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6-25 アイナの故郷



 俺達はいつまで続くか分からない階段を下りながらたわいも無い会話を続けていた。


 するとアイナが衝撃的な事を口にしたのだった。


「は?」


「ですからこの剣と魔法のあるファンタジーな世界には存在しないんです!まぁ、信じられませんよね。今までも誰一人として信じてくれませんでしたからねー!!」


「へ?」


「ハルト様、私も初めて聞きました。」


「シロでも流石に知らなかった-!アイナやるなー!」


「だって誰も信じてくれないし…むしろ白い目で私のこと見てくるから言うの止めたんだ-。」


 この世界には存在しないだと?


「因みに………アイナの祖国の名前って何?」


「名前ですか?日本って言いますけど…。」


 ぐはっ。アメリカでは無く日本。ロシアでも中国でも無くバチカン市国でもなく日本。日本。日本。


 まさかこんな形で同郷の者と遭遇するとは。


「まぁ、信じられない気持ちも分かりますんで気にしないで下さい!私だって地球にいるときに突然そんなこと言われてもきっと疑うでしょうからね!……ってハルトさん?どうかしましたか?」


「日本のどこだ?」


「信じてくれるんですか?」


「俺は埼玉だ。」


「……へ?」


「アイナはどこだ?標準語だから…関東地方?東京か?」


「えええぇぇぇーーーー!!!!!!!!?」



☆ ☆ ☆ ☆ ☆



 俺が地球出身だと知るとアイナは驚いた後に突然泣き出してしまった。


 アイナが回復するまでは一旦足を止めて落ち着くのを待つことにした。

 これだけは魔法でも回復させられないしな。


「まさかハルト様と同郷だとは思いもしませんでした。世間は狭いですね。」


「ほんとだな。この世界に来た時の次に驚きだ。」


「アイナやるなー。ご主人様と同じか-。シロも地球とやらがいーなー。」


 普段クールなルカも驚きが隠せていない。シロはいつも通りだけど。


「アイナ、大丈夫か?」


「ぶふぅ…ぐすっ。だって…だって誰も信じてくれないから…。帰る方法をいくら探しても見付からないし…。ずっと不安で…ずっと寂しくて…。ふぇ~ん!!」


 駄目だ。慰めるつもりが再発させてしまった。


「アイナ。良かったですね。ハルト様は同郷の中でも最も心優しく最も強いでしょうから、知り合えただけでも不安も和らぐし頼りになると思いますよ。ハルト様ですからね。」


 ルカさん?何ですかそれ。


 今思えば地球出身の要素が所々見受けられるな。

 ミナゴロッシーに使った剣技も頬に十字傷のある抜刀齋の技名パクってたし、上京物語とか知ってるし。


 あれ?


「シロは地球出身じゃないよね?」


「んー?違うよー?」


 だよね。たまに地球ネタっぽいの出してるから…。たまたまなんだな。シロクオリティーだな。


 それから十分ほど経過して漸くアイナは会話出来る程度に精神が回復した。



「すみませんでした!」


 アイナが元気に頭を下げる。


「ハルトさん。私の本名は羽有藍那です!こっちではアイナ・ハーリーと呼ばれてますけどね!」


「俺は桐生悠人だ。」


「桐生悠人!あー、日本名たまりませんなぁ!ハルトさんは転生ですか?」


「転生では無く転移してきた。説明すると長くなるから斯く斯く云々だ。」


「ほほぅ。斯く斯く云々と来ましたか。同郷のよしみだと発覚しても尚、その説明を面倒くさがるスタンスは変えてはくれないんですね!」


「まぁ、いずれな。今はダンジョン踏破が先だ。」


 濁した答えをしただけなのに何故かアイナは目を輝かせていた。


「ふふっ。いずれって事は私は当分見捨てられ無いって事ですね!ありがとうございます!」


「どうだかな。」


「ツンデレですか?そーゆーのも嫌いじゃ無いですよ?」


「うるさい。突然王都にいたって事はアイナも転移か?」


 俺が質問するとアイナが少し答えにくそうにしていた。無理に聞き出すつもりは無いと口にしようとするとアイナが答え始めた。


「んー。私……悪性の脳腫瘍が見付かったんです。中1の秋に。それですぐに手術をしたんですけど、目が覚めたら王都の原っぱに寝転んでました。」


「大変だったんだな。」


「はい。きっと死んだんだろうなぁと思って落ち込んでいたんですけど、転移したとはいえ拾った命なら最大限に活かしてやると思って足掻いたんです!かなり序盤はやばかったですけどね。」


 確かに中1の女の子が突然知らない世界の王都に来てしまったらヤバいよな。


 よくそれから二年でSランクの冒険者になって勇者になれたもんだ。

 そうとう頑張ったんだろう。

 城の図書館に入り浸ったりするくらいだから努力家なんだろう。


 いつも元気でどこかアホっぽいアイナだったけど、苦労してるみたいだし、頑張り屋の一面もあるようだし、これは見直したな。

 

 アイナは尊敬出来る人間だ。


「でも今は色んな人との出会いもあって、ファンタジー世界でうまくやれてるつもりです!ハルトさんにも出会えましたしね!」


 アイナがウインクしながらそう言うと、ルカが俺の袖を掴みながら喋り出した。


「ハルト様と知り合えただけでも幸運です。知り合えただけでも奇跡です。アイナはハルト様と知り合えて良かったですね。」


 ルカは知り合いをめちゃめちゃ強調してきた。知り合いくらいがいいのかな。


「ぷすすっ。ルカは可愛いなぁ!純情戦乙女だわぁ。萌えるのう。」


「ぷっぷすー。ルカちゃん可愛い-!はぐれ戦士純情派だー!いつも可愛い-!」


 アイナがルカを茶化すと、シロまで乗ってしまった。意味はよく分からないが。


 するとピキピキッと音が聞こえ冷気が漂ってきた。


「ルカ先輩すみませんでした!!!!」


「ルカ殿下ごめんあそばせー!!!!!」


 ゴゴゴゴゴゴゴゴッと背景が揺らぐようなオーラを放ち氷の剣を手にしたルカが歩み寄るとアイナは即座に頭を下げた。


 またしてもシロは良く分からない。


「おい、そろそろ進もう。」


「はい!あと、ルカ殿下!すみませんが知り合いから地球ネタを話し合える友達に昇格してはもらえませんか?」


「ハルト様次第です。」


「時間があればなー。」


 すぐに友達にランクアップさせなかった俺をルカは何故か嬉しそうに微笑んで歩み寄ってきた。


「流石はハルト様ですね。祖国の話が出来る同郷の知り合いに時間があれば会話に付き合ってあげるなんて、本当に優しいです。でも忙しければ私が聞きますので無理しないで下さいね。」


「えー。ルカじゃ地球ネタ分からないから意味ないじゃ……ルカ元帥もご一緒にお願いしまぁす!」


「ルカちゃんは姫元帥かー。やるなー。シロは将軍なー。ホワイト将軍~。」


 シロ→白→ホワイト。でホワイト将軍ね。シロ地球出身じゃないよね?


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