表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/53

34.魔法を創る聖女様、0話の魔法はこのタイミングでした(後付け)

 ついでだからと会議は進み、小国を自軍に引き入れる手段の検討に入った。

 小国を引き入れるメリットは、弾除け以外にもある。

 それは、聖国自体の弱体化だ。


 様々な名目で教会になされる寄付、国が聖女に支払う生活費、聖女が受け取る除霊や治療の謝礼。

 そういったお金の約半分は、聖国に送られる。

 それとは別に、聖女を派遣してもらっているお礼として、各国は聖国に相応の額を支払ってる。


 つまり、離反する小国が増えれば増えるほど、聖国の収入が減るわけ。

 そうすると、大勢の聖騎士を抱えきれなくなって、少しは弱体化する……かもしれない。


 うん。これ、相手が普通の国だったら、確実な方法なんだ。

 でも、聖国も同じように弱体化するかは、正直、微妙。

 と言うのも、聖国の民は全員、メンタルが選民な聖職者なんだよ。


 自分たちは神に仕えるため、特別に選ばれた者。

 だから、神が命じたことは、命を捨ててでもやり遂げる。

 自分たちでできなければ、次世代に託す。

 艱難辛苦バッチこい、貧困飢餓もウエルカム。

 と、まあ、そーゆー連中なわけ。

 上から「これ、聖戦だから、勝ってきて」と言われたら、死にかけてても戦うやつばっかりなんだ。

 多少貧乏になったぐらいじゃ、士気の低下は期待できない。


 でもまあ、貧困が長期間続けば、食糧事情も悪化する。必然的に、体は弱る。

 長い目で見れば、確実に弱体化するわけです。


 ただ、聖国もバカじゃない。

 こちらが動けば、必ず反応してくるだろうね。

 そも、ここ最近の動きを見てると、長期戦は考えてない気がする。



 肝心の小国を引き入れる方法は、いい案が出てこない。

 いや、聖女の羽で釣るのは確定なんだ。上手い運用方法が思いつかないんだよ。


 それと、もう一つ。

 聖女の羽じゃ、お祓いや除霊や治療ができない。

 聖国とスッパリ縁を切らせるには、これも何とかしなきゃね~。


 治療については当てがある。()()完治魔法を鳳凰の羽に付与すれば、治せない症状ものは、おそらくない。


 問題は、お祓いと除霊なんだ。

 生き物にいた霊は、呪いと同じで状態異常のようなもの。なので、完治の羽(仮称)で事足りると思う。これは、けがれも同じだ。

 物に憑いた霊や、穢れ・呪いの類をどうするか、これが問題なんだよ。


 確実なのは、除霊とお祓いの両方ができる呪文を付与すること。


 龍の聖女はあらゆる呪文を使える。

 つまり、そーゆー呪文さえあれば、私が覚えて付与して解決するわけ。

 はたして、そんな都合がいい呪文があるのか?

 生き物なら完治で行けるんだから、私はあると考えてます。


 ん? なぜ別々の物に付与しないのかって?

 それは大人の事情だよ。


 エリシュは聖国と敵対するけど、マルクト教を否定するわけじゃない。

 聖国教会とは決別するけど、教義自体はそのままにしたいんだ。イングランド国教会みたいにね。

 そのためには、○○(ナントカ)の羽は1枚か3枚が望ましい。

 聖女の羽に、他の効果をプラスするのは無理。

 そーゆーことです。


  ☆


 時間になったので、今日の会議は終了。結論が出るまで延長なんて、愚の骨頂ですよ?

 羽の運用方法は、次回までの宿題になりました。


 それじゃ、私は呪文を調べることにしよう。

「団長、どちらへ行かれるのですか?」

「書庫よ。覚えたい魔法があるから、探しに行くの」

「わかりました。お供します」

 一人で探すより、二人の方がいい。

 私はエスメロウドを連れて、書庫へ向かった。


「団長が覚えたいのは、聖女の羽に足りないものを補う魔法でしょうか?」

「ええ、正解よ。悪霊や穢れを祓って、かけられてる呪いを解く。そんな呪文を覚えたいの」

 歩きながら尋ねてきたエスメロウドに、私はそのまま答えた。

「普通なら、聖職者が神に祈って力を借りる行為ですね。となると、光魔法の神聖系から探すのがよろしいかと」

「確かにそうね。手あたり次第に魔法を探すより、何倍も効率がよさそう」

 彼女、思ってた以上にできるね。

 見た目はレッドヒロインなのに、中身はブルーヒロインだよ。 

 ……もしかして、私はブルーヒロイン枠じゃなかったとか?

 あ、物語の最初からネタに走るブルーヒロインはいませんかそうですか……orz


  ☆ ☆


 手分けしてそれっぽい本を全部見たけど、目的の魔法は見つからなかった件。

 後の本は、タイトルからして期待できない。

「これは……、団長が新しい魔法を創った方が、早いのではないでしょうか……?」

「そうね……、私もそう思うわ……」

 本棚二つ分。100冊を超える魔法書を調べ終えた私たちは、机に突っ伏してます。

 ギャグ漫画なら、三頭身ぐらいにデフォルメされて、口から魂的なものが出てるはずよ。


  ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


 王女の日の二日後。


 私はエスメロウドを連れて、バックラ領の街・ゼロワノに来てる。

 昨日、近くの森にカースドラゴンが現れ、多大な被害が出たからだ。

 負傷した冒険者が多数。ついでに森が呪われたらしい。

 なお、ドラゴンは北の方に飛び去ったそうだ。


 私はギルドで冒険者の治療を担当。エスメロウドには森の調査を頼んである。

 それじゃ、チャチャっと済ませて私も森に行こうか。


  ☆


 冒険者たちの治療は呪文一つで終了。

 こんなこともあろうかと、大人数にも使える完治魔法パーフェクトキュアを創っておいたんだ。

 その名は完治魔法の雨パーフェクトキュア・レイン

 しずくが知ってたゲームに「HPを回復する雨」があって、それをイメージしたらできました。


 重傷者も救えたのは、私が来るまでもたせてくれてた教会関係者や治癒魔法使いのおかげ。

 さらに言えば、彼らを冒険者ギルドまで連れ帰ってくれた人たちのおかげだ。

 そういう人たちがいるから国が回ってるってことは、ちゃんと覚えておかなきゃね。


  ☆


「あっ、団長! こちらです!」

 ゼロワノからそう遠くない森のはずれ。

 倒木が散らばってるところで、エスメロウドが手を振ってる。

 近付いてよく見ると……。


 あー、これ、アカンやつや。

 昨日ドラゴンが暴れたあたり、草も樹も腐ってます!

 しかも、目には見えないおぞましい気が、湯気みたいに地面から出てます!


 うん。出てるのは瘴気しょうきじゃない。

 瘴気はね、近寄ると気分が悪くなるんだ。吐き気とか、めまいとか、頭痛とかね。

 目の前の気は、背筋に冷たいものが走るタイプ。恐怖感とか、忌避感とか、そういうのに訴えてくる系。


 はい、かなり強力に呪われてます!

 私は闇属性無効だから平気だけど、普通の人間は足を踏み入れちゃいけません!

 カースドラゴン、(復旧が大変という意味で)恐るべし……。


「どうします、団長? 試されますか?」

「ええ。当然でしょ」

 私が試すのは、お祓いと除霊を両方できる新魔法。

 さっきまで漠然としてたイメージが、強力な呪いを前にして、だんだん形になってきた。


 瘴気は世界のことわり。一方、呪いの気は、理から外れたもの。本来あってはいけないもの。

 本来あってはいけないのは、悪霊も同じこと。現世にとどまる霊は、輪廻の理から外れたもの。

 神聖な力で、それらを理に導く。導くのは、やっぱ光よね。

 …………。

 ……。

 イメージはできた。でも、言葉が湧いてこない。

 神聖な力と光は合ってそうな気がするけど、他がダメな模様。

 これは、アプローチを変えるべきね。


 神聖な力を持った光……私が使える魔法だと、神聖滅却光マズダがそう。神聖な光で全てを極微ごくみに返す魔法だ。

 これを目の前の呪いに使うと、草木や地面もろとも呪いが消える。

 つまり、呪われてる人に使うと、人まで消しちゃうわけ。

 ただ、極微に返ったものは、理の中に戻るんだよね。

 ふむ。神聖滅却光マズダをベースにするのはアリかもしれない。


 そうだねー、対象に光を当てたら、理から外れてるモノだけが蒸発する感じかな?

 蒸発しただけだと、気体のまま残る。気化じゃなく、一気にことわり化してくれると楽だね~。

 あ、いきなり言葉が湧いてきた!

神聖理化光バルナ

 かざした右手から柔らかな光が広がり、呪われた地を照らす。

 呪いはあっけなく消え去った。

 ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


 そういえば、0話に書いた完治魔法の雨パーフェクトキュア・レインが出てないな~と思ったので、ここで覚えさせました。

 完全な後付けです。

 飛び去ったカースドラゴンは、三章の間になんとかします。


 なお、次回の投稿は明後日以降になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ