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42.聖域直属の聖女様、聖域的なルールに縛られる

 デーモンたちが動いた!

 10匹ほどがレイの周りに展開! 壁を作ってガードする!


 残りはこちらに向かってくる!

 半分は私に! 残りは二手に分かれてエスメロウドとシャルラに!


 レイが何やらつぶやいてたから、それが指令なんだろう。

 敵ながら見事なフォーメーション。

 これじゃ、直接レイを叩けない!


 レイが次のアクション。

 杖を右手に持ち替え、左人差し指で複雑に表面をなぞった。

 ……今のは何? 私にも意味不明よ……?


「!?」


 レイの足元が輝いた!

 それは、瞬間移動の魔法陣エフェクト

 現れたときの物より大きく、聖騎士総長の下まで広がってる!


 ……そうか、あの杖はマジックアイテム!

 そう思った時には、瞬間移動が発動済み。

 頭から足へと、アニメの変身シーンみたいに、虹色のシルエットに変わっていく……。


 こうなると、ヘタな手出しはできない。

 全身が虹色のシルエットに変わり、二人の姿が消えた。

 私はそれを黙って見ていることしかできなかった……。


 あー、忌々しい!

 この鬱憤うっぷんは、デーモンで晴らさせてもらうわ!


「流星拳!」


 ATTACK!


 射手座を装着して獅子座の聖闘士に撃ったような効果音!

 いつもより力のこもった闘気の弾が、デーモンたちを撃ち抜く!

 私に向かってきた群れと、壁を作っていた群れが片付いた。


 うん。少しスッキリした。

 さて、二人はどんな感じかしら?


 私はシャルラの方を見た。

 彼女は聖騎士の隊長格。聖騎士としての修行を極めし強者なので、弱いワケがないのだ!

 と言っても、聖騎士総長は見掛け倒しだったからね~。

 自分の目で実力を確かめなきゃ。


 隊長格が着けてる漆黒の鎧は呪文無効。それを理解したデーモンは、近距離で肉弾戦を仕掛けてる。

 モブ騎士だと二人が吹き飛びそうな体当たり! シャルラは大盾で受け止めた!

 シャルラは全く揺るがない! デーモンが反動を受ける!

 デーモンの体勢が崩れた! その機を逃さずシャルラが攻撃!


討魔滅裁刃とうまめっさいじん!」


 彼女の短刀から闘気のやいばが伸び、あっさりとデーモンを両断した!


 おおっ! これはなかなか……!

 彼女の武器は短刀。でも、間合いは長槍で、威力は大剣以上!

 使い勝手がメッチャいい技ね。


 立ち回りは基本に忠実。受け止めるべき攻撃と避けるべき攻撃の見極めが早くて適切。闘気の使い方もうまい。

 彼女が母上に勝てるかは、現時点じゃ不明。でも、母上に負けることはない。私には、そう思える。聖国を倒したら、青龍騎士団(私の直属)にスカウトしたいレベルだわ。

 今後のことも考えたら、余計な手出しをしない方がいいわね。


 一方のエスメロウドは……。

 さすがね。残りは2匹。

 見た目が赤いキャラ(レッドヒロイン)だけあって、「当たらなければどうということはない」を地で行ってるわ。

 どこぞのVRMMO(防振り)じゃ、青いキャラが避けまくってるけど。

 あ、エスメロウドって、見た目以外はブルーヒロイン寄りだった……。


  ☆


「ハアッ!」


 シールドバッシュからの討魔滅裁刃とうまめっさいじん

 シャルラが最後のデーモンを倒した。


 ふむ。敵が複数いる間は、連携攻撃を警戒して防御を優先。その心配がなくなったら、自分から打って出たわけか。

 私とエスメロウドが見てるのを承知の上で、勝負を焦らず、リスクの少ない行動をとる。

 さすが隊長格ね。

 ダメージを受けてないのはもちろん、スタミナの回復も早い。

 戦力として、文句なしの合格点よ。


「やるわね、シャルラ」

「ありがとうございます、ティア様。ですが、私などティアさ……」

「あー、そういうのはいいから。さっさと聖都に飛んで、教皇をぶっ飛ばすわよ!」


 私はシャルラの言葉を遮り、先を急ごうとした――――のだが。


「えっ!? ティア様、聖都まで飛んで……行かれるつもりなのですか?」


 シャルラにアンビリーバボーな口調で言われた。

 まあ、彼女は私が飛行魔法を使えるって知らないから、無理もないわね~。


「ええ、そうよ。聖国ここにだって、私の魔法で飛んできたんだから(ドヤァ)」

「まあ、そうだったのですか! ……でも、それは無理なのです」

「えっ? 無理って、どーゆーこと?」

「ティア様がご存じないのも無理はありません。アルクト(ここ)から聖都ケイテルまでは、いかなる者であろうとも、自らの足で街を順番に進まなければ、決して行くことができないのです」


 な、なんだってー!?

 これはアレですか? 白羊宮から順にクリアしないと教皇の間まで行けないという、どこぞの聖域サンクチュアリ的なやつ……?


「聖国まで飛んでこられたのなら、そのまま聖都まで飛ぼうとされましたよね?」


 私、シャルラの言葉に無言で頷く。


「でも、不思議な力に阻まれ、中に入れなかったので、仕方なくアルクトまでやってこられたのですよね?」


 私、コクコクと頷く。


「それと同じ力が、聖国中に働いているのです」


 あー、そーゆーことですか……。 

 なんて面倒な……。

 ……ん?


「ちょっとシャルラ。じゃあ、姿を消したレイと聖騎士総長はどうなったの? レイが聖騎士総長をぶって歩いてるわけ?」

「いいえ。おそらく、聖都ケイテルまで瞬間移動したかと」

「それはおかしくない? たとえ誰であろうと、自分の足で歩かなきゃダメなんでしょ?」

預言者(あの男)、レイは例外なのです。彼は瞬間移動(その力)を教皇に見せ、神の代理であると認められたそうです」


 なるほど……。管理者Mは、レイにそこまで力を貸してるわけか……。

 マルクト様が言ってた「世界を見守る存在」としては、やりすぎじゃないかしら……?

 まさか、マルクト様より立場が上……とか? いやいや、それは……。


 あれこれ考えてる私の代わりに、エスメロウドが話を進める。


「それで、シャルラ殿は順路を知っているのか?」

「はい、もちろん。聖騎士になって最初に覚えるのが、聖都ケイテルへの行き方ですから」


  ☆


 どこぞの聖域サンクチュアリは、教皇の間まで十二宮だった。

 で、聖国はというと、スタートも含めて十か所目が聖都ケイテルになる。

 アルクト→ジェソド→ホホドド→ネツアク→テフレト→ゲブライ→ケセドン→ビーナー→コオクマ→ケイテルよ。

 街の名前も、位置関係も、どことなくセフィロトに似てるわね。


  ☆ ☆


 街巡りはあっさり終了。私たちは聖都に着いた。

 ん? 早すぎるだろうって?

 うん。私もそう思ってる。


 実はだね、

 ・街を出て10mぐらいまで歩く。

 ・10mぐらい歩いて街に入る。

 ・街道上を地上から3メートル以下の高さで飛ぶ。

 の三つを守れば、鳳翼天翔フェニックスウイングで移動できたんだよ。

 まともに歩いたら、何日かかるかわからないからね~。

 アルクト出て、すぐに検証してよかったよ。


 ゲブライから後は、道中にチェックポイント的な魔物がいた。

 でも、見える高さを飛んでたから、何の問題もなかったわ。



 荘厳な正門の前には、聖騎士団が待ち構えてた。

 私にとっては幸運。扉にも壁にも、神様のレリーフがない!

 これなら、大魔法で壊れても気にならない!


 あ、隊長格には魔法が効かないんだった……。


 まあいいわ。

 まずは、降伏勧告から。


「その気はないでしょうけど、一応言っておくわ。門を開けて私たちを通しなさい。そうすれば、貴方たちも街も、無傷で済むわ」


 応じたのは、漆黒の鎧にシルバーのピンストライプが入った青年。

 見た目からして副長っぽいわね。


「断る! 我ら聖騎士団、邪神の使いの言葉など聞かぬ!」


 おおう。マルクト様を邪神呼ばわり……したんだよね?

 私、聖域ディルムンの直属ってだけで、どの神様の使いとかまでは考えてなかったけど、そーゆーことだよね?


 左後ろにいるシャルラの強さがぐーーんとアップしたのがわかる。

 今のセリフに相当怒ってるね。

 だったら、副長っぽい青年は彼女に任せよう。


 私は魔法力を高めながら返す。


「そう、残念ね。じゃあ、遠慮なくいくわよ。全翼展開小爆発掃射ハイマットフルバースト!」

 ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


 討魔滅裁刃とうまめっさいじんの元ネタは闘魔滅砕陣。

 地面に暗黒闘気を蜘蛛の巣状に張り巡らせ、敵全員を縛り付けて動けなくする技です。

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