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6-27 試練の間にて



「シロ、手を繋いでおくか。」


「やた-!皆でつなごー!」


 念のため手を繋いで扉へと手を掛けることにした。意外と俺がトラウマになってるのかも。


 白い空間で四人の男女が手を繋いで扉に手を掛ける姿……不思議な光景だな。


「あれ?開かないな。」


 力が足りなかったのかな?いや、それよりもまた何かしらの仕掛けが有るのかも知れない。


 すると突如扉が淡く光ると文字が浮かび上がってきた。


「これなにー?」


「古代文字のようなものに見えますが読めません。」


「扉を開ける為の事でも書いてあるんじゃ無いですか?」


「その可能性が高いな。マジック・クリエイト。」


 俺は串焼きをインベントリから取り出す。そしてそこに短時間しか保たない付加を与えていく。


「ハルトさん、何してるんですか?」


「テテテテン!翻訳串焼き~!!!」


「ほんやくしってなにー?」


「聞いて驚くな。これを一口食べたらどんな文字でも読めるようになるという画期的な串焼きなんだ!」


「流石ハルト様です。」


「美味しそう-!!!!」


「シロも食べていいぞ。肉は五切れ付いてるからな。」


「ハルトさんや、あなたはノラえもんだったんですね。」


 食べ回しは何となく皆に悪い気がしたのできっちり取り分ける。シロは良く食べるし、ダンジョンでは大活躍してくれたので二切れあげた。


「弱く儚く燃え上がる汝の魂が尚、真の臓へと辿り着く汝の身の心力我が試練が試さん。」


「ルカちゃん読むの早い-!」


 試練……試さん。やはりこの先に試練が待ち受けているようだ。

 そして読み終わった時点で更に下に新たな文字が浮かび上がる。


「魔力を伝えし者は試練へと誘われん。」


 なるほどな。魔力を流し込みながら扉を開けばいいのか。


 再度手を繋ぎ直し俺は扉に手を掛けた。


「…。あれ?」


 何も起きない。念のためもう一度魔力を流したが何も起きなかった。


 それからルカにも試して貰ったが結果は変わらなかった。


「流石に扉が嘘ついてるのは考えにくいな。となると、ここに来て全員で試練を挑むのを禁じてる可能性が出てきたか。」


「えー!!!シロは一人じゃ嫌だよー。」


 シロは抱き締めたくなるほどに悲しそうな声で呟く。


「シロちゃん。私の試練ですので、シロちゃんはハルト様と一緒にいられますよ?」


「大丈夫か?」


「はい。必ず突破してみせます。」


 ルカが扉の元へと一歩踏み出すと、何故かアイナがルカを追い越して扉へ走り出し手をかけてしまった。


「おい、アイナ!」


「あの表記の仕方なら試練は一人しか受けられないわけじゃないですよね?ルカはこのダンジョンに強くなる為に来たって言ってました。私も……強くなりたいんです!!」


「待てアイナ!!!」


 俺はバラバラになってしまった過去の失敗を踏まえて、あらかじめ創っておいたアイテムを投げわたす。

 お互いに今居る場所の方角が分かる石だ。


 気持ち程度の代物だが無いより良いだろう。


「綺麗な石……。ありがとうございます!行ってきまーす!!!」


 アイナが出発の意思を叫ぶと共に扉が激しく光を放った。そして目が眩むほどの光が消えるとアイナの姿も消えてしまっていた。


「あの馬鹿。いきなり暴走しやがって。」


 普通を装ってはいるが内心ドキドキだぞまったく。

 いくら元Sランク冒険者とはいえ、最高難度のダンジョンの試練にアイナが単独なんて不安で仕方が無い。


 心配になる程度にはアイナを知りすぎてしまったしな。


 


「ルカちゃん、一人で大丈夫-?」


「ありがとうございますシロちゃん。私はハルト様やシロちゃんの足手纏いにはなりたくありません。だから、挑まないわけにはいかないのです。」


「足手纏いじゃないよー?」


「ありがとうございます、シロちゃん。」


 するとルカは扉に向かって歩き出した。


「もう行くのか?」


「はい。すぐに戻ります。必ず。」


「分かった。もし何かあったら念話を飛ばして。何が何でも助けに行く。」


「はい。では行ってきます。」


「ルカ、きっと上手くいくよ。頑張れ!!」


「ルカちゃん!!早く戻ってきてね!!頑張って-!!!!」


「はい!!」


 笑顔で答えたルカは扉へと魔力を流して消えていった。


「とりあえずはここで待つしか無いな。」


「うん。はぁ、心配でお腹が痛くなってきた-。」


 俺が慌てて土魔法で簡易トイレを作ってやると、シロは中々トイレから出て来なかった。

 心配し過ぎじゃね?と言いたかったが先程から胃がキリキリと痛んできてるので結局口には出さずに2人+αをひたすら待つことになった。



☆ ☆ ☆ ☆ ☆



「あれは……祭壇。」


 眩い光に目を閉じた後、目を開けたら祭壇のようなものがある空間に立っていた。


 そして壇の上には巨大な丸い何かが奉られていた。

 幾重にも縄で巻かれていて全貌は把握出来ないが、少しの隙間からは黒光りする岩が見えた。


 見えていなくても強い力を感じる。


(ひざまず)け。神の御前だぞ。」


 するといつの間にかすぐ真横に大きな4対の羽を生やした男性がこちらを見据えて立っていた。


「構いません。ルカシリア・クラウドバルですね?」


 男性が神の御前と言っていた。ということは壇の上に立つ女性は神…?


「はい。試練を受けに参りました。」


「私の名は創造の女神…ベリアナ。試練と言いましたね?」


 試練…と口にしながら、女は薄らと笑みを浮かべていた。


 創造の女神?そんなはずは……創造神はリスキア様だけの筈。


「無駄な事を考えずに、早く返答しろ。」


「ゼバル。この子は私の大切な希望(・・)です。口を慎みなさい。」


 男はまるで私の心を読んでいるかのような発言をした。


「ルカシリア。本来神々の世界の話は教えることが出来ないのですが、貴女は知りすぎていますから隠しても意味が無いようですね。()創造神であるリスキアの事が気になっているですが………。」


 創造の女神ベリアナは私の元へと歩みを進めながら勝手に話を進めた。


「リスキアは神々を騙しこの世界を破滅に導こうとしていました。何とか早いうちに情報を得ることが出来たので未然に防ぐことが出来ました。」


 リスキア様が……?


「そこで私からの(・・・・)最後の試練の事なのですが……。」


 創造の女神ベリアナは微笑みを崩さずに私の目の前に立つと手を取り続きを口にする。


「リスキアの配下であるハルト・キリュウを殺しなさい。」

 

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