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6-18 新入り(仮)



 ようやくみんな合流出来たのにルカの表情は暗い。

 座ったまま下を向き肩をふるわせ、膝の上で拳を握り締めていた。


「……私…また負けてしまいました。ハルト様の隣に自信を持って立てるように……なりたかったのですが……。」


 ルカは泣いていた。自らの想いに届かなかった自分を責めて。


「いつも助けて頂いてばかりで……本当に申し訳…ありません。もし足手纏いでし「ルカッ!!!!」……。」


 それ以上は言わせないぞ。ルカ。


「ダンジョンを踏破してリスキアの神力を手に入れて強くなれ。その後も俺とシロと一緒にもっともっと皆で強くなるんだ。皆が皆を守れるように。いいね?」


「……はい。ハルト様。」


「ルカちゃん守るよー?助けるよー?がんばろー?」


「はい、シロちゃん。」


 俺の気持ちは届いてくれたようで、ルカは涙を流しながら顔を上げて笑ってくれた。

 ルカは本当に自分に素直な子だな。


「私…強くなります!ハルト様を守れるくらいに!!」


「ありがとう。ルカとシロに守られてたらグータラになりそうで怖いよ。」


「ご主人様はルカちゃんとシロに守られるなぁ全くー。」


 腕を組みうんうんと一人で納得しながら、シロが良く分からないことを言っている。


「ところでルカ。あそこで寝てるテイムされたらしい女勇者に襲われたんだが、テイムなんて有り得るのか?」


「本来ならば有り得ません。ですが、恐らく邪神の欠片の力でそれが可能性になったのでしょう。鳥篭のような物に邪神の欠片が埋め込まれていたのを確認したので、強力なテイムの力を持った魔道具かと。」


 鳥篭に邪神の欠片か。気が付かなかったな。


 気絶した猫耳少女のポシェットを漁ると小さな鳥篭があった。取り出してみると俺が見た時と同じサイズになり30センチ程度になった。


「確かに邪神の欠片のようだな。」


 邪神の欠片を取り外してみようとしたが、邪神の欠片の力が無くなった鳥篭から魔物が溢れ出すイメージが脳裏をよぎったので鳥篭ごとインベントリにしまうことにした。


「ところでハルト様。アイナは…勇者は生きていますか?」


「あぁ、生きてるよ。かなり手強い感じだったけどね。気絶してるだけだし、結界を張っといたから無傷みたいなもんだと思うよ。知り合いなの?」


「はい。アイナは友人でした(・・・)。王都に行ったときは、お互いに時間が空けばお茶を飲むような仲だったのですが…。」


 友人が過去形だな。何かあったのかな。


「以前の聖教国の騒ぎで大司教と勇者ランスロットの陰謀により教皇が父を魔王だと宣言した際に、アイナも父を討伐すべく動きだしたと聞きました。それからは敵同士です。」


 そういえば三勇全員がグナシアを狙っていたなんて言ってたな。


「しかし、もしかしたらあの時既にテイムされてしまっていたのかもしれません。アイナに聞いてみないと分かりませんが、私はアイナを信じています。ハルト様…。」


「分かってる。多分やれると思うよ。マジック・クリエイト。」


 でもテイムを解くイメージか……むずくね?


 試しに女勇者に状態の鑑定をかけてみる。すると、テイミングと表示された。やはり本当だったか。


 もしかしたら鳥篭から邪神の欠片を取り外せば解除されるかもしれないが、ちょっとそれはリスクが高い。

 何が起きるか分からない以上、状態異常をどうにかした方が良さそうだ。


「むぅ。」


 腕を組んで悩んでいるとルカが顔を覗き込む。それは反則だぞ。


「難しいのでしょうか。」


「んー、もう少し待っててね。」


 煩悩が暴れ出しそうなのをどうにか鎮め、再度妄想……創造を開始する。


 首に繋がれた鎖をテイムだとして……それを断ち切る。そんなちゃちなイメージをしていると魔力が動き出したのを感じた。


「おっ、発動したか。」


 イメージが完成すると勝手に発動してしまったので、名前を付ける時間も無かった。

 

 マジック・クリエイトで創造された魔力がキラキラと輝きながら女勇者を覆い尽くす。


 やがて光が消えると女勇者の姿が見えてきた。


 あれ?髪の色が変わってる。灰色だったのに綺麗に黒髪になってる。


 とりあえず変化があるって事はテイムが解けたか?そう思い鑑定をかけると状態異常は無しとなっていた。


「ルカ、上手くいったみたいだ。」


「ありがとうございます、ハルト様。」


 ルカはそう言うと立ち上がり女勇者の元へと歩き出した。


 結界は解除しとくか。


「手を貸そうか?」


「いえ、大丈夫です。今は自分で歩きたいので。」


 そして女勇者の元へと辿りつくと隣に座り声をかける。


「アイナ。目を覚まして下さい。」


 裏切り者かも知れない女勇者に優しく静かにルカは声をかけ、頬に手を触れる。


 かと思いきやいきなり頬をビターンッと平手打ちした。


「う、う~ん。…あれ?…ルカ!」


 ルカのビンタで目を覚ました女勇者は、目の前のルカを見て目を丸くする。そして…。


「ルカ!!すぐにここを離れてッ!!!危険な猫人族どもが……猫人族ど…も…。え?」


 ルカを庇うように立ち上がり剣を構える女勇者だったが、周囲を見渡すと猫人族が拘束されているのを発見し、剣を下ろした。


「猫人族や魔物達はみんなハルト様とシロちゃんが倒して下さいましたよ。そして、私やアイナも助けて下さいました。安心して下さい。」


「……そ、そう。ルカが無事で良かった。」


 そう言うと女勇者はへたり込んでしまい、ルカが手を握り締めて微笑んでいた。





 女勇者の話を聞くと、やはりルカを狙い動き出したのはテイムされてからのようだった。


 グナシアが魔王だと聞いた女勇者はルカの身を案じ王都を出て直ぐに襲われたそうだ。


 強力な魔物を多数引き連れた猫人族がやってきて、気を失ってからの記憶が全く無いらしい。


 俺達側の出来事も軽く説明すると、何度も驚愕していた。


「魔王を倒すだなんて……ルカ凄く強くなったんだね!そしてハルトさんやシロちゃんも見た目に寄らずそんなに強いなんてすごいです!」


「全てはハルト様のお陰ですから。」


「シロもご主人様が大好き-。」


 またシロが突拍子も無いことを言っているが、可愛いから撫でておこう。


「シロ()…ねぇ。ハルトさんは色男ですなぁ。」


「ところでアイナはこれからどうするのですか?」


 ルカは少し頬を紅潮させながら、話を無理矢理変えた。もう少し続けてもいいのに。


「えーと、とりあえず王都に戻りたいんだけど。ここから一人だと流石に厳しいから、ルカに付いていってもいいかな?」


 するとルカは俺を見詰めてきた。友達からの頼みでさえ俺次第ってことか?


「もちろんルカの好きにしていいよ。」


「ありがとうございますハルト様。では直ぐに王都へ向かうわけにはいきませんが、共に行動しますか?」


「うん!ありがとうルカ!ハルトさんもありがとうございますっ!」


「シロもお姉ちゃんなら付いてきて良いと思うな-!」


「シロちゃんもありがと-!シロちゃんはほんと可愛いねぇ!」


 女勇者はシロの可愛さにやられてしまったようだ。確かにシロは強烈に可愛いからな。


「アイナです!ふつつか者ではありますが、どうぞ宜しくお願いします!」


 アイナは丁寧にお辞儀をして見せた。そうして臨時ではあるが仲間が一人増えた。


 それにしても三人とも顔立ちが整い過ぎている。一人くらい普通の子がいてもいいもんだが。


 

 


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