1 色彩
はい、初投稿です!先に言っておきます。下手です。ありえないくらい下手です。とにかく下手です。眼が腐るほど下手くそです。指摘、アドバイス等ありましたら教えてくれるとありがたいです。
散々な人生だ。
幾度となく思ったその気持ちを、白い息と共に吐き出した。12月中旬、マフラーもなしで歩き回る俺は、明らかに体が震えている。その感覚すらもどうでもいい風に、ただひたすら足を動かす。
本当に、散々だ。
意味もなく、散歩を続けて二時間程たっただろうか。辺りはすっかり暗くなり、人通りも少なくなってきた。その風景に少し寂しさを感じながら、俺も家へ帰ろうとした。
散々。
明らかに声が聞こえた。微かに、今にも消えてしまいそうな声。
散々だった。
俺はその声を頼りに走りだす。何故こんなことで走っているのだろう。
でも。
不意に、上から聞いたことのないような音が聞こえた。電子音のような、何かが冷たい空気を割いて迫り来るような。何故、この時気づかなかったのだろうか。
上からヤツが落ちてきていることに。
俺の散々な人生は、ここで幕を閉じるーーーーはずだった。
『私の声が聞こえますか?』
その声にふと目を覚ます。ボヤけたピントを合わせ、辺りを見る。ーそこは、何もない真っ黒な空間だった。
いや、何もない、といえば嘘になる。さっきからずっと話しかけてきている、眼前の小さな女の子。白髪に青い眼をし、黒と青で彩られたチョッキにミニスカートを穿いているとても可愛らしい子だ。
『大丈夫ですか?ちゃんと聞こえてます?』
「いや、大丈夫、ちゃんと聞こえてる。聞こえてるんだけど今確認するのはそこじゃないよな」
そうだ。俺はついさっきまで町を走っていた。
『やはり突然連行するのは少し無理がありましたか。』
連行?
「えっと・・・色々聞きたいんだけど・・・まず、君は誰?」
すると少女は、表情1つ変えずに言った。
『すみません。自己紹介がまだでした。私の名はイブ。エージェントヘルスカウンセリング・サポート型AIです。これから貴方の魂に私をインストールさせていただきます。よろしくお願いいたします。』
ん?何行ってんだ?AI?魂?インストール?理解が追い付いていない俺を放ったらかし、イブは説明を続ける。
『マスター。あなたをここに呼んだのは、私達の世界を救ってもらうためです。』
「世界を・・・救う・・?」
『はい。今私達の世界ーー2340年の日本、いや、世界では、《エルド》と呼ばれている人の脳に寄生し体を乗っ取った上で命令に従うウイルスで蔓延っています。国土全てが完全に侵略、生き残ったのは日本ーーただ1か国だけです。つまり、・・・』
そこまで喋ったイブを片手を上げて黙らせ、
「つまりその世界を救ってほしいから俺を呼んだというわけだな?」
すると彼女は驚いた表情を見せながら、
『さすがマスター。理解が迅速で助かります。』
と言った。
正直この展開は目に見えていた。いわゆる、異世界転生というやつだろう。アニメを見ながら過労する主人公を見て「うわっ、キツそうやなぁ」と思ったことがないと言うわけではない。ーもしかして俺もやるのか?あと今更だがマスターって俺のことか。
そんな俺の気持ちを読み取ったのか、ーAIらしいからその可能性も充分にあるーイブは淡々と続けた。
『大丈夫です、マスター。何もマスター1人で戦うわけではありません。』
唐突にイブが指を鳴らすと、俺の目の前に青色のプロジェクションマップが出現した。世界地図と思われるそのマップでは、大陸のほとんどが溶けたような形になっており、色も日本以外黒々としていた。
『2124年に発生した《大感染》により、世界人口のおよそ3分の2がエルド化してしまいました。残りの生存者たちが日本に集まって約200年。今やエルドを討伐するために、腕に自信のあるものが《エージェント》となり、日本各部に配置されるようになりました。度々来るエルドの襲撃から一般国民を守る為に、日々鍛え、戦い続けているのです。』
そう告げると、音も立てずにプロジェクションマップが消滅した。
『何か質問があれば、遠慮なくお申し付けください。』
少し気になった所があった。
「エージェント・・だっけ?そいつらがいるなら、俺が1人行ったところで何の助けにもなれそうにないんだけど。てか、俺のステータス知ってる?」
そう言うと、イブはまた淡々と答えた。
『もちろんです。マスターの本名は徳島 一樹、東京都第三高等学校3-B 美術部所属、妹との2人兄妹、最近は彼女もおらず1人寂しい思いを・・・』
「分かったァァァ!分かったから俺のクソみたいな現状を暴露するのはやめてくれぇぇっ!!」
涙目になりながら必死にイブに訴えると、彼女ははっとした表情で返した。
『私としたことが。真実をきっちりお伝えする癖がつい出てしまいました。』
こいつシバこうかな。
『それで、先程の質問ですが。エージェントには、1人1人能力が発祥します。その数は数え切れないほどありますが、エルドに対抗するには必須とも言われる五つの能力が存在します。』
ほほう、能力か。
『全ての刃を扱う《千刃》。闇を操る《常闇》。強力な氷を生成する《氷結》。自然の力を操る《地霊》。そして』
一歩俺に歩みより、真剣なトーンで行った。
『全ての属性を司る《色彩》。』
「色彩・・・」
どれも厨二臭い名前だが、強そうな事だけは分かる。
『他の4つの能力者は、既に日本に存在します。しかし、《色彩》だけ、何故か数十年立っても現れなかったのです。そこで、普通の方々からは見えないAIの私が、《色彩》の能力に最適な人材を探す為時間枠を超え、過去のこの世界にやってきたというわけです。』
「なるほど・・・」
過去に遡ってでも探しにくると言うことは、余程この能力が大切なのだろう。
『そしてその能力に最適だと判断したのが、マスター。あなたです。』
「なるほど・・いやちょっと待ってくれ」
『はい?』
「何で俺なんだ?俺よりももっと優秀な人がいるはずだぞ」
ずっとそこが疑問だった。何で俺みたいな取り柄の1つもないダメ人間が選ばれたんだ。いや、取り柄らしきものは1つあるが・・・。
『あなたには、私が今まで感じたことのないようなオーラを感じました。なのであなたにしました。終わりです。』
「段々雑になってきてね?てかオーラって」
イブは少しめんどくさそうに。
『・・・つまり、私がマスターを選んだのは、勘です。』
「勘かよ」
選ばれし勇者~とかそういうのはないんだな。
『安心してください。私の勘は外れたことはありません。天気予報の的中率は驚異の99.9%です。』
「おい残りの0.1%はどうした」
そう突っ込んでから、ようやく気づく。ここまで女の子と長い話をしたのはいつぶりだろうか。まあ、相手はAIだが。
『というわけでマスター。未来に行くのも行かないのもマスターの自由です。よく考え、ご決断してください。』
俺は呟く。
「・・・俺がいなくなっても、何にも変わらないしな」
『・・・・・』
こんな人生なんてもういらない。俺が誰かの助けになれるのなら、何だってしたい。未来に行ったら、自分の存在価値に気づけると思ったからだ。
「・・・行く。行ってやるさ。誰かの助けになれるなら」
『・・・・後悔はしませんね?』
「この世界に後悔なんてねえよ」
『・・・分かりました。では、只今よりマスターに《色彩》の能力を授けます。』
途端、イブの掌に虹色の玉ができ、光輝きながらそれは彼女の体内に入っていった。すると、体が激しく光始め・・・
『さあ、私とキスしてください。』
「・・・・はっ!?」
つぶらな瞳でそう言った。
最後まで見てくださったあなた、ありがとう!
下手でしたね。やはり。次も投稿する予定なので、また見に来てくれると嬉しいです!