37.神と話す聖女様、地の文で書けば良かったかも(反省)
『貴女の望みはわかりました。ご都合を伺ってきます。しばらく待っていてください』
「はい。お願いします」
☆
『(マルクト様、お聞きの通りです。龍の聖女の相手をお願いします)』
≪(わ、私がですかぁ?)≫
『(当然です。今の貴女は神々の長なのですから)』
≪(そ、それは……、そうなんですけど……)≫
『(大丈夫です。我々のあり方をそのまま答えれば、それで済みます)』
≪(ああ、それもそうですね)≫
『(難しく考えることはありません。いい機会ですから、世界に知らしめましょう)』
≪(そうですね。そうしましょう!)≫
☆
『ティア。マルクト様が、貴女の話を聞いてくださるそうです。会話は世界中に聞こえます。そのつもりで話してください』
「はい、わかりました」
私はもう一度深呼吸して、マルクト様に呼びかける。
「マルクト様、龍の聖女ティアーユです。この度は、急なお願いをお聞き届けいただき、ありがとうございます」
≪それは構わないのですよぉ。私に聞きたいことがあるならぁ、遠慮なく聞いていいですよぉ≫
「はい、ありがとうございます。地上では、マルクト様の名を冠した国が、聖女と聖騎士を使い、小さき国を手中に収めています」
≪それは知ってますよぉ≫
「私は、その暴挙を見過ごすことができません。放っておけば、私の母国も同じ目に合うかもしれません」
≪貴女の母国がそうなることはぁ、あり得ませんよぉ。貴女がいますからねぇ≫
おうふ。的確過ぎる突っ込み!
でも、それって、私が止めてもOKともとれるわね。
だったら、単刀直入に言ってみよう!
「とにかく、私はマルクト様の名を冠した国と戦い、討ち滅ぼすつもりです」
≪それは勇ましいですねぇ。頑張るのですよぉ≫
「えっ!? 止めたりは……、なさらないのですか?」
≪そんなことはしませんよぉ。いい機会なのでぇ、皆に言っておきますねぇ。私たちはぁ、世界を見守る存在なのですぅ。この世界で生まれた者はぁ、すべてが対象なのですよぉ。ですからぁ、人間同士の争いにはぁ、関与しませんよぉ≫
「それは、かの国に不満を持った者たちが反旗を翻しても、咎められることはない。と、いうことでしょうか?」
≪その通りですよぉ。むしろぉ、褒めてあげたいぐらいですねぇ≫
これは……、少なくともマルクト様は、聖国を特別扱いしてないってことよね?
それじゃ、思い切ってこれも聞いちゃおう!
「では、かの国の教皇が神の地上代行者というのは?」
≪それは自称ですねぇ。直接伝えたいことがあればぁ、神託や啓示を使いますぅ。どうするかを人間に考えてほしいときはぁ、預言者に伝えますよぉ≫
「じゃあ、かの国の行動は?」
≪自己責任になりますねぇ。ですからぁ、ティアもぉ、やりたいようにやっていいんですよぉ≫
「わかりました! ありがとうございます!」
≪そういうことだからぁ、人間たちぃ、自分で考えてぇ、自分で動くのですよぉ≫
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
私とマルクト様のやり取りは、絶大なインパクトをもたらした。
インキビットは神の声が聞ける世界。
でも、実際に聞いたことがある人は、極々少数しかいなかった。
聖女の関係者と、私が天の声と呼んでるやつを聞いたことがある人を合わせても、おそらく500人いないだろう。
世界がもし100人の村だったら確実に0人。一万人の村でも同じく0人。そんなレベルよ。
なのに、いきなり! 世界中の人々が神の声を聞いたわけ!
そりゃあ、驚くなって方が無理よね。
神託を何度か受けた父上と母上も驚いてたって聞いたから、初めて聞いた人がどうなってたかは、想像がつくわ。
しかも、内容がアレだからね~。
教皇=神の地上代行者という公式を、神々の長が全否定!
教皇の面目丸つぶれ!
聖国の権威は完全に吹き飛び、ただの大国になり果てた!
とはいっても、面と向かってケンカを売れる小国がいないことに変わりない。
聖騎士団、マジ強いからねー。
聖騎士一人は普通の騎士二人分の戦力で、人数はエリシュの騎士の倍ぐらい。そういうことです。
エリシュ?
エリシュも自分からはケンカを売りませんよ。
確かに戦力は上だけど、その前にやることがあるからね。
エリシュ出身の聖女7人。人質同然の彼女たちを奪還するのが先なのです。
戦時で追い詰められてるならともかく、まだ開戦前だからね。
自国民をみすみす危険にさらす選択はしない。それが大原則です。
そうそう。ケンカは売らないけど、挑発はします。
エリシュは聖国教会との絶縁を宣言! エリシュ国教会を設立しました!
教義はそのまま。建物や人員もそのまま使います。
あ、ヒガイタントのバカ助祭みたいに救いようがない聖国信者は、国外に追放しました!
あいつら、マルクト様の話を聞いた後も、神様じゃなくて教皇に祈りをささげてたんだよ!
いうなれば、マルクト教徒じゃなく、マルクト聖国教皇教徒!
価値観が違いすぎて、共存は無理です。
宗教がらみだと、お互いに譲れなくなりがちだからね。
エリシュ国教会の設立は、聖国の権威だけを恐れてた小国の背中を全力で押した模様。
羽の貸与と安保条約の締結を求める小国が、一気に増えた。
ただまあ、こちらは慈善事業をしてるわけじゃないので、審査は厳格にやってます。
羽をバラまくだけならいいけど、安保条約のバラまきは避けなきゃマズい。
いや、同時多発で侵攻されてみ? 私一人じゃお手上げですぜ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
やってくれました!
ま・た・も・や、聖国がやってくれましたあぁーーーーっ!
奴らが何をやったか?
神をも恐れぬその所業を並べよう!
まず、聖域から聖騎士を全員引き上げ、本国に集めた!
ついでに、聖域で修行中だった聖女も全員連れ去った!
さらに、教会の神像――マルクト様の像――を壊し始めた!
これさあ、聖騎士の件は、「ああ、そう」で済むと思うんだ。神の目線で見たら、の話だけどね。
ただ、昨日まで自分に敬意を払ってた人間が、いきなりそれを止めたら……。
私だったら、思いっきり気分を害すわね。
次。修行中の聖女を連れ去るのは、神が定めたルールに抵触してます。
聖女が聖域で修行するように決めたのは、聖国じゃありません!
それを決めたのは神様なのです。聖女を一人前と認めるのが聖域の役目なのも、それが理由です。
聖国は人間同士の争い――戦略の一つ――だと思ってるんだろうけど、神はどう見てるのかしら?
最後の神像破壊は、神にケンカ売ってるとしか思えません!
地球には、偶像崇拝を禁止してる宗教もある。
でも、マルクト教は禁じてない。
推奨もしてないから、微妙なところではあるけどね。
とまあ、私だったら同じ立場になっても絶対しないようなことを、シレッとやってくれたのですよ。
まったく、何考えてるんだろうねー。
マルクト様は「人間同士の争いに関与しない」とは言ったけど、神を侮辱する行為や敵対する行為を見逃すとは言ってないのに……。
あ、もしかして!
不意に私はひらめいた。
聖国を動かしてるのは、預言者なのでは……?
ディマンドの一件には、預言者が関わってた。
その彼は、現在も行方不明のまま。
保護国にいないのは間違いない。
エリシュに隠し事をする度胸もメリットもないからね。
同じ理由で、保護を求めてきてる小国にもいないと思う。
となると、聖国にいる可能性がマジで高い。
聖国の内情は、よくわからない。
預言者が何人いるのかもわからない。だから、レイが黒幕とは限らない。
教皇と預言者の力関係も不明。
ただ、教皇が預言者の言葉に従ってると仮定すれば、一見無謀で無茶な動きにも説明がつく。
まず、脱北ならぬ脱聖した人はいないらしい。
全員が教皇を支持しているのか、それとも反対する人は粛清されたのか、これは不明よ。
確かなのは、今も聖国に残ってるのは、マルクト聖国教皇教徒だけってこと。
つまり、教皇が預言者を絶対視していたら、聖国は無条件でそれに従っちゃうわけ。
神々の思惑はわからない。
聖国の行動は神々の総意なのか、それとも特定の神の意向なのか?
私の味方をしてくれる神様が「最悪、聖域と敵対することになるかもしれない」と言ったのは、このことだったのかもしれないわね……。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
前半、読みにくくてゴメンナサイ!
マルクト様の口調(人族向け)をモデルに近付けた(従来比)ら、こうなりました……。
完コピはしません!
いや待て、完コピしたら逆に読みやすくなる……のか……?
とりま、次回も明後日投稿の予定です。
三連休? 創作に使える時間は普段より減ってますが何か?




