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6-21 頬に十字傷の無い女勇者



「想像してたよりも安定してるな。」


「はい。これなら多少の戦闘の余波では沈まなそうですね。」


「シロはご主人様丸(ごしゅじんさまる)がいいと思うなー。」


「シロちゃんはセンスがあるなぁ。私なんか致命的な程に典型的な人族だからハルト丸とかにしちゃいそうですなー。」


「失礼ですよ二人とも。疾風迅雷ハルト様号ですね。」


「いや、泥船で。」


 俺達は今船で湖を進んでいる。


 俺の創った魔法だと10分しか保たないのでさすがに陸地から階段までは無理だと考えた。


 そこで「空を飛ぶか船だな。」という俺の失言によりシロがキラキラした瞳で「船-!!!!」と言ったのがきっかけだ。


 今となっては後悔してない。航海はしているが。海じゃ無いけど。


 俺の作った船は船と言うよりボートだ。


 普通のボートよりは大きく、ダンプカー程度の大きさはあるので四人なら広々としている。


 オールをシロに頼んだら水浸しになったので、今は風魔法を推進力としている。


「ハルト様、交代致します。」


「ありがとうルカ。でも、全然疲れないから大丈夫だよ。」


 ルカはいつも気遣ってくれる。この優しさにいつも癒され助けられている。

 ルカはオアシス。ルカシスだな。


「ごしゅじんさまる-!ぱんつぁーふぉー!!!」


 シロはいつも自由に生きてる。戦車じゃないし。


「ハルトさんや。あたしゃ船酔いしましたよ。」


 アイナは……まだよく分からない。


「水飲むか?」


「すまないのぅ若いの。」


 俺が密かに酔い止めの付加をつけた水を渡すと、年老いたアイナはグイッと飲み干した。


「ふぅ…。……あれ?気持ち悪くない!なんで?!超神水?!」


 超神水は効能が違うだろ。

 つーか、何故ワイバーンボールのネタを知っているんだ。


 まぁ、とりあえず船酔いが治ったようで良かったとするか。


「そういえばルカー。このダンジョン魔物強すぎるし階段が水の中にあるとか異常じゃない?」


「水の中に階段となると特殊なスキルや魔法を持っている、又は力技で押し通る能力のある冒険者でないと降りることすら出来ないでしょうね。何にせよダンジョンの難易度が高いというだけのことです。」


「そう-?魔物弱いよ-?」


「えー、強いよぉ!シロちゃんが、というか皆異常に強すぎるだけだよ!あっ!あれはスカイラインフィッシュ!……の死体!!」


「ハルト様の船の動力となる魔法に自ら突っ込むなんて、自殺行為でしかありませんね。」


「ただの動力にAランクの魔物が倒されるという現実離れした現実!!夢よ……これは夢なのよ!!」


「アイナ-、落ち着いてー?」


 三人が仲良しで良かった。女性が四分の三をしめるパーティーで泥沼の陰湿バトルされたらたまったもんじゃないからな。


 久しぶりのほのぼのとした冒険をしているとシロが階段の真上まで来たことを教えてくれた。


「よくシロは水の中にある階段から匂いを嗅ぎ取れるな。」


「ご主人様と会ったときよりも凄くリスキア様の匂いが強いの-。」


 なるほど。

 仮説を立てるとしたら遺跡が転移する前のダンジョンよりも深い所にあり、そこから更に地下からダンジョンへと来たのでかなり短縮されたって所だろうか。


 と言うことはもうすぐダンジョンの最下層に辿り着くという事なのだろうか。


「シロ、ありがとう。」


 俺はシロの頭をなでなでして、ツインテールを逆さに引っ張りながら皆に魔法の説明をする。


「階段の真上にいるようだからこれから降りることにする。潜水しながら戦う事が出来るように魔法かけるから安心してくれ。」


「水の中で戦うってどうい「はい。お願いします。」……。」


 アイナが騒ぎ立て始めるとルカが被せて黙らせる。グッジョブだルカ。


 特に名前は決めてないので適当にルカから魔法をかけていく。


「ではハルト様。魔物がいるかもしれませんので先行致します。」


「ルカちゃん待って-。手ー繋いでいこうよー。」


 ルカとシロが何の躊躇いも無く入水していくが、アイナだけはまだ船の上で震えている。


「ハ、ハルトさんや?私……実はカナヅチなんです。確実に死にゆく運命を自らの足で歩めないです……。」


「あー。わかった。」


「ちょちょちょちょ!!ちょっ待っ!!!」


 手を掴むと暴れ出したので、面倒くさいから最後まで話を聞かずにお姫様抱っこで湖に飛び込む。


「うばばばー!!死ぬー!!……しぬー。って……あれ?苦しくないし、喋れる!!!?」


「魔法だからな。」


「だからなって…こんな魔法聞いたこと無いですよ!!しかも水を蹴って動ける!!ひゃっほーい!!」


 あれ程水に入るのを怖がってたアイナが俺の手を離れ一人駆けだしていく。お調子者なのだろうか。


「ハルトさーん!!こんなの初めて-!!さいこぉーー!!!ひゃっほーい!!!」


 アイナはお礼を口にしながらルカとシロの元へとゴキゲンに進んでいく。すると気配察知が働いた。


 水が透き通っていたのですぐに魔物が視認出来たので鑑定をかけると、ミナゴロッシーというAランクの首の長い水竜だった。


 ミナゴロッシーは真っ直ぐアイナの元へと向かっている。


「アイナ!!ミナゴロッシーとかいう魔物がお前を狙ってるぞー!!」


「ミナゴロッシー?!その破天荒な名前聞いたことありますよー!!確かにAランクですが水中でこれだけ動けるなら私でも戦えまーす!!アイナちゃんの勇姿たまにはご覧あれー!!」


 アイナはふざけた事を言いながらも剣の柄を握ると戦闘態勢の真剣な表情へと変わっていた。


「ハープルムの勇者の力をとくと知れ。」


 いつもの軽い感じのアイナとは違いオーラがある。剣を握ると性格が変わる子なのだろうか。


 アイナは魔力を剣だけに集めいく。すると以前のように鞘が破裂しそうな程に魔力が高まったのを感じた。


飛地御剣流(ひちみつるぎりゅう)奥義……地翔龍閃ちかけるりゅうのひらめき!!」


 アイナは駆け出しミナゴロッシーの元へと一気に近付く……事は無く、まだ距離があるにも関わらず抜刀術のように抜刀した。


 するとスラッシュのように剣筋に沿って刃が飛んでいく。


 アイナの抜刀術の奥義なのだからミナゴロッシーを真っ二つにする……と思いきや刃がぶつかると大爆発を起こしミナゴロッシーは焼け焦げて湖底へと落ちていった。


「どうでした?ハルトさん!!」


「んー、色々とギャップのある技だね。」


 俺の返答に納得しなかったアイナがわいわい騒いでいると、爆発音を聞いたルカとシロがすぐに来た。


「ハルト様、どうしました?」


「いや、アイナが頑張って戦ってくれたんだ。」


「そうでしたか。アイナ?」


「なぁに?」


「よくやりましたね。これからも命懸けでハルト様を守って下さいね。」


「な、なんで私より明らかに強い男子を守らなきゃいけ…………嘘です。やれるだけやってみます。」


 ルカの瞳がキラリと光るとアイナは仔犬のように震えている。


 この世界ルカに弱い奴多すぎじゃね?


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