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26.会議室の聖女様、衝撃の事実に気付く

「な、何が……いったい何が……?」

 実力が違いすぎるキガーンには、今の攻防が見えなかった模様。

 ガロベンが負けたことだけは認識できているようで、力なくへたり込んでる。

「何、ま~た目をつぶってて見えなかったの? 恥ずかしい奴ね。それじゃ、見えるようにやってあげるわ!」

 怯えた動きと怯えた目で、キガーンが私を見た。

 それを確認し、私は魔法を使う。

天帝の龍撃(インペラトルドラコ)!」

 突き出した右手の先に、青い龍が出現!

 龍はダウン中のガロベンを飲み込み、瞬時に消し去る!

 オリジナル魔法になったので、片手でも出せるようになりました~。

 でも、威力はそのままよ。

 ドラゴボ的な演出もなくなったから、使い勝手は大アップね。


 ガロベンの棺桶は無い。教会にワープもしていない。強者ではあったけど、自称勇者で確定だね。


「そ、そんな……殺さなくてもいいじゃないか……。あいつは……、俺と違って復活できないんだぞ……」

「何を甘いこと言ってるんだか。勇者を騙ってこの街で好き放題しておいて、見逃してもらえると思ってたの?」

「か、騙ってなんか……いない。お、俺は……ゆ、勇者……勇者……なんだ……」

「だからって、罪を犯して良いってことにはならないわ。それに、あんたが勇者だったらちょうどいい。試してみたいことがあったの」

「た、試す……?」

「そうよ、試すの。勇者を復活させない倒し方をね」

「!?」

 キョトン顔のキガーン。でも、悪人に人権はない。――じゃなくて、説明してやる義務も義理もない。

天帝の龍撃(インペラトルドラコ)!」

 青い龍がキガーンを飲み込む。が、その姿が龍の中で消えたのと同時に、棺桶が現れた! 龍は棺桶を完全にスルー!

 ポツンと残った棺桶は、ゲームっぽい効果音と共にワープ。実験は失敗に終わった。

 う~ん。消滅させても棺桶になるのか……。さすがは世界のことわりだね。


 私は教会に出向き、事情を話してキガーンを回収。知ってる限りの情報を吐かせた後、実験を再開した。

 なかなか上手くいかなかったけど、奴は着実に弱体化。最後は人畜無害になったよ。やったね!


  ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


 王城の中会議室。

 聖域ディルムンから帰国した日と同じメンバーが集う中、私はキガーンから入手した勇者関係の情報を報告した。

 ディマンドの二人からの情報、エリシュが各方面から入手した情報と合わせて、一度整理しておくわね。


 まずは勇者王。

 名前はワイ・ズマン。元の世界では、ブラクムンという国の皇子だったらしい。そう。他の参加者には明かせないけど、スキル<王権発動>持ちだ。

 彼は他の勇者を何度も倒し、スキルのおかげでグングン強くなった。

 そして半月ほど前、旧王族を追放。ディマンドの王となった。

 傲慢で好戦的な性格。他国と対等に付き合うという発想は無いらしい。

 外見年齢は20代半ば。黒髪黒目の人間で、剛剣の使い手。


 次は、勇者軍団。

 王位に就いたワイ・ズマンは、勇者召喚を継続させた。

 目的は戦力の増強。素直に従う者は、そのまま配下に。

 反抗する者はSランク冒険者程度に弱体化させ、否応なしに従わせた。キガーンは、これ。

 彼らは後述するパートナーとペアを組み、周辺国の侵略にあたっている。

 勇者の多くは人間だが、一部には獣人や異形の者もいる。


 次は、廃棄勇者。

 私がカラクリコで解呪した弱々勇者ズが、これ。

 ワイ・ズマンに何度も倒され、力を奪いつくされてからポイ捨てされた、可哀そうな勇者たち。

 捨てられる時も、周辺国の弱体化を期待して辺境の地に飛ばされたとかもうね……。

 カラクリコに来たのは全員じゃないけど、それでも解呪してあげられて良かったと思ってます。


 次は、勇者軍団のパートナー。

 異世界から召喚された強戦士。ガロベンが、これ。

 もうね、驚きの一言。これに尽きます。

 まず、勇者以外の人間を異世界からインキビットに召喚できたということ。これが驚き!

 次に、召喚された人間は、勇者ほどではないけど、元の世界にいた時よりパワーアップしてる。これも驚き!

 そして最後の驚き。

 勇者やパートナーを召喚したのは、なんと、一人の人間だった!

 うん。ディマンドの二人から聞いた預言者が、たった一人で百人を超える人間を召喚してたんだ!


 と言う流れで、最後は件の預言者。

 名前はレイ・オニキス。金髪碧眼の男性で、外見年齢は30代半ば。

 ディマンドに現れたのは、私が聖域ディルムンから帰国する三日前。ディマンドの二人が言った通り、マルクト聖国から来たのは間違いない。

 でも、出身は聖国じゃない。

 各地の教会には、5歳のイベント――生活魔法やスキルを授かるアレ――の記録が残ってる。その記録が、聖国のどの教会にもないんだ。

 彼の能力は、とにかく異常だ。

 勇者以外の人間を、異世界から召喚できたこと。

 一日に何人も勇者を召喚できたこと。

 召喚した勇者に、とにかく戦い続ける呪いをかけることができたこと。

 もうね、謎だらけで異常だらけなんですよ。


 ついでに、ディマンドの旧王族関係。

 王と王妃と王太子が、サカスダン領に隣接するノワルムン領に落ち延びてる。

 護衛は僅かな近衛騎士のみ。

 領都に聖女はいるが、エリシュ方面への街道には瘴気しょうきが満ちてた。それで、使者を出せなかった。

 でも、私がカラクリコに六日いたので道中の瘴気が浄化され、使者を出せた模様。

 友好国だったけど、正式に交わされてたのは相互の不可侵条約だけ。

 王族や貴族の縁戚関係もない。

 民間が草の根交流してたって感じだね。



 以上を踏まえると、ディマンドの勇者王と仲良く付き合うのは不可能って結論になる。

 廃棄勇者を送り込んできたのは、エリシュの国力を多少なりとも削ぐのが目的。

 つまり、エリシュの上に立つ気が満々ってこと。


 だからと言って、こちらから攻めるのは賢い行動じゃない。

 私以外の戦力を結集しても、勇者王と互角に戦える保証は無い。って言うか、無理じゃね?

 かくいう私も、絶対に勝てるという保証はない。


 だって、勇者はデフォで脅威度SS以上なんだよ?

 勇者王は、そんな勇者たちから力を奪ってるんだよ?

 しかも、配下に勇者が数十人!

 いったいどうしろと……。


 なので、勇者王に対しては、国境の守りを固めて現状を黙認って形になると思う。

 不本意だけど、仕方ない。


 旧王族は、放置一択。

 敵に回すデメリットは無くて、味方をするメリットは無い。

 勝手に野垂れ死んでくださいってところかな?


 とりま、最終決定は父上が下して、明日には発表されるでしょう。


 あ、大事なことは、もう一つあった。

 ディマンドにいると思われたトンデモな魔物だけど、マジで誰も知らない模様。

 ディマンドだけじゃなく、周辺の地域や小国でも、誰も知らないんだ。

 これ、普通じゃアリエナイんだよね。


 そうなると、一つの疑問が生まれるわけで……。


 うーん。つよいまものはどこにもいないのに、どうしてゆうしゃをしょうかんできたんだろうなー。とってもとっても、ふしぎだなー。


 ……あ、何か隠してるって、わかります?


 実はですね、私、その理由に気付いちゃったんです。


 預言者レイが勇者を召喚し始めたのは、私が至龍しりゅうの試練をクリアしたのと同じタイミングだったんですよ……。

 預言者だけあって、神の声を聞いたらしいんです。「条件は満たされました。さあ、勇者を召喚するのです」的な声を。


 はい。人間の手に負えない魔物バケモノって、私だったんじゃないかな~って、そう思ったんですよ。

 総合力(脅威度)SSって、人間の力で何とかできる壁を超えてるんですよね……。


 ……あ、ヤバい! 落ち込んでる場合じゃない!

 マジで私が勇者召喚を可能にしてるんなら、止めてもらわなきゃ!

 アチコチで勇者召喚合戦なんて始められたら、世界大戦が起こりかねない!



 私は「件の魔物のことを聞いてみる」という名目を皆に告げ、聖域に飛んだ。

 ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


 カレンダーのおかげで、第二章は毎日投稿できそうです。

 第三章を隔日投稿にするか、何日か休んで(書きだめして)毎日投稿にするのかは、考え中です。

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