10.二日目は安心な聖女様、レオタード姿で試練に臨む
一仕事終えた私は、時間を確かめた。
うん。まだ日は高いね。
それじゃ、明日のために、ちょこっと準備しますか。
明日の私に必要な物は、二つある。
一つは戦闘スタイルに合った服。
トーガはゆったりしてるから、紙一重の回避に向いてない。それになにより、走りにくい。
もう一つは、対空攻撃能力。
私がカーズマを倒せたのは、奴が飛ばなかったから。
ファブラージュの機竜は「飛べる」けど「飛びながら戦う」設定じゃなかった。
でも、魔竜は「魔法が武器の戦闘ヘリ」的な戦いもできる設定だった。
いくら私の能力が高くても、パンチで攻撃できる高さなんて知れたもの。
ジャンプすれば届くかもだけど、空中で自由に動けるわけじゃない。ヘタに跳ぶと、逆にボコられるね。
なので、射程の長い攻撃手段は必須なのだよ。
この二つをなんとかするため、私は出かけることにした。
行先は、聖騎士の訓練場。
アポなしで行くと男子禁制の関係とかで面倒なことになるので、世話係に先触を頼む。
はい。王女な私には、世話係――もちろん女性――が何人かついてます。
私は頃合いを見て訓練場に出向き、目的の品物と、明日のための技を習得した。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
試練二日目。神の祠。
私は、いつものトーガではなく、女性聖騎士用の訓練服を身に着けてる。
肌の露出は多いけど、少しの闘気で全身をカバーしてくれる優れ物だ。見た目はド○クエ4の女勇者っぽいかな。
似たような服は冒険者用のお店にもあるけど、性能が全然違うんだ。
それじゃ、今日はステータスに大災害級認定された力を、存分に試させてもらうわ。
戦うのは魔竜→弩竜の順。
至龍の試練で大事なのは、龍の聖女に相応しい力を示すこと。勝つことだけじゃない。
エヌマトーラにある通り、空を裂く拳や、あらゆる呪文も見せなきゃね。
そう考えたら、空を裂く拳で魔竜を倒す→魔竜から強力な魔法をゲットする→その魔法で弩竜を倒す、の流れがベストよね。
私は魔竜の扉を開け、第三の試練の場へ向かった。
☆
戦いの場は、昨日と同じで、真っ白な異空間。
そこで私を待っていたのは、絵にかいたようなドラゴン。全身がウロコで、四足歩行で、蝙蝠っぽい翼がある。
個人の意見だけど、正統派のドラゴンって感じだね~。二足歩行型のドラゴン? それは怪獣です。
体の色は、少し光沢がある青緑……なんだけど、動くと各部位の色合いが変わる。青っぽくなったり、黄色っぽくなったり。
どうやら、光の当たり方で見え方が違うようだね。
カーズマの時と同じ理由で、大きさは不明。ちな、ファブラージュの魔竜は、翼がデビル○ンっぽいデザイン。ポケットなモンスターのボー○ンダ的に仕上がってました。
まあ、私がステータス通りに強いなら、相手の大きさも距離も、たいした問題じゃないんだけどね。
「人が第三の試練までくるのは、いつ以来じゃろう? だが、私は前の二体のようにはいかぬぞ。魔竜ラーミアスの力、思い知るがよい!」
いかにも今気付きましたという感じで、ラーミアスが告げた。実にドラゴンらしい、威風堂々とした声だ。
魔竜がセージ・ドラゴンなのは、ファブラージュと同じ。カーズマと同様、全然違うってことは、なさそうだ。
「ほうほう、そうきますか……」
ラーミアスのいる場所が昨日のカーズマと同じところだとしたら、100mほど離れてる。
そんな離れたところから、ラーミアスは魔法を撃ってきた。
撃ってきたのは火魔法。見るからに大火球だけど、唱えてる呪文は小火球だね。
えっ? なぜそれがわかるのかって? それは、行動分析のおかげです!
このスキル、ステータスで見たときは「大したことなくね?」って思った。でも、実際に使うと、なかなかのチートだね。
ちな、並の魔法使いが小火球を使った場合、命中させられるのは15mぐらい先まで。
的が遠くなると、火とか水は霧散しちゃうんだよ。もちろん、狙うのも難しくなる。
そんなことは当然、ラーミアスも知ってるはず。それでも撃ってきたってことは、確実に当てる自信があるってことだ。
ラーミアスは、小火球を連射してる。
いや、連射っていう生易しいものじゃないね。小火球が弾幕になってる感じだ。
それを可能にしてるのが、ラーミアスの背中の翼。前端の6か所に魔法力を集め、時間差で魔法を撃ってるんだ。
翼は二枚あるから、発射口は12か所だね。五指爆炎弾が児戯に思えるレベルだ。
おそらくラーミアスの狙いは、私を驚かすこと。
人間には不可能な魔法を見せつけ、戦意を削ごうって魂胆だ。
うん。奇遇だね。
実は、私も相手を驚かせることを考えてたんだよ。
ただね、その方法が思い浮かばなくて困ってたんだ。だって、神回避はカーズマ戦で披露しちゃったもん。
弾幕の第一波が私に迫る。距離、およそ20m。
それに合わせ、私は拳をふるう。
これが昨日の訓練の成果よ!
「千花裂孔弾!」
闘気を纏った闘気剣は、闘気を伸ばせば刀身が届かないところまで斬れる。厳密には違うけど、オレンジ頭の死神代行の斬撃みたいなものだ。
だったら、闘気拳でも同じようなことができるはず。
そう思ってやってみたら、意外と簡単にできちゃいましたー。
もちろん、伸ばすと効率悪いので、飛ばしてます。
無数の拳から放たれた無数の闘気が、炎の弾幕を散らす! そして、押し返す!
炎は壁となって広がり、互いの姿を見えなくした!
それは一瞬。
でも、それは私には十分すぎる時間。
私は全力でダッシュ! 100mを瞬時に駆け抜け、炎の壁を凝視しているラーミアスの背後をとった! ラーミアスは全然気付いてない!
「千花裂孔弾! か~ら~の、千花裂孔弾!」
無数の闘気がラーミアスの翼を撃ち抜く! 最初は左、続いて右。
飛ばれると厄介だからね~。
翼を両方ダメにされ、ようやくラーミアスは事態を把握した模様。
巨体に似合わぬ素早さで向き直り、私に魔法を撃ってきた!
いやそれ、竜が人間に使うような魔法じゃないから!
どうやら私は超強敵認定されたらしい。
大きく開いた口から放たれたのは、火球系の究極魔法極大プラズマ火球!
でも残念。
そこに私は、いません。突っ立ってなんか、いません。
千の風の代わりに、千の拳をプレゼントするわ。
流星拳スキルを使って放つ。
「毛枯破細拳!」
ふっふっふ。仮にもステータスに大災害級認定されてる私が、たった一つの技だけのために訓練すると思っていたのかね?
それ系のスキルもゲットしてくるに決まってるじゃないか!
極めれば一秒間に一億発も夢じゃない流星拳、それをまとめて放つ彗星拳。キッチリ取得しましたぜ。
「あ゛」
なんということでしょう!?
しっぽを入れたら30m近かったラーミアスが、見てるまにサラサラ崩れちゃいました!
いやいやいやいや。人間サイズだったジより時間がかからないって、どゆこと?
考えられるのは……、やっぱ、INTがカンストしたせいだよね。
《条件を満たしました。称号<魔竜撃破>を獲得しました》
《称号<魔竜撃破>の効果により、闇魔法<魔法拒絶領域>を獲得しました》
《称号<魔竜撃破>の効果により、スキル<破魔の秘法>を獲得しました》
『魔竜の扉クリア。選択の間に戻ってください』
天の声に続いて御使い様の声。
称号とスキルのチェックは、ここを出てからだね。
☆
『さすがですね、ティア。安心して見ていられました』
「ありがとうございます! 昨日、ステータスを見たら、私、ものすごく強くなってたので、だったら、それに相応しい戦い方をしようって」
『フフフ、いい心がけです。あと一戦、その調子で魅せてください』
「はい。新しいスキルをチェックしたら、最後の試練に挑みます」
止められないってことは、試練は一日二戦までOKってことかな?
それじゃ、スキルをチェックして、戦い方を考えますか。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
物語開始から10話目にして、やっと私TUEEEEができました。
もう、思い残すことはありません(嘘2回目)
あと未回収なのは、鳳翼と龍力と光輝ですかね?
鳳翼と光輝は、活動報告に書いた0話にそれっぽい描写があります。
興味がありましたら、読んでみてください。
https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/1472467/blogkey/2666039/




