒の円板を放つ。
スパッ!
デーモンロードの右腕が宙に舞う。
「!?」
そんな、バカなっ!
デーモンロードは1ミリも痛がらない!
「!」
一度落ちた右腕は、□ケットパンチみたいに宙を飛び、元通りにくっついた。
いやいやいやいや、ちょっとちょっと!
斬ってもダメって、どーゆ―ことよ!
「それでは、今度はこちらが攻撃しますので」
「!」
暫しの間、私は茫然としていたらしい。
我に返った時には、攻守が逆転していた。
「聖王十字剣」
「!」
デーモンロードの攻撃!
両手の爪を剣のように伸ばし、縦横無尽に斬りつけてきた!
さらに悪いことに、さっきまでより全然速い!
私は攻撃を避けた!
エスメロウドも辛うじて避けた!
そこまで機敏に動けないシャルラは、大盾で受けた!
「!」
シャルラの盾が斬られた!
下半分がなくなった!
あの盾って、闘気で強化してたはず。それを……。
デーモンロードの爪、エスメロウドの剣以上に斬れる!
どうやら、私は脅威度SSSを甘く見過ぎてたようね。
相手の足を止めて、味方の態勢を立て直さなきゃ。
「漆黒円刃襲!」
今度は円板を五連発!
狙いは首! ついでに両手両足よ!
スパスパスパスパスパッ!
狙いは正確。威力も十分。円板が全部仕事した!
デーモンロードの首が、手足が、ドサドサと床に落ちる!
これは期待以上の成果!
私たちは念のため距離をとり、デーモンロードを注視した。
「!」
アリエナイ……!
胴体は、元の位置に浮いたまま!
一向に落ちる気配がない!
一方、床に落ちた頭と両手両足は、ピクリと動いてフヨフヨと浮かび、元通りにくっついた!
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
外見は別物ですが、デーモンロードは鎧武装フレイザード→超魔ゾンビ的な変化です。
超魔ゾンビを斬っても、呪文無効の鎧がある。
鎧ごと斬っても元に戻る。
何、このクソゲー(笑)




