30.大部分は聖女様、最後は○○がお送りします
エリシュは旧ディマンド領に関わらないと決めた。
でも、他の大国はそうじゃない。
北の大国――マルクト聖国は、聖女を使った勢力圏の拡大を公然と始めた。
ディマンドが一つの国だった間は、聖女が分担で各地を巡回し、瘴気を浄化していた。
でも、小国に別れた今、自国にいる聖女を他国に回す王など、いるはずがない。
聖国はそこにつけこみ、聖女不在の小国を次々と配下にした。
まず、「聖女を巡回させるから」と教会に転移門を設置するよう持ちかけ、移動手段を確保。
聖女より先に聖騎士団を送り込み、支配下に入るよう要求したの。
聖騎士団に勝てる戦力を持たない。なにより、瘴気の沼が生み出す魔物は、自分たちの手に負えない。
小国は、聖国の属国か飛び地になる以外に生きる道がなくなったわけ。
西の大国――バトランチス帝国は、不気味な沈黙を貫いてる。
大陸最大の領土を持つこの国は、都市伝説的な噂以外は全てが謎。
私が生まれたころに皇帝が変わったらしくて、それ以降は、実質的な鎖国状態なの。
幸いにも地理的に離れてるから、エリシュ的には当面スルーね。
と言うわけで、エリシュは対聖国に全力で備えてます。
国境は接してないけど、間の小国は無いのと変わりないからね~。
これだけの大騒動に深くかかわった預言者は、現在行方不明。
私が消した勇者軍団の中に、金髪碧眼の人間はいなかった。
茶髪碧眼とか、金髪黄眼はいたんだけどね~。
目立ったところでは、ネコ耳とクマ耳の獣人が各一人、半竜人が二人いましたよ。
何? なぜそう言い切れるのかって?
それはだね、私は視力がいいだけじゃなく、見た光景を写真みたいに覚えているからなのだよ。自分に都合がいいところだけだけどな!
実際のところ、預言者が最前線で敵とバトるなんて、そうそうないよね。普通は安全なところから、トンデモな方法で見てるよね。
こそっと聖国に戻ってても、私は驚きませんよ。
それじゃ、区切りがいいところで、現在の私のステータスを見せておこう。
帰国してから色々調べてカスタマイズしたし、新しくゲットしたスキルの類は概要だけ触れてスルーしてきたからね。
「ステータス!」
最初に、タブの説明。
タブは追加・削除・並べ替え・名前の変更ができる。最初に表示されるのは、左端と決まってる。
私は左から順に、基本情報、能力、魔法、戦闘系スキル、非戦闘系スキル、称号と並べてる。
タブの表示項目は、追加・削除・並べ替え・名前の変更ができる。追加する項目は、リストから選ぶ形式だ。
基本情報はデフォのまま。タブの並びも左端から変えてない。
種族:人間
名前:ティアーユ・マート・マルクト・エリシュ
年齢:15歳
総合力:SS
こうしてるのには理由がある。
便利魔法の熟練度ランクがSになると、スタータスで他者――他の人や魔物・動物――のデータを見られるようになる。
逆に言うと、熟練度ランクがS以上のステータス使いに、自分のデータを公開することになるわけ。
その内容が、左端のタブ。
チェックする時に楽だからと、そこにアレコレ集めると……。
はい。そーゆーことです。
今回は左から順番。次のタブは能力よ。
HP:10000/10000(10000)
MP:10000/10000(10000)
ST:10000/10000(10000)
STR:10000(10000)
INT:10000(10000)
DEF:10000(10000)
REG:10000(10000)
SPD:10000(10000)
火耐性:D(C)
水耐性:D(C)
風耐性:D(C)
土耐性:D(C)
光耐性:B(A)
闇耐性:S(S)
聖女衣を着てるから、耐性が1ランク上がってる。
SからSSへのアップは、聖女衣の効果を超えてるので無理な模様。
能力値は変化なし。でも、新たに分かったことがある。
それは、数値表示はカンストでも、実際にはそれ以上の値が、キチンと処理されてるってこと!
気付いたきっかけは勇者王。
私のスキルで弱体化してたはずなのに、力や防御力は私以上だった。
戦闘中に見てる余裕はなかったから、倍マックスした私の力が2万ジャストだったと仮定しよう。
勇者王の素の力は、スキルで弱体化してたなら20万オーバー。スキルを無視できてたとしても、2万を超えてたわけ。
ついでに、自分の総合力がSSなのも納得したわ。
次は魔法ね。
生活魔法:D
ライト、クリーン、魔法の袋
便利魔法:S
ステータス、鳳翼天翔*、鳳凰天駆*
火魔法:S
小火球、極大プラズマ火球、小爆発、灼熱地獄、天帝の龍撃*
水魔法:S
小水球、氷弾、洪水、絶対零度、凍結地獄、凍結地獄・不殺*
風魔法:S
暴風、雷霆
土魔法:S
隕石群、地震
豊饒の土
光魔法:SSS
神聖滅却光
回復、範囲回復、仲間回復、自動回復、完治
蘇生、範囲蘇生、仲間蘇生、自動蘇生
過剰回復魔法*
闇魔法:S
冥府幽閉闇、魔法拒絶領域、凍結幽閉*
生活魔法は、とある目的があって、ランク上げ中です。
鳳翼天翔と鳳凰天駆は、オリジナルの便利魔法。
便利魔法のランクがSになってるのは、新魔法――=オリジナル魔法を創るための条件だったからよ。
本来は逆な気がするんだけど、もらえたモノは、ありがたく使わせていただきます。
相手を殺さない凍結地獄・不殺は、オリジナル。
それを冥府幽閉闇と合成した凍結幽閉は、闇魔法になった。謎空間に幽閉するのがメインだから、こうなったんだと思う。
次は戦闘系スキルね。
体技スキル
拳:SS
魔法拳、千花裂孔拳*、毛枯破細拳*
流星拳、彗星拳、闘気拳、闘気弾、千花裂孔弾*
蹴:S
ふみつけ
格闘:S
タックル
体術スキル
防御:S
回避:SS
回復力上昇スキル
HP回復速度UP:S
MP回復速度UP:S
ST回復速度UP:S
冒険者スキル
鑑定:S
瘴気感知:B
気配感知:C
戦闘補助スキル
ラーニング、行動分析、行動予測、破魔の秘法、倍マックス
称号スキル
瘴気浄化、王権発動、龍聖女絶対領域、龍聖闘気
拳がSSにランクアップ! これは、人類史上最強レベルです。
オーク軍団を吹っ飛ばしたり、冒険者ズを瞬殺したり、いろいろやったからね~。
回避もSSにアップ。
これは、格上の勇者王相手にヒット&アウェイで戦った成果だね。
瘴気感知と気配感知は冒険者スキル枠。
ランクが上がれば、魔物の種類とか、右手を挙げたとかも、わかるようになる模様。
龍聖女絶対領域と龍聖闘気は、聖女衣着用時限定のスキル。
脱ぐと、龍聖女絶対領域は龍聖女領域になり、龍聖闘気はグレーアウトします。
次は非戦闘系スキル。
生産スキル
調合:S
付与:SS
栽培:S
社交スキル
礼儀作法:C
会話:D
ダンス:D
聖女の羽を量産したので、付与がSSにランクアップ! これは、前人未到の偉業レベルです!
社交スキルは3つとも1ランクアップ。
母国で王族の自覚をもって生活してるから、自然に上がった感じだね~。
やっぱ、座学&練習より実践ですよ。
ダンスが上がってるのは、歩き方や仕草を意識してるからだと思われます。
最後は称号。
聖女、魔王、魔神、王族、天賦の才、鏡竜撃破、機竜撃破、魔竜撃破、弩竜撃破、龍の聖女、拳王
拳がSSになったので、拳王が増えてます。
効果は魔王と同様、パンチ攻撃が必ずクリティカル(必中&防御力無視&威力2倍)になります。
ちな、勇者の称号は、勇者召喚された者に与えられます。
なんでそんなことを知ってるかと言うと、ステータスのヘルプが充実したから!
生活魔法のランクを上げてるのも、ヘルプで見たからです。
何がどうなるかは、まだ秘密ですよ?
当面の優先課題は、拳をSSSに上げること。拳神になると、パンチが貫通攻撃になるからね。
勇者王みたいに魔法が仕事しない相手と戦うには、必須と言っていい。
ついでに、蹴と格闘も上げたいね。技のレパートリーも増やしたい。
と言うわけで、今日もアナト義母上とスパーリングしてきま~す!
★ ★ ★ ★ ★
ディマンドを後にした私、レイモン・クラーク――おっと、今はレイ・オニキスだったな――は、とある小国に滞在していた。
ワイ・ズマン敗北の報せは、この国にも流れてきた。
まさか!? という思いもあったが、やはり……とも思った。
神の望みは世界の変革。
ワイ・ズマンが勝てばエリシュが乱れ、負ければディマンドが割れる。
どちらに転んでも、目的は達せられたわけか……。
「レイモンよ、エリシュの脅威を教会に訴えるのです……」
「!?」
御言葉は意外過ぎた。
神は聖国も変革なさるおつもりなのか……?
第二章 勇者という名の災厄 了
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
レイのパートが短いのは仕様です。




