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龍の聖女ティア ~鳳翼の異名を持ち龍力を自在に操る光輝なる第13王女~  作者: 狩野生得
第一章 至龍の試練(しりゅうのしれん)
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4.オバQに賭けた聖女様、フラグを立てる

 となると、魔法に頼ることになるんだけど……。


 しずくがジを倒した魔法はコレだね。

  自己犠牲サクリプセ:全HPとMPを使い、合計分のダメージを与える。

       ボスにも有効。使用者は死ぬ。

 走馬灯で見てた時に予想した通り、自爆攻撃だった。

 ちな、覚え方は……?

 おうふ。キャラクリ時の課金限定だよ。

 確かにレベルアップじゃ覚えられないから、オリジナル扱いになるね。


 で、当たり前といえば当たり前なんだけど、今の私には使えません! だって、課金してないからね!

 ……まさか! 転生前の面接がキャラクリに相当してて、その時に神様に賄賂を渡せば覚えられた……とか?

 ハハハ、いくら何でもまさか……ね?


 あれっ? 今気付いたけど、自己犠牲って、貫通攻撃じゃなくね?

 じゃあ、ファブラージュには、魔法を貫通攻撃にする手段が別に用意されてたってことか。


 えっ? なんでゲームの設定ベースの攻略法を大真面目に考えてるのかって?

 それは、偶然過ぎる一致に賭けてるからだよ。


 イベントの名前、竜の名前と特徴。

 他には、魔法の呪文も同じだね。自動蘇生魔法オートリザレクとか。

 回復魔法もキュアで同じ。これ、ゲームによってはヒールだったり造語(ホ○ミとか)だったりするからね。


 さらに言うなら、私の前世の名前と今の名前には関連がある。

 某魔法科高校の北山さんと同様、雫もステイツで学生してた時にティアって呼ばれてた。

 トーママートはミドルネームのマートとかかってる。


 ここから導き出されるのは、VRがらみの異世界モノあるある。

 一方の世界が、もう一方のベースになってるってやつですよ。


 この際だからぶっちゃけると、今のまま続けても、絶対ジに勝てない。

 理由は単純明快。私の魔法力、無限じゃないからね。

 だったら、奇跡を信じようって思ったわけ。


 でもねー、私、攻撃魔法は覚えてないんだよねー。


 私が使える魔法は、光魔法の回復系と、土魔法の土壌改良系だけです。

 ちな、土魔法は、薬草を栽培してる関係で覚えました。

 薬草の栽培と、それを使ったポーションの調合も、聖女のたしなみですからねー。

 う~ん……。

 ……。

 あ! 一つだけ使えそうなのがあった。

 聖域に来る前。記憶をたどれる限界だから、多分4歳になるかならないかの頃だと思う。

 私、オバキュウって呪文を覚えたんだよね。

 あー、そうだよ! 思い出した! 私、その時に天の声を聞いたんだ!


 呪文を覚えるきっかけになったのは、人には言えない黒歴史。

 怪我してた小鳥を魔法で治そうとしたけど、うまく制御できなくて殺しちゃったこと。

 うん。私、聖女なのに、初歩の回復魔法で失敗しちゃったんだ。

 一応言い訳しておくと、この世界(インキピット)で魔法を使っていいのは8歳から。だから、失敗は当然だったとも言えるんだ。


 ものすっごいトラウマだったから黒歴史フォルダに放り込んだ呪文だけど、使えそうなのはこれしかない。

 しかも都合がいいことに、オバキュウは聖域の回復系魔法一覧に載ってない。つまり、オリジナル魔法の可能性が高い。


 後は、貫通攻撃をどうするかだね。

 雫は、どうしてたんだ?

 えーっと……。

 ……。

 これは……、何というか、風が吹けば桶屋が儲かる的な流れだね~。

 聖女の称号を取得すると、光魔法の熟練度が最大(SSS)になる→魔法の熟練度が最大になると、魔神の称号を取得する→魔神の称号を取得すると、魔法が貫通攻撃になる。

 ついでに言っておこう。

 魔法の熟練度が最大の一歩手前(SS)になると、魔王の称号を取得する→魔王の称号を取得すると、魔法が必ずクリティカル(必中&防御力無視&威力2倍)になる。発動さえできれば、外れる心配がなくなるわけだ。


 それで、肝心の聖女の称号の取得方法は……。

 おうふ。これも手っ取り早くて確実なのは、キャラクリ時の課金だよ。

 雫って、ちゃっかりしてたというか、なんというか……。


 とりま、これで希望が出てきた。

 自己犠牲は無いけど、オバキュウがある!

 聖女な私は、光魔法の熟練度が最大(SSS)相当になってる可能性がある!

 だったら、ダメ元でオバキュウに賭ける!


 な~に、仮定が間違ってて倍返しをくらって死んでも、イベントが終われば生き返れるんだ。 

 やれるだけやってやろうじゃない!


 私はジの攻撃をかわしながら、隙をうかがう。

 えっ? 魔法は必中なんだから、適当に撃っても大丈夫だろうって?

 ブッブー、残念!

 オバキュウは回復系の魔法だから、相手に触れるぐらいの距離でしか使えないんだよ。


 しかし……。

 こう改めて見ると……、ジの動きは酷いね~。

 スピードとパワーは私より上だけど、武術の基本が全然できてない。

 この動きが少しだけ前の私そのものだと思うと、いたたまれない気持ちになってくる。

 うん、決めた! 私、至龍の試練が終わったら、武術を基本から学ぶんだ……。


 ジの攻撃が雑になってきた。何をやっても全然当たらないから、自棄やけになってる模様。

 うん、隙だらけだね。

 大振りのパンチをサイドステップで透かし、背後に回る。

 右手を前に突き出し、手首に左手を添え、てのひらに魔法力を集める。

「オバキュウ!」

 呪文は不発! うん、知ってた。

 いや~、ノリと勢いで使えるかな~と思ったんだけどねー。やっぱ無理でした。てへっ。

 今日の教訓、呪文は正しく唱えましょう。


 ジが振り向きざま殴りかかってくる。

 私は難なくかわし、背後をとる。

 同時に右手を突き出し、呪文を唱える。

 そう。オバキュウは、幼かった私の空耳。正解は、こうよ!

過剰回復魔法オーバーキュア!」

 私の掌から濃い目の緑色の光が広がり、ジを包み込む。

 よしっ! 呪文は反射されてない!

 私は勝利を確信し、ジから離れた。


 ジの体が激しく波打つ! 着ぐるみの中で無数の小動物が暴れてるような、異様な光景。

 程なく波は消え去り、その体は生命活動を停止。

 ミイラのように干からび、最後はサラサラと崩れ去った。

 キショッ! めっちゃキショッ!

 これ、幼女じゃなくてもトラウマになるわよね……?


 それじゃ、過剰回復魔法の解説をしておこう。

 回復魔法キュアは短時間で傷を治す。それは、生物が持ってる自然回復力を増進させるから。具体的には、細胞分裂のサイクルが早くなるわけ。

 そして回復魔法には、自然回復力の暴走を防ぐ働きもある。自然回復力が暴走すると、異形になったりガンになったりするからね。


 これを攻撃に利用するのが過剰回復魔法。

 回復魔法からすべてのリミッターをなくし、自然回復力を限界を超えて高める。

 すると、どうなるか?

 急速な細胞分裂でエネルギーを消耗、遺伝子のコピーミス多発、急激な老化、そういうのが一度に起きるわけ。

 回復魔法で傷が治る相手なら、ほぼ必殺! ナメッ○星人みたいに強力な再生力を持った相手にも、当然効くわよ。


《条件を満たしました。称号<鏡竜かがみりゅう撃破>を獲得しました》

《称号<鏡竜撃破>の効果により、スキル<ラーニング>を獲得しました》

 おっと、ここで天の声が。

 そうかー、鏡竜を倒したから称号をもらえたのかー。

 これは、ファブラージュには無かった要素だね~。


『鏡竜の扉クリア。選択の間に戻ってください』

 仕事ができる感じのお姉さん的な声が、第一の試練クリアを宣言した。

 声の主は御使みつかい様。お名前は不明。マルクト様の従者で、聖域ディルムンの実務を取り仕切ってるお方だ。

 聖域に常駐されてるらしいんだけど、私はお会いしたことがない。


 それはそれとして、私はしょーもないことに感心した。

 それは、神のほこらの中に「選択の間」って名前がついてたこと!

 だってさ、中に入ったら、扉が並んだスペースがあっただけだよ?

 そんなところにも名前を付けておくって、ちょっとすごくない?


 などと考えてたら、私の前に物々しい扉が出現。


 私は置きっぱなし状態だった龍殺しの聖剣(ドラゴンスレイヤー)を回収し、選択の間に戻った。

 ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

 第一話のあとがきに書いたマホイミ的な魔法が、ここで登場しました。その名は過剰回復魔法オーバーキュア。空耳でオバキュウにしたかったので、本作の回復魔法はキュアになりました。

 千花裂孔拳せんかれっこうけんは、次話で登場、毛枯破細拳もうこはさいけんは7話登場予定です。

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