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龍の聖女ティア ~鳳翼の異名を持ち龍力を自在に操る光輝なる第13王女~  作者: 狩野生得
第一章 至龍の試練(しりゅうのしれん)
10/53

10.二日目は安心な聖女様、レオタード姿で試練に臨む

 一仕事終えた私は、時間を確かめた。

 うん。まだ日は高いね。

 それじゃ、明日のために、ちょこっと準備しますか。


 明日の私に必要な物は、二つある。

 一つは戦闘スタイルに合った服。

 トーガはゆったりしてるから、紙一重の回避に向いてない。それになにより、走りにくい。


 もう一つは、対空攻撃能力。

 私がカーズマを倒せたのは、奴が飛ばなかったから。


 ファブラージュの機竜は「飛べる」けど「飛びながら戦う」設定じゃなかった。

 でも、魔竜は「魔法が武器の戦闘ヘリ」的な戦いもできる設定だった。


 いくら私の能力が高くても、パンチで攻撃できる高さなんて知れたもの。

 ジャンプすれば届くかもだけど、空中で自由に動けるわけじゃない。ヘタに跳ぶと、逆にボコられるね。

 なので、射程の長い攻撃手段は必須なのだよ。


 この二つをなんとかするため、私は出かけることにした。

 行先は、聖騎士の訓練場。

 アポなしで行くと男子禁制の関係とかで面倒なことになるので、世話係に先触さきぶれを頼む。

 はい。王女な私には、世話係――もちろん女性――が何人かついてます。



 私は頃合いを見て訓練場に出向き、目的の品物と、明日のための技を習得した。 



  ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


 試練二日目。神のほこら


 私は、いつものトーガではなく、女性聖騎士用の訓練服(武闘のレオタード)を身に着けてる。

 肌の露出は多いけど、少しの闘気で全身をカバーしてくれる優れ物だ。見た目はド○クエ4の女勇者っぽいかな。

 似たような服は冒険者用のお店にもあるけど、性能が全然違うんだ。


 それじゃ、今日はステータスに大災害級認定された力を、存分に試させてもらうわ。


 戦うのは魔竜まりゅう弩竜どりゅうの順。

 至龍しりゅうの試練で大事なのは、龍の聖女に相応しい力を示すこと。勝つことだけじゃない。

 エヌマトーラにある通り、空を裂く拳や、あらゆる呪文も見せなきゃね。

 そう考えたら、空を裂く拳で魔竜を倒す→魔竜から強力な魔法をゲットする→その魔法で弩竜を倒す、の流れがベストよね。


 私は魔竜まりゅうの扉を開け、第三の試練の場へ向かった。


  ☆


 戦いの場は、昨日と同じで、真っ白な異空間。

 そこで私を待っていたのは、絵にかいたようなドラゴン。全身がウロコで、四足歩行で、蝙蝠こうもりっぽい翼がある。

 個人の意見だけど、正統派のドラゴンって感じだね~。二足歩行型のドラゴン? それは怪獣です。

 体の色は、少し光沢がある青緑……なんだけど、動くと各部位の色合いが変わる。青っぽくなったり、黄色っぽくなったり。

 どうやら、光の当たり方で見え方が違うようだね。


 カーズマの時と同じ理由で、大きさは不明。ちな、ファブラージュの魔竜は、翼がデビル○ンっぽいデザイン。ポケットなモンスターのボー○ンダ的に仕上がってました。

 まあ、私がステータス通りに強いなら、相手の大きさも距離も、たいした問題じゃないんだけどね。


「人が第三の試練までくるのは、いつ以来じゃろう? だが、私は前の二体のようにはいかぬぞ。魔竜(セージ・ドラゴン)ラーミアスの力、思い知るがよい!」

 いかにも今気付きましたという感じで、ラーミアスが告げた。実にドラゴンらしい、威風堂々とした声だ。

 魔竜がセージ(賢者)・ドラゴンなのは、ファブラージュと同じ。カーズマと同様、全然違うってことは、なさそうだ。


「ほうほう、そうきますか……」

 ラーミアスのいる場所が昨日のカーズマと同じところだとしたら、100mほど離れてる。

 そんな離れたところから、ラーミアスは魔法を撃ってきた。


 撃ってきたのは火魔法。見るからに大火球モスボルクだけど、唱えてる呪文は小火球モスボだね。

 えっ? なぜそれがわかるのかって? それは、行動分析のおかげです!

 このスキル、ステータスで見たときは「大したことなくね?」って思った。でも、実際に使うと、なかなかのチートだね。


 ちな、並の魔法使いが小火球モスボを使った場合、命中させられるのは15mぐらい先まで。

 的が遠くなると、火とか水は霧散しちゃうんだよ。もちろん、狙うのも難しくなる。

 そんなことは当然、ラーミアスも知ってるはず。それでも撃ってきたってことは、確実に当てる自信があるってことだ。


 ラーミアスは、小火球モスボを連射してる。

 いや、連射っていう生易しいものじゃないね。小火球モスボが弾幕になってる感じだ。


 それを可能にしてるのが、ラーミアスの背中の翼。前端の6か所に魔法力を集め、時間差で魔法を撃ってるんだ。

 翼は二枚あるから、発射口は12か所だね。五指爆炎弾(メ・ラ・ゾ・ー・マ)が児戯に思えるレベルだ。


 おそらくラーミアスの狙いは、私を驚かすこと。

 人間には不可能な魔法を見せつけ、戦意を削ごうって魂胆だ。


 うん。奇遇だね。

 実は、私も相手を驚かせることを考えてたんだよ。

 ただね、その方法が思い浮かばなくて困ってたんだ。だって、神回避はカーズマ戦で披露しちゃったもん。


 弾幕の第一波が私に迫る。距離、およそ20m。

 それに合わせ、私は拳をふるう。

 これが昨日の訓練の成果よ!

千花裂孔弾せんかれっこうだん!」


 闘気をまとった闘気剣は、闘気を伸ばせば刀身が届かないところまで斬れる。厳密には違うけど、オレンジ頭の死神代行の斬撃みたいなものだ。

 だったら、闘気拳でも同じようなことができるはず。

 そう思ってやってみたら、意外と簡単にできちゃいましたー。

 もちろん、伸ばすと効率悪いので、飛ばしてます。


 無数の拳から放たれた無数の闘気が、炎の弾幕を散らす! そして、押し返す!

 炎は壁となって広がり、互いの姿を見えなくした!


 それは一瞬。

 でも、それは私には十分すぎる時間。


 私は全力でダッシュ! 100mを瞬時に駆け抜け、炎の壁を凝視しているラーミアスの背後をとった! ラーミアスは全然気付いてない!


「千花裂孔弾! か~ら~の、千花裂孔弾!」


 無数の闘気がラーミアスの翼を撃ち抜く! 最初は左、続いて右。

 飛ばれると厄介だからね~。


 翼を両方ダメにされ、ようやくラーミアスは事態を把握した模様。

 巨体に似合わぬ素早さで向き直り、私に魔法を撃ってきた!

 いやそれ、竜が人間に使うような魔法じゃないから!

 どうやら私は超強敵認定されたらしい。

 大きく開いた口から放たれたのは、火球系の究極魔法極大プラズマ火球(モスボルクダン)

 

 でも残念。

 そこに私は、いません。突っ立ってなんか、いません。

 千の風の代わりに、千の拳をプレゼントするわ。

 流星拳スキルを使って(は~な~)つ。

毛枯破細拳もうこはさいけん!」

 ふっふっふ。仮にもステータスに大災害級認定されてる私が、たった一つの技だけのために訓練すると思っていたのかね?

 それ系のスキルもゲットしてくるに決まってるじゃないか!

 極めれば一秒間に一億発も夢じゃない流星拳、それをまとめて放つ彗星拳。キッチリ取得しましたぜ。


「あ゛」

 なんということでしょう!?

 しっぽを入れたら30m近かったラーミアスが、見てるまにサラサラ崩れちゃいました!

 いやいやいやいや。人間サイズだったジより時間がかからないって、どゆこと?

 考えられるのは……、やっぱ、INT(魔法攻撃力)がカンストしたせいだよね。


《条件を満たしました。称号<魔竜まりゅう撃破>を獲得しました》

《称号<魔竜撃破>の効果により、闇魔法<魔法拒絶領域イテハクロギリ>を獲得しました》

《称号<魔竜撃破>の効果により、スキル<破魔の秘法>を獲得しました》

『魔竜の扉クリア。選択の間に戻ってください』

 天の声に続いて御使みつかい様の声。

 称号とスキルのチェックは、ここを出てからだね。


  ☆


『さすがですね、ティア。安心して見ていられました』

「ありがとうございます! 昨日、ステータスを見たら、私、ものすごく強くなってたので、だったら、それに相応しい戦い方をしようって」

『フフフ、いい心がけです。あと一戦、その調子で魅せてください』

「はい。新しいスキルをチェックしたら、最後の試練に挑みます」

 止められないってことは、試練は一日二戦までOKってことかな?

 それじゃ、スキルをチェックして、戦い方を考えますか。

 ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


 物語開始から10話目にして、やっと私TUEEEEができました。

 もう、思い残すことはありません(嘘2回目)

 あと未回収なのは、鳳翼と龍力と光輝ですかね?


 鳳翼と光輝は、活動報告に書いた0話にそれっぽい描写があります。

 興味がありましたら、読んでみてください。

 https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/1472467/blogkey/2666039/

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― 新着の感想 ―
[良い点] 私TUEEEEは良いですね(o^v^o) 戦闘シーンも臨場感あり、読んでて愉しかったです。 今まであんまりチートもの読んだことなかったですが、 こうして読んでみると、チートものも面白いもの…
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