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6-28 創造の女神ベリアナ




 創造の女神と名乗るベリアナは私の手を取りハルト様を殺せと慈愛に満ちた表情をしながら語る。


「ハルト・キリュウはこの世界を破滅に導く者と神々に認定されました。貴女には世界を救う力がある。協力して下さいますね?」


 ベリアナは笑顔で語るがこれでは脅迫だ。


「ハルト様が世界を破滅に導こうなどとする筈がありません。ハルト様は世界を救う為に尽力していました。」


「本人がそのつもりでも結果は違います。リスキアに踊らされていたのでしょうが罪は罪です。そして罪には罰が必要です。」


「ハルト様がいなければ私もここには存在していません。ですから私には出来ません。」


「貴様ぁ!ベリアナ様に向かって「待ちなさい!」…くっ。」


 手にした槍を私に向けたゼバルと呼ばれる男はまたしてもベリアナに制された。


「次は私も止めません。もう一度聞きます。ハルト・キリュウを貴女の手で殺しなさい。」


「…出来ません。」


「断れば貴女も罪人となり龍人全てが滅ぶことになりますよ?」


「ハルト様がいなければ龍人は既に存在しません。ハルト様を殺すことを拒んだが故に襲われても誰も恨んだりなどしないでしょう。」


「分かりました。では本当に最後になりますが…。」


 背後でゼバルが槍を構えた音がした。


「これでもですか?」


 ベリアナが手を翳すとただの壁だったはずの場所が消え去り更に奥まった空間が現れた。


「そ、そんなっ……シロちゃん!!!!!」


 そこにはシロちゃんがいた。


 まるで宙に浮いているかのように。


 胸には漆黒の大剣が突き刺さり、その大剣で壁に貼り付けにされていた。


「この人型の神使は罪人であるハルト・キリュウを逃がしました。よってこの者も罪人ですから殺しました。ハルト・キリュウを殺さぬというのなら貴女もこうなります。勿論貴女の周囲の大切な者達も同罪です。そしてハルト・キリュウや貴女如きでは神々に勝ち目がありません。しかし、もしハルト・キリュウの命一つ奪ってくれれば貴女と貴女の大切な人たちの命は保障します。それでも創造の女神である私に協力してくれないというのですか?」


 大切な人たち…。


 私には里のみんなや様々な国でお世話になった大切な人たちが沢山いる。


 ハルト様を殺せば……皆が助かる。


「…シロ…ちゃん。」


 シロちゃんは全身の体重を大剣に預け、頭と両の手足をダラリと下げている。


 ポタポタと滴り落ちる血で血溜まりが出来ていた。


 あんなに可愛らしくて、心優しいシロちゃんが殺された。既に大切な人が奪われてしまった。


 そして、奪われたシロちゃんが命懸けでハルト様を逃がしてくれた。


 お父様、お母様、里の皆。ごめんなさい。





「ありがとう……。」


「良かったです。漸く納得してくれましたね。それでは早速ハルト・キリュウの元へと…。」


「シロちゃん!!ハルト様を助けてくれてありがとう!!次は私がハルト様を救います!!!エチカちゃん手を借ります!!白氷武装ッ!!!!!!」


 私の心に呼応するかのようにエチカちゃんの精霊達が大量に集まっていた。

 その力を借りて一気に魔力を練り上げ白い氷のドレスを身に纏う。


「ベリアナ様の情けに気が付かぬとは!!!貴様は私の手で殺してくれる!!!」


「白氷刀!龍飛剣・一閃!!」


 ベリアナは一旦下がりゼバルが槍を振り回す。それを避けながら一閃を放ったがゼバルは槍で受け止めた。

 


「そんな力では……なっ!!!!」


 受け止めた筈の槍が凍り付いて折れる。ゼバルは驚愕表情を浮かべながら、腰の剣を抜いた。


「流石は私の認めた子ですね。残念で仕方がありません。ゼバルだけでは厳しいようなので私も参加しましょう。2対1ですが…罪人なのですから卑怯とは言わせませんよ?」


「問題ありません。ウルア・ブラスト!!!」


「馬鹿な!これ程の力など無かったはず……!!!ぐあっ!!」


 二人を呑み込むように氷の刃の混ざった突風を飛ばす。そしてその間に空中に浮かび上がった。


「ウルア・フォール!!!」


 滝のように氷の塊が溢れ出し、ベリアナ達めがけて落ちていく。


 周囲が氷に埋め尽くされ、更に凍てつく氷の範囲は侵食するようにどんどんと広がっていく。


 眼下にはゼバルが叫びながら氷像と化していくのが見えた。


「どこを見ているのですか?……神には魔法など効きません。もちろん物理攻撃もですよ。」


 ベリアナは転移して背後に現れた。

 

 創造の女神と名乗っているのだから、出来ないことなどないのかもしれない。

 

「ハァッ!!!!!!」


 横凪に剣を振り急いで距離を取る。だがどれ程早く移動しようともベリアナは転移で先回りしていた。


「逃げ回っても無駄ですよ?私から逃れる事など出来ないのですから。」


 斬り付けても、どれだけ氷魔法を放っても霞のように消えてしまう。残像だけ残して転移しているのだろう。


「ハァ…ハァ…ならば押し切るまでです!!尾龍閃!……ッ!!」


「無駄だと言った筈ですよ?」


 私が剣技を放とうとするとまたしても背後からベリアナの声が聞こえた。


 しかし、先程までと違ったのはベリアナが初めて攻撃を仕掛けてきたこと。


「グッ……。」


「逃げ惑わなければ苦しまずに殺してさしあげたのに。神使といい貴女といい聞き分けが悪くて困りますね。ほら、苦しくてたまらないでしょう?いい加減諦めなさい。」


 シロちゃんとは反対に背中から大剣が突き立てられていた。シロちゃんも苦しかったですね。

 一緒に戦ってあげられなくてごめんなさい。



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