過ぎ去った青春ストーリー
登場人物
・青年おやっさん 著者 太中義郎
・中嶋鷹彰 怖い人
・中嶋恭子 中嶋氏長女
高級クラブママ
・中嶋愛 中嶋氏次女
高級クラブホステス
若き頃からの日記を読み返すと、とんでもないハプニングや、
ちょっとヤバい人との出逢いなど思い出深い出来事が山盛りあった。特にバブル時代!その中でもベストワンな方との出逢いです……。
バブル期の真っ只中。
アパレル業界を小休止して、自らの見聞を広げるため広告業界へと5年間トラバーユしとりました。
飲めや!歌えや!踊れやの!オチャラケ&パープリン全盛期で、花の金曜日になると北新地や宗右衛門町の歓楽街は、人、人、人だらけ。夜の蝶々がヒラヒラ舞い踊り、蝶々目当ての男どもが万札ばらまいて闊歩していた。
広告業界は接待なくしては仕事にならないので、青年おやっさんも接待したり、されたりでした。週に4日は北新地の夜を満喫。
青年おやっさんを接待してたのは、懇意にしていた印刷会社の社長。年間で数千万仕事の依頼していたので接待は自然と時代の成り行きだった。
始めて連れて貰ったのは、北新地の超高級クラブ。ちょっと座って、おしぼり出てきて、どえらいキュートなホステス登場して、ドンペリがシュッポと空いて、フルーツ盛り合わせがテーブルにドーンと置かれて、二時間に一度ピアノマン登場して、リクエストした曲をピアノに合わせて歌う。約3時間で、お会計はドーンと350000円……!
印刷会社の社長は青年おやっさんを接待してるのだが、社長も手慣れたもんで鼻の下ビローン状態。まぁ、青年おやっさんが万札に見えているだろう。でもエエ経験させてもらいました。
その高級クラブのママが、どえらいお美しい方で年の頃は青年おやっさんより少し上。どこぞの大企業取締役の女かと思っていたが、印刷会社の社長に連れられて足げに通うようになった頃……。
印刷会社の社長が遅れてくることになり、先に一人で高級クラブに行って可愛いホステスと、ふかふかソファでバランタインロック呑んでいたら。
高級クラブママ
「このお店のお客さまは、ほとんど企業の役員クラスか会社の社長クラスが占めているの。そんな中にジーンズ履いてハワイアンシャツを着てるあなたは異質だったわ。ましてピアノ弾き語りのリクエストで、ローリングストーンズやジョンレノン歌うんだもん。ピアノマンも驚いていたし、ホステスの全員があなたに興味持ったの。もちろん私もだけど。なぜだか分かる?」
青年おやっさん
「まったくわかんないけど。ひとつ言えるならアメリカに少しの間住んでいたから、同世代に比べて男の色気ちょっとあるからと違いますか?」
高級クラブママ
「まぁ、そんなことかな。今日はゆっくりしていって。さっき電話でお連れの社長さん、来店しないそうだから。お店も暇だからみんなで呑みましょう!」
こりゃまたLUCKYなこって!
ピアノマンが弾くBeatlesのYesterday歌うと、ホステス全員にハグされ青年おやっさん天国モード突入です。
ホステスの中でも一番若くてスレンダーなレディがお気に入りで、いつも隣に座りさりげなく気配りしてくれる。さすがの超高級クラブ。ママの教育で男の良い部分を嫌味なく引き出すのが上手い。このレディとはクラブがオープンする前から寿司屋で待ち合わせして、業界用語なる同伴出勤もしていた。また、プライベートでもサーフィン連れて行ったりしたもんです。
アメリカであった出来事や、ヤバかった話しや、死にかけた事件、サーフィンの事など。高級クラブなので、夜な夜な会社の派閥争いや裏金工作などの会話ばかり聞いているので、どうやら青年おやっさんのトークはごっつ新鮮だったようだ!楽しい時間は、あっという間に過ぎて行く……。
もうすぐクラブも閉店時間。ドアが静かに空き、一人の危なそうな中年男性が来店。
高級クラブママ
「あら遅いじゃない。あなたが紹介しろって言ってた方、待ってるわよ!」
僕はそんな話し聞いていませんが??
ストライプスリーピースの男性
「あぁ!ママちょっと野暮用があってな。そちらさんが例のアメリカ帰りの青年か?」
高級クラブママ
「そうよ!こちらは太中さん。そして私の話しを聞いて、あなたに興味持った中嶋さんです!」
あららのら……?
ごっつ高そうなダンヒルスリーピース。で、ロレックスの金無垢ダイヤバージョン。で、足元は恐らくタニノ・クリスティー。で、シャツは多分エジプト綿の100双ホワイトシャツ。で、ネクタイはフランス男の定番アルニスブティックだろう。隙がない!見事なまでに隙がない!ハリウッド映画の男優のようだった。後に聞いて見ると、身につけているブランドは全部正解だった。全部正解したことは、ごっつ褒められたけど。
スリーピースの中嶋氏
「兄さんが太中さんか!ママから君の噂、聞いてな。今日はゆっくり話ししましょか?」
お~っと!
ちょっとヤバい展開になる感じ。
どう切り抜けよかな。
ホステスもボーイも引き上げ、残ったのはママと青年おやっさんと、隙のない中嶋氏だけ。逃げるどころか、ほぼほぼ軟禁状態に近い。じたばたしても、ややこしくなるだろうと思った。ええ~い!どうにかなるやろ!
そしてスリーピース中嶋氏の眼光が鋭くなって、
静かに語りだした……。
中嶋氏の鋭く光った眼を見て青年おやっさんはすべてを悟った。このお方は筋の人で、この店のオーナー様で、お美しいママは中嶋氏の女。あかぁ~ん!どえらい事に巻き込まれるのとちゃうやろか?調子に乗って呑めや!歌えや!面白ろいトークしすぎたんやろか!絶体絶命のピンチちとちゃう!俺……?
でも中嶋氏は筋関係のお方だけど、かなり気合の入ったインテリ893とお見受けした。が、筋違いな事したら六甲山に埋められるやろな!エンコ詰めなあかんやろな!走馬灯のように、いろんな出来事が脳裏を疾風のごときかすめ飛んで行く。
そんな事を考えてたら中嶋氏がニヤリとした。
中嶋氏
「太中さん!表情豊かやな。ま、心配することはない。私はママから聞いた、君のアメリカでの経験を買ったようなもんです。名刺交換しとこうか!」
俺を買う…?どゆことですか…??
今、聞くのは筋違いやな。
青年おやっさん
「わかりました。ありがたく頂戴します…」
中嶋氏の名刺を拝見すると。そこには驚愕の文字が。一体どうなってしまうのか?
青年おやっさんは……?
中嶋氏が差し出した名刺には●●興業(株)と表記されて代表取締役最高幹部と肩書きが。顔の表情を全く崩さず中嶋氏の鋭い眼光が青年おやっさんを凝視していた。
ここで怯んだらアメリカ仕込みのマイソウルに面目が立たない。こちゃらも、しっかり眼を見据えて対応する。
中嶋氏
「太中さん!なかなか良い眼をしてますな。君がアメリカで経験してきた事や、その眼で見てきた事を私の下で発揮してみませんか?」
青年おやっさん
「一体、僕は何をすればいいのですか?」
中嶋氏
「この店もオープンして5年間になるのだが、そろそろ潮時だと思っている。幸い新たな買い手が見つかって権利ごと売却することになった。ママも理解してくれた」
青年おやっさん
「下世話なお話しになるのですが、売却額はおいくらなんですか?」
中嶋氏
「初対面の君に教える必要はないが、そのストレートな質問と太中さんの眼を信じて答えよう。両手の指が1本少ない」
どひゃ~ん!9億か……!
青年おやっさん
「すみません。お答え頂いて!」
中嶋氏
「ひとつだけ忠告しておこう。太中さんが同伴出勤していたホステスだが、あの女はわたしの娘だ。どうやら君に惚れているようだが、変な関係になっていないだろうな?」
まままままじで……!
絶体に嘘ついたらアジャパーされる。
青年おやっさん
「中嶋さん。すみません一度だけですが、ベロチューさせていただきました。でも、それ以上の関係にはなっていません。ただ正直に言いますが、今でも時間の問題で落とせるとは思っております…」
中嶋氏
「ワッハハハ。君も隅に置けないね!正直に答えてくれて感謝する。娘には来月中にシンガポールに経営の勉強に行かすので、まぁそれまで遊んでやってくれ!ただし節度を持ってな‼」
青年おやっさん
「はい。節度を持って遊ばさせてもらいます!」
じっと二人の会話を聞いていたママは中嶋氏の問いかけに、僕がどんな受け答えするか品定めしているようだった。
高級クラブママ
「ほらね!この人普通じゃないでしょ。あなたが今まで出逢った若者とは異質な人だと思うの…」
褒められているのか??たんによいしょされているのか??どんな船か??だけど、乗ってもたら行くしかないでしょ!
高級クラブママ
「乾杯しましょうよ!素敵な夜と出逢いに!」
てな訳で青年おやっさんは、本業がオフの週末べったりと平日の数時間、中嶋氏と行動を共にすることになったのです。
衝撃な出逢いから数カ月過ぎても、なんの変化もなく週末は中嶋氏とママ、そしてご令嬢と行動を共にして京都にスッボン鍋食べに行ったり。はたまた博多の中洲歓楽街にお供。
遠征先で僕は何をしていたかと言えば、お酒たらふく呑んで、めし食って。ママとご令嬢をサポートして、中嶋氏の財布の中身をちょっとだけ減らしていた。そんな事の繰り返しで日々は過ぎていった。しかし、僕は決して忘れてはいない。初対面での中嶋氏の言葉。
君のアメリカでの経験を買った。と言うフレーズ!近いうちに、きっと何かしらの怖ろしい指令が出るだろう……。
「ああ太中さんか?今からロイスで南の日航ホテルのラウンジに来てくれ!」
中嶋氏の呼出しは、いつも突然か予定変更がほとんどだ。広告業界人だったので、その点は問題なかった。ただひとつの問題は、事務所のガレージに停めているロイスに乗って迎えに来てね!だった……。そらちょっちゅでも擦ったりぶつけたしたら……!
青年おやっさん
「わかりました!1時間後に行きます!」
日航ホテルのラウンジに着くと、中嶋氏はすでに到着されてコーヒーを呑んでおられた。
お辞儀をして挨拶する。
青年おやっさん
「遅くなりました。今日はどちらに?」
中嶋氏
「会員制のプライベートサウナが、このホテルにあるので行こうか!」
あちゃ~!?
ついに抱かれるんやろか?
青年おやっさん
「はい!」
日航ホテルの最上階にあるスイートルームに併設されたプライベートサウナ。ある意味で会員制である。今日はお泊まりになるんやろか?ちゃちゃと脱いで先にサウナに入る。しばらくすると中嶋氏の登場……!
ガガ~ン!
背中には大きな鷹が飛び立っているじゃあ~りませんか?予想はしてた。中嶋氏のフルネームは中嶋鷹彰。ほら飛ぶわな!イーグルが!絶体褒めたりせんとこ!
中嶋氏
「今日はここで君に重要な相談がある!」
あらぁ~ん!
誰かの玉取ってこい!なんて止めてね!
青年おやっさん
「僕でお役に立てるなら!」
中嶋氏
「北新地のクラブ売却が一段落したので、先月桜ノ宮のラブホテルを購入した。建物と部屋を全面リニューアルして、もちろんラブホテルの名前も変更する。部屋は全部で24室あるのだが、実はもう一人権利を持った同業者がいて私の権利は半分の12部屋となる!」
一体いくら投資したのだろう?でも、えげつなく儲かるだろうな?
青年おやっさん
「次はラブホの経営ですか。で、僕はなにを?」
管理人しろ!とか言わないでくださいよ!
中嶋氏
「君にはラブホの名前と部屋のプロデュースをお願いする。だだ、6部屋はすでに知り合いの建築デザイナーに依頼している。アメリカ帰りを発揮するチャンスだろ?」
あらま!意外な展開!
このジャンルなら、どうにかなりそう。
青年おやっさん
「わかりました。いつまでにプラン提示いたしましょう!」
中嶋氏
「工事は2ヶ月後から始まる。打合せなどを含めたら1週間で頼めないか?それまで、この部屋を自由に使ってくれたまえ!ルームサービスやラウンジでのサインはいらない。私の名前言えば大丈夫だ!」
ほぇ~!!
日航ホテルの最上階スイートルームを1週間一人占め。ほんまか?どんでん返し待ってるんやろか?ま、ええか……。
青年おやっさん
「ありがたく使わせていただきます。ご期待に添えるようにいたします!」
中嶋氏を見送って、最上階のBarでドライマティーニを呑む。今日はなんも考えないで、マティーニ呑んで寝よ~っと……。
最上階のBarでマティーニ呑んで、ええ気分になりスイートなルームに帰ると電話が!
青年おやっさん
「はい!」
ホテルフロントマン
「中嶋様からお預かりしている物がありますので、今からお届けいたしますが。よろしいでしょうか?」
まさか?
チャカとちゃうやろか…?
青年おやっさん
「じぁ、お願いします」
しばらくするとベルポーイが届けにきた。
受取書にサインする。それは日航ホテルの封筒だった。恐る恐る開けると、中には某銀行の封筒とメモが入っていた。
メモには中嶋氏の直筆。
そしてピン札で¥1000000の束。
メモには。
「君は出逢ってから一切、私にギャラを要求することはしなかった。そして、きっちり時間も守った。その態度と行動に敬意を表して、このお金を今回の仕事で好きに使いたまえ!」と書いていた。
やっぱ筋や!
すべて試験段階やったんやろな!
なんや?合格したようだ!ええんやろか?
ま、ええか……?
翌朝。
日曜日だったので心斎橋にある洋書専門店アセンスに。パラパラめくったがピンとこない!結局1冊も購入せず。
一人スイートなルームのキングサイズのベットに寝っ転がって考える。しばらくすると、疲れていたのか眠ってしまった。青年おやっさんは恋の夢を見た。それは男と女の偶然の出逢いから始まり、物語が生まれ、進展する夢だった。眼を覚ますとテーブルにあったメモに断片的な記憶をたどり記入する。
男。女。偶然の出逢い。物語と!
そして、桜ノ宮のラブホテルをチェックしようと思った。一人ではどうしようもないので、誰か一緒に行ってもらう女子を考える。
あ!この女子!え?大丈夫か?
ほんまに大丈夫か?ヤバないか?
どう考えても、この娘しかいない!
決~めた!この娘に決~めた!
この時点で読者の皆さんはお分かりだろう。
そう!中嶋氏のご令嬢、中嶋愛さん!意を決して中嶋氏に電話する……。
この修羅場を乗り切れるのか?
青年おやっさんの運命やいかに......。
意を決して電話する!
青年おやっさん
「太中です!ご相談したいことがありますので、今からお伺いしてよろしいでしょうか?」
中嶋氏
「ああ。今は聞かないておこう。すぐにきたまえ!」
日航ホテルから事務所までは歩いて30分位だが、ダッシュで15分で到着しよう!
善は急げか!悪は遅くか!選ぶなら善は急げだ!人並みをすり抜け島ノ内まで走った!
黒塗りのドアを開けると……。
中嶋氏がパイプを燻らせていた!
青年おやっさん
「突然申し訳ありません。どうしても今回の仕事で、お願いしたいことがあります」
中嶋氏
「君はここまで走ってきたのか?その様子では大切な事なんだろう。聞こうじゃないか!」
青年おやっさん
「大変恐縮ですが、愛お嬢さんと桜ノ宮のラブホ同伴で市場調査させてください…」
中嶋氏
「君は私の過去も聞かないし、聞こうともしない。今の私に正面からぶつかってくる。君が僕の娘とラブホテル同伴とは、よくぞ言ってくれた!いいだろう!娘も勉強のためだ!ただしわかっておるだろうな!」
腋の下を冷や汗が流れる。
一か八かで僕なりに筋を通した。
青年おやっさん
「ご理解いただき感謝します!」
中嶋氏
「愛ならシンガポール留学は取り止めて、君が住んでいたロサンゼルスにしたい!と言ってきた!しばらくはこちらにいるので、君の下で使ってやってくれ!」
あらぁ~ん?
愛ちゃん!そんな事になったん?
でも愛ちゃんのおかげかも!
青年おやっさん
「中嶋さんに見てもらいたいメモがあります。実は昨日夢を見ました。今回の仕事に繋がると思います。こちらです!」
走り書きのメモを渡す。
中嶋氏
「ふ~ん。男と女の物語か!」
青年おやっさん
「そうです!恋の始まりには偶然かつ必然な物語が存在しています。出逢って、お互いを知って、心を求めて、恋が愛に進化するのです!」
中嶋氏
「綺麗事だな!しかし誰しも、まずは綺麗事を求めるものだ!そこからどうするのだ?」
青年おやっさん
「はい!それぞれの部屋に恋愛物語ノートを置くつもりです!その恋愛ノートを開くと、その部屋のイメージで僕が作った恋愛小説が書かれています!どうでしょうか?」
中嶋氏
「やはり君の発想は他の青年とは違うな!そこからの展開は任せる!私を納得させるプランを持ってきてくれ!」
さすが筋な人だ!
筋な人には、一筋縄ではいかない!
またまた、今後の人生のStudyしてもらった。
どうにかお許しいただきスイートなルームに帰ると、ドア下にメッセージカード。やっぱ中嶋氏の気が変わったん?読んでみると愛お嬢様からだった!
「パパから聞きました。今日時間あるので、夕方18時にホテル内にあるステーキハウスで待っています…」
なんとまぁ、手回しの早いこって!
でも愛ちゃんと市場調査がてらラブホ回りはファンキーでモンキーになりそう。
はよ来て!愛ちゃ~ん!
レディを待たせてはならない。
シャワーを浴びてMusk Oilの香りをプラス!
ステーキハウスに到着すると愛ちゃんはまだだった!T-born steakと愛ちゃんにはFilletをオーダーする。
ミート君が焼き上がる頃、愛ちゃんが登場する。
愛ちゃん
「お久しぶりです!パパから聞きました。しばらく太中さんと行動を共にしろ!って!」
愛ちゃんは上質なコードレーンストライプのシャツワンピにアニエスbのコットンスナップカーデガンを羽織り、シューズはサシャのネイビーフラットパンプス。バッグはフランスのエルベ・シャプリエを持っていた。
さすがは中嶋氏の娘。
青年おやっさんのツボを突いてくる。
青年おやっさん
「素敵だよ!全部自分で選んだん?」
愛ちゃん
「そうよ!太中さんの好みでしょ!クラブで横に座って、ずっとお話し聞いていたわ!だってあなたのような男性に出逢ったの初めてだった!日本人なのに、ぜんぜん日本人らしくないし!でもとことん日本人なとこもあるし!今まで私の出逢った男性とは異質で個性的だったの!だから私の知らないブランドやファッション用語をメモしていたの。だって私絶対にあなたの彼女になろうと思っていたから!」
薄々、そうだろうとは思っていた。
愛ちゃんは頭の回転が良く、テキパキと行動する。ただし普通の男は手玉に取られるか、鼻にも掛けられないだろうな。
青年おやっさん
「お褒めいただきThank'sです!」
愛ちゃん
「いつもはアメリカの古着やラルフローレンなのに、今日の洋服姿も素敵です!」
青年おやっさんはModernistだった。
通称Mod's!さらば青春の光りを20数回鑑賞していたのでお手のもの!
イタリア製の細身なダークネイビーのL-Pocket pants、Ben SharmanのLondon Straip Pullover Buttondown、アウターはBaracutaのG9、シューズはDr.MartinのBlack Side Goreです。15歳から愛用しているRay-banのGold Ovalも忘れずに掛ける!ベスパは持っていないのでトホパになるのはご愛敬!
麒麟の生ビールでミート君を食らう!
さすが愛ちゃんもSo young!ペロリと平らげる。
青年おやっさん
「満足していただきましたでしょうか?で、これから愛ちゃんをBefore Afterしたいけど、お付きあいしてね!」
愛ちゃん
「どこかに行くんですか?」
青年おやっさん
「はい!知り合いのフランスからインポートしているShopに行こか!上からしたまでフルコーディネイトするから」
愛ちゃんの笑顔が弾ける。思わずKissしよか!と思ったが、脳裏には中嶋氏の顔が!
やっぱあかんわな!とThe 我慢する。
裏青年おやっさん
「磨いたらさらにええ女になるわな!日航ホテルのスイートなルームもあるし!うっひょお~ん!」
あかん!あかん!
六甲山浮かんできた…。
南港浮かんできた…。
愛ちゃん
「腕組んでいい?」
まぁ、それぐらいやったらええよな!
青年おやっさん
「では行こか!」
さて?青年おやっさんは、愛ちゃんをどんなスタイリングするのでしょうか?
関西インポートの先駆けは梅田のサンモトヤマと南のリチャード。どちらも甲乙つけがたい Shopだった!サンモトヤマの服飾のセレクトは秀逸で、リチャードはフランス雑貨のセレクトが中心だった。
日航ホテルから歩いて10分なので、愛ちゃんと心斎橋筋のリチャードに向かう!
愛ちゃん
「こんなお店知らなかった?」
青年おやっさん
「お父さんは知っていると思う。愛ちゃん!僕の好きにしていい?」
愛ちゃん
「もちろん!すべてお任せする!」
やったるでぇ~!
考えていたのはフレンチスタイル。お嬢なんだけどアバズレ願望あり!
リチャード店内でフランスインポートをチェックする……。
チョイスしたのは、関西では最初に取り扱いしたA.P.Cのパウダースノー(白)カラーのリネンブラウスと七分丈のサブリナパンツ。
愛ちゃんが持っていたエルメスのスカーフをクルクル捻ってベルトにする。
首もとにはニコレッタのカラフルなボタンで作られたロングネックレス。
スニーカーは真っ白のコンバースハイカットをスポーツタカハシで購入する。
Afterな愛ちゃんは変身する自分の姿に、やや興奮気味なご様子。
青年おやっさん
「 仕上げはSony Plazaでカチューシャ買いましょ!」
変身した愛ちゃんと歩く心斎橋筋。夜も深まり一杯呑みに行きたくなる。
青年おやっさん
「汚ない一杯呑屋あるけど行けへん?」
愛ちゃん
「うん!一杯呑屋行ってみたい!」
心斎橋筋を難波に向かって歩き、千日前筋にぶちあたると西に入る…。すると南の伝説的一杯呑屋"中野"が!
割烹着着たオバチャン数名と板場のおっちゃん二人で切り盛り。満員になると50人の呑兵衛が集まる店。
愛ちゃん
「なんか私、今までなにしてきたんやろ?こんな近くに、こんな美味しいお店があるなんて!」
青年おやっさん
「そやろ!飲食は面構えとちゃうよ。人柄と雰囲気やね。男と女もそうちゃう!」
愛ちゃん
「納得させられたかも!あ!この焼いたスルメにマヨネーズと七味と醤油。めっちゃ美味しい!」
さらに夜はふける……。さらに青年おやっさんはモンモンとする。さらに愛ちゃんは色っぽくなる。悪魔が囁きだす…!
悪魔の囁き
「ほぉ~ら!眼の前にある旨そうな苺ちゃん!はよ食べなはれ!」
天使の囁き
「止めなはれ!その苺食べたら、どえらい事が待ってますよぉ~……」
青年おやっさん
「そろそろ行こうか!今日はあんがと!タクシー呼ぶから、一人でも大丈夫やろ」
愛ちゃんが青年おやっさんの眼をじっと見る。
あかんて!見つめんといて!手を取ってタクシーに乗せる。
青年おやっさん
「明日は本業18:00終わるので、19:00に日航ホテルカフェテリアで待ち合わせしよか」
愛ちゃんは頷いた後に、あかんべー!タクシーを見送って大きなタメ息をつく……。ある意味で飼い殺しやな!