6-26 魔法少女ルカ☆シロ
アイナも落ち着いたので再出発して階段を下りていた。するとまたしてもアイナが口を開く。
「歩きながらでいいんですけど、ハルトさんはどんな女性が好みなんですか?デレデレ系?ツンデレ?それともルカみたいなクーデレ系ですか?」
「なんだ突然その脈絡も無い質問は。」
アイナはお喋りが好きなのかな。それとも地球人に久々に会えて会話したくて堪らないのかな。後者だったら話してやってやらんこともないが。
「いやー、普通に気になっちゃいまして!」
実際ルカがデレデレでもツンデレでもご飯何杯でもいけるぞ。ということで全部だな。だが言わない。
「ノーコメントで。」
「ノーコメ?!卑怯な…。」
ハルト様が卑怯?とルカが言うとアイナは最強と言ったんだとか言い訳しながら静かになった。
「ところでルカ。この階段長すぎるけど…何のギミックもないと思う?」
「確かにそうですね。ただ長いだけなのか何か仕掛けがあるのか悩み所ですね。」
「そうなんだよ。なんか目に付くもんでもあれば解決策を考えることも出来るんだけど普通に階段しかないからな。」
「確かにそうですよねぇ。仕掛けあったとしたら永遠に階段下り続けるようですもんね。ハルトさんの魔法でも調べるのは無理なんですか?」
無理かどうかは分からないけど…何をイメージしたらいいんだ?
そんなことを考え悩んでいたらシロが俺の手を掴んできた。ふにふにの白い手だ。
「ねーねー、ご主人様-。シロ分かるよー?」
うほっ。もっと早く言おうぜ。
「シロは魔法使いだからわかるのー。ちゅりゃだよー?」
あれ?シロは魔法使えないんじゃなかったっけ?レベルアップして使えるようになったのかな。
つーか、ちゅりゃだよーって何?美ら海みたいなこと?島んちゅ?
「そうだったの!?シロちゃんは魔法少女ルカ☆シロだったのね!!!どうりで可愛いわけだわ~!!」
「魔法少女ホワイト将軍シロな~。」
ぐっちゃぐちゃだな。
「流石シロちゃんですね。ハルト様の役に立てるシロちゃんが羨ましいです。」
ルカが少し悲しそうに言うが、ルカはかなり役に立っている。
俺の手が離せないときに魔王単独撃破とかモンスターの群れと喧嘩したり。
後は目の保養という最重要な仕事までもこなしてくれている。
まぁルカが心のオアシスなのは置いといて、魔法少女シロの分かるよー発言について言及していこう。
「シロの魔法ならこの無限階段から出れるのか?」
「バッグーだよ!」
親指を立てながらバッグーだよというシロ。バッグ?あー、バッチグーか。
「シロちゃんは強いですし、探索や索敵などもこなせて素晴らしいですね。」
「ルカちゃんもリスキア様から神力貰えたらちゅりゃだよー?」
ちゅりゃだよーって何?万能な言葉なのかな。
「じゃあ、シロ。一発魔法少女でぶちかましてくれ。」
「あいあいー。」
するとシロは目を閉じて深く息を吸った。魔力感知が働いてる……本当に魔法を使うんだな。
シロの成長に感動していると、詠唱が始まった。
「未来永劫!勧善懲悪!悪戦苦闘!老若男女!夜露死苦!!!そして三千世界を統べしぷにぷによ……その柔らかさでシロを癒し給え……………魔法少女ホワイト将軍必殺奥義魔法流……夢幻ハプニングドラゴニック神聖魔法極技…ご主人様ルカちゃん!!!あっ、やっぱ違うー!!!ハルトルカ!!!ちゅりゃ!!!!」
魔法…を発動させるとシロは突然階段の壁を思いっきり力任せにぶん殴った。
ぶん殴ったよ。魔法はどうした。
つーか詰め込みすぎだろ。
四字熟語が最後崩壊してるし。流派が奇抜過ぎるし。魔法名言い直してるし。
それにしても夢幻ハプニングって…。
「すごい……これがシロちゃんの魔法だというの…?滅びゆく種族が残した幻の究極魔法といったところかしら…。凄すぎるわ…。」
「えっへん!!!」
アイナが悪ノリするとシロは満足げに手を腰に当てていた。
「さすがはシロだな…。」
「そう…ですね。」
嘘では無い。シロクオリティーではあるが流石だ。きっとリスキアの匂いで場所を特定してぶん殴ったのだろうが…それについては何も言うまい。
☆
階段の壁をパンチ……いやっ、魔法で壊した先にはまたしても階段があった。
だが今までの段階とは違い、螺旋階段になっていた。
「螺旋階段~。螺旋ってなんかかっこいいなー。螺旋パンチ発明しなきゃなー。」
「分かる~。シロちゃんは感性まで最強ですなぁ!」
んー、もうこの二人のやりとりにいちいち反応していたらきりが無いのでスルーしていこう。
でも一言返すとすれば、螺旋ってかっこ良く感じるの字とか響きでしょ?だな。
普通に真っ直ぐの階段の方が歩きやすいし。
「ご主人様-。リスキア様の匂い凄く強いよー!」
「そうか。…ルカ。」
「はい。そろそろだとは思っていましたので、準備は整っています。」
ルカにもルカクオリティーだな。
階段を下りていこうとしているとシロが手を繋いできた。トラウマの件だな。
「よし。じゃあ進もう。視界が悪いから俺が先頭でいく。念のため手を繋いでいてくれ。」
歩きにくい螺旋階段を下りていくと、やがて階段に突然扉が現れた。かなりの装飾が施されている。
皆が手を繋いでいるのを確認した後に。ノブを回して扉を押し開けた。
「ボス部屋?とは違うな…。」
「今までの物とはまるで別物ですが…。」
そこにはリスキアのいた神界から落ちた時のように真っ白な空間があった。
今までのボス部屋の前室は何も無いこじんまりした穴蔵のような空間になっていたが、ここはかなり広く眩しい位に不自然に白い。
「あっ、扉がありますね!」
「ご主人様-、扉の向こうでリスキア様の匂いするよー?」
やはり扉の向こうに最後の試練的な何かが待っているのだろう。
「皆、心の準備はいいか?」
俺が聞くと三人とも同時に頷く。
「いつでも行けます。」
「シロもいいよー!」
「私もオッケーです!」
「よし、じゃあ皆で無事にこのダンジョンを踏破するぞ。」
全員の覚悟が決まったところで、俺達は扉へと歩き出した。




