第四話「懇願」
「……なるほど。事情は分かった。慣れない臭いに感覚が麻痺し、一種の錯乱状態に陥り奇行に走ったと。そして、……うちのメイドの体臭がえらく気に入ったと」
数時間して、屋敷の主人である、中世ヨーロッパ貴族風の中年男性と話す機会が得られた。
さすが屋敷のご主人様なだけあって、状況の理解力がすさまじく速い。
体臭が気に入ったと言われると、ちょっと認めたくない気持ちもあるが、もうあの子の匂い無しではやっていけないと断言できる。事実ご主人様の帰宅までの二時間地下に隔離されたときは、刺激臭で死ぬかと思ったからな。
地下までエロエロちゃんが着いてきたから、残り香で一命はとりとめたが。
「君を警察に突き出してもいいんだが、どうだい、エロエロ」
「そうしましょう」
「だそうだ、サカキバラ君」
エロエロちゃんは無慈悲にも即答した。待て待て待て。あの刺激臭の園に放出されるなんて実質死刑だぞこんなん。
「あ、あの! 労働という形で罪を償わせてくださいませんでしょうか!」
懇願する。もう旅行は諦めた。ただ生きて帰りたい、その一心だ。あとあのオッサンをぶん殴らないと死にきれない。
「労働……? なるほどね、確かに男手も足りてないし、悪質な犯行でなかったのなら、ただで警察にやるのも惜しい……。エロエロ、今回は私に免じて許してやってくれないか。それに……、エロエロにとってもそこまで悪い話じゃないだろう」
「…………まぁ、ご主人様がそういうなら」
晴れて、俺はこの屋敷の召使として雇われた。
……あ、なんか中世ヨーロッパ風の異世界ストーリーっぽい。