プロローグ 九
「おい心、お前何の本読んでたの?」
「ぼ、僕は…、」
僕がそうクラスの目立つ男子生徒、少し髪を茶色に染めるという校則違反をしている生徒から声をかけられた時に素直にその小説の名前を答えようとすると、
「ちなみに俺はこっそり漫画だけどね~!
読書タイムなんてやってらんねえよな!」
と大きな声で言い、クラスの目立つ男子や女子から笑いを誘う。
そう、その生徒はいつでもクラスの中心。今風のヘアスタイルで、直接見たことはないが私服もかなりおしゃれ…らしい。そしてバスケ部に所属し、運動神経が抜群でいわゆる「モテる」タイプの男子。
「まあとりあえず見せてみろよ!」
その後その男子生徒が半ばとりあげるようにして僕の小説を見て、
「何々…、
『君は誰?』
『世界はどこから来た?』
何だこれ??『私は鈴木徹です。』なんてな!」
とからかうように言い、またクラスの目立つグループが笑う。
その後すぐにその男子生徒は去っていった。そしてその冷やかしには明確な悪意があったのであろう。しかし僕はそんな冷やかしも全く気にはならなかった。それほど僕はこの小説、そして哲学に熱中していた。