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龍の聖女ティア ~鳳翼の異名を持ち龍力を自在に操る光輝なる第13王女~  作者: 狩野生得
第一章 至龍の試練(しりゅうのしれん)
3/53

3.前世の記憶が戻った聖女様、現代用語を使いまくる

《前世の記憶が開放された効果により、前世の身体能力が反映されます》

 一拍と置かずに次のメッセージが届いた。

 これは……、転生モノや転移モノでよくある天の声……?


 だとすると、走馬灯で見たのは前世の記憶で確定だね。

 どうやら私とジには、深い因縁があるらしい。

 もしや、ジは不滅で、時空を超える力を持ってて、私にリベンジに来てるとか……?

 マジ勘弁してください!


 それと、もう一つ。

 私、天の声を聞いたのは初めてじゃないかも……。


 あ、ヤバい!

完治魔法パーフェクトキュア

 考えるより先に呪文を唱えた。

 私は秒で全快。同時にその場を離れる!

 間一髪!

 私が倒れていた場所には、ジの拳が振り下ろされてた。


 あっぶなー。今のが当たってたら、あきらめなくてもそこで試合終了だった。

 うん。走馬灯で見た回避力、確かに身についてる気がする。


 前世とか天の声とかも気になるけど、今考えるべきはジの倒し方だね。

 私は、前世の記憶から、ジに関する情報をかき集めた。

 …………。

 ……。

 ちょっ、マジっすか!?

 私って、前世もええとこの嬢ちゃんやん。まあ、これは後回しで良いかな?

 で、15歳でフルダイブVRMMORPGの開発責任者をやってた。……うわっ、前世の私、めっちゃハイスペックやん。

 これは、小出しにすると逆にめんどいから、ここでまとめて説明しといたほうがええな。


 ということで、前世の私の個人情報をデデーンと公開しちゃおう!


 名前は当真とうま しずく

 地球という惑星(世界)の、日本という国で生まれた。

 家族は両親と弟。祖父は食品・日用品流通大手のトーママートグループの会長。

 飛び級で院卒。フルダイブVR関係の論文で博士号取得。

 幼少のころはバレエ、その後、新体操とフィギュアスケートに転向。

 趣味のVRゲームが実益も兼ねてて、トーマVRゲームズ開発室長。

 雫が室長になってから、トーマVRゲームズはヒット作連発中。

 主な仕事はフルダイブVRゲームの企画とテストプレイ。

 プレイスタイルは自身の身体能力を生かせる回避型が好み。

 享年15歳。

 VRゲームのテストプレイ中に事故死。新型のヘッドセットの試作品の不具合が原因とみられる。


 そんな雫が最後に手掛けたゲームのタイトルは、ファブラージュ。

 私が走馬灯で見たバトルは、そのゲームのPR用リプレイ映像というオチでしたー。

 いや~。変な因縁とか無くて、ホッとしたよ。


 それじゃ、話をジに戻そう。

 そして、勝つ方法を考えよう。


 まず、正直言って意外過ぎる事実が判明した。

 私が挑んでる至龍しりゅうの試練と、雫の遺作ともいえるファブラージュには、偶然の一致で済むレベルか? っていうぐらい、共通点が多い。


 ファブラージュには、四竜しりゅうの試練というイベントが用意されてた。

 そう。至龍しりゅうの試練の旧称と同じなんだ。

 そして、イベントの内容も同じ。4体の竜を、好きな順番で倒していくというものだ。

 登場する竜の名前と特徴も同じだ。鏡竜かがみりゅうジの姿は、同じと言っていいレベルで似ている。


 イベントの性質も似てる。

 四竜の試練は、普通にプレイしたら、99%勝てないようになってる。いわゆる負けイベントだ。


 至龍の試練も、それに近いものがある。

 仮に、竜の能力がファブラージュと同じだったら、最初にジを選ばないと、秒で負ける結果しか見えない。

 何故かって? 戦闘が得意な聖女なんて、この世界(インキビット)には一人もいないんだよ?

 しかも、相手は竜だよ? 1体でオークの大群と渡り合える、とんでもない魔物バケモノだよ?

 私だって、最初に他の竜を選んでたら、迷わず降参したと言い切れる。


 そして、自慢するみたいでアレだけど、私以外の聖女だったら、最初にジを選んでも5分もたないと思う。

 私がここまで粘れてたのは、神様にめられるレベルで回復魔法を使えるから。他の聖女だと……。

 だってさ、ジの特徴って、こうだよ?

 ・対戦開始時に相手の能力をスキャンし、自分の能力値(力や魔力など)を相手の1.5倍にする。

 ・相手がレベルアップや熟練度アップで覚えた技や魔法は、最初から全部使える。

 ・初見のオリジナル技や魔法を受けた場合、ラーニングして使えるようになる。

 ・あらゆる攻撃を倍返し(200%反射)する。倍返しできない場合、可能なら同じ攻撃で相殺する。

 あ、オリジナルの技と魔法っていうのは、レベルアップや熟練度アップでは覚えられない技や魔法のことです。

 と、用語を説明したところで、改めて声を大にして言おう。

 斬りつけようが、殴りかかろうが、魔法をぶっ放そうが、全部倍返しってなんやねん!

 こんなん、倒せるわけないやろ!


 駄菓子菓子だがしかし、雫はジを倒してた。

 すべての攻撃を神回避。自動蘇生魔法オートリザレクをかけておいてからの自爆攻撃っぽい魔法の一撃。

 四竜の試練をデザインした本人だから、倒し方を知ってて当然と言えば当然。

 ただし、実際に倒して見せるには、自分の5割増しのパワーとスピードで繰り出される攻撃をかわす必要があるけどな!

 はい。私は雫と同じように動ける自信がありません! 身体能力は反映されたってことだから、そのうちできるようになるでしょう、多分……。


 肝心の倒し方は、こんな感じ。

 ・貫通攻撃があるのは大前提。初見のオリジナル技か魔法で一気に決める。

 あの自爆攻撃っぽい魔法は、オリジナルで貫通攻撃だったと、そーゆーことだね。

 あ、貫通攻撃っていうのは、無効や吸収や反射を含む軽減手段を無視してダメージを与えられる攻撃のことです。

 貫通攻撃でも相殺はされるから、一度見せた技は二度目は通じないのか……。やっぱ、勝たせる気ないよね(笑)


 そんなファブラージュのジだが、ちと気になるところもある。

 私が戦ってるジと外見がほぼ同じなのは、前も言った通り。

 通常は身長2mで、相手に合わせて背格好を変えるのも同じ。


 そんなジが持ってる、貫通攻撃以外は無条件で200%反射する設定。

 私が戦ってるジも同じことをしてると仮定すれば、いつのまにか斬られてたのも説明がつくんだ。


 この世界(インキビット)には、硬くて斬れないモノはあるけど、斬撃を反射するモノは無い。

 当然、私の聖剣も、そんなモノを想定してない。なので、貫通攻撃はついてない。結果、斬りつけると倍返しをくらう。

 そういう仕組みなんじゃないかなって。


 だったら、「聖剣に貫通攻撃を付与すればいいんじゃね?」と、お考えの貴方、その発想は悪くない。

 でもね、残念だけど、それは無理なんですよぉ。

 付与ってねー、ものすご~く集中しなきゃ、できないんですよ。

 しかも、失敗したら、品物アイテムは壊れちゃうんです。

 戦場で敵の攻撃をかわしながらチャレンジするのは、武器を投げ捨ててるのと同じなんですよ。

 敵に向かって投げれば奇跡でワンチャンあるかもだから、最悪な選択ですね。


 それ以前の問題として、貫通攻撃を付与できるのかって話がある。

 魔法と特殊効果のうち、付与しやすいのは魔法だ。理由は、求める効果が呪文という形で確立されてるから。

 品物を用意し、呪文を写すように送り込む。これでOK。ちな、呪文を唱える以上に魔法力を使うわ。

 これに対し、特殊効果の付与は難しい。

 工程は魔法と同じ。付与する人が効果をイメージし、それを品物に写すように送り込む。相応の魔法力を使うのは、魔法の時と同じよ。


 ハイ先生! 貫通攻撃なんて効果、言葉や文字にはできるけど、イメージするのはマジ難しいです!

 なので、普通はトライ&エラーを繰り返すわけ。一発で成功なんて無理ですから!


 そも、仮に貫通攻撃できる聖剣を持ってたとしても、私の腕前でジを斬れるのかっていう根本的な問題があるけどな!


 ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


 本作は転生モノですが、生まれた時から前世の自我と記憶があるという王道パターンを避けてます。

 前世と同じキャラが普通に赤ちゃんから成長し、享年と同じ年になったら、前世の記憶を知識として使えるようになったって感じです。

 同時に身体能力も上げることにしたのは、そうでもしないと話が破綻しすぎるという、大人の事情です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 前世の設定すごすぎ!? 飛び級で院卒に加えて、博士号とはチートすぎます(;^ν^) >駄菓子菓子 数年前に放映していた某アニメを思い出しました(o・∀ というかジも大概チートですね。 …
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