6-14 女勇者と黒くて硬そうで可愛くない奴
「ヤルン様の敵は排除します。」
女勇者は赤眼を光らせていた。
恐らくテイムのスキルの力が働いたのだろう。
雷の剣だと、女勇者を不必要に傷つけてしまう可能性が高い。
その為、時間と魔力の無駄ではあるが、ガンマダの時に使ったような勇者の攻撃に対しては絶対折れない剣を創る。
振り下ろす美しい剣を地味な日本刀で受ける。
あまり時間はかけたくない。しかし、関係ない一般人を巻き込みたくも無い。
剣を受けながら、悩んでいると女勇者の眼が今までよりも強く発光した。
「闇不知。」
手をこちらに向けて女勇者は呟いた。すると波動砲のような光り輝く魔法を放ってきた。
「高温の光の魔法かな。結界。」
とりあえず結界で防いではみたが、ここからどうするか。ルカの事があるから時間も無い。
そんな事を考えていた時、結界が突然割れて女勇者の放った光線が目の前に迫っていた。
「っつ!!熱ぃ!!!!」
横っ跳びしてギリギリで躱したが、肩が灼けるような痛みを覚える。
「何で結界が割れたんだ?そこまでの威力には見えなかったけどな…。」
何かしらの理由がありそうだ。
俺が立ち上がるとすぐ、女勇者は次の手を打ってきた。
「ウルスラッシュ……。」
女勇者は柄を握り締めると、鍔の当たりから魔力が溢れ出す。目に見える程の魔力は白く輝き、鞘の中で爆発してしまいそうな程だ。
抜刀術のように構え、鋭く鞘から剣を抜くと二つのブーメラン状の巨大な白い刃が生まれ飛び出してきた。
結界を使おうか悩んだがすぐにボツにした。
さっきので破ったんだから、今回は確実に結界を破壊してくるだろう。
つーか、この攻撃えげつない程の魔力を込めてやがるな。新たな魔法で受けたとしても簡単には行きそうにない。
となると……そうだ。転移しよう。
クズ勇者から学んだ突然背後を使う。
本当は前に使った瞬間的移動だが、目の前に標的がいるので気を感じて短距離でも出来るんじゃね?と思ったら普通に出来た。
「てい!」
俺は突然背後を使って突然背後に現れ、女勇者の首に手刀を落とす。念の為スタンガン代わりの雷付きだ。
強すぎて首がポロッと取れてスプラッタ路線を走りたくはないので軽めに当てる。
「グッ……。」
すると、女勇者はドサリとそのまま地面に倒れ込んだ。
「よし、上手くいったな。結界。」
念の為、倒れた女勇者に結界を張り俺はシロの元へと向かった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ご主人様は最初から全力でいけと言っていた。
あのね。今、シロは燃えているの。とってもとっても優しいルカちゃんの事を傷つけた奴は絶対許さない。
だから言われなくても全力でいくよ。
「ニャ-。このチビヤバイニャー。これはコレクションから良い子を選ばないと勝てそうにないニャ。」
「にゃ-??」
「ニャ-?なんだニャ-?」
「にゃー。何でも無いにゃー。」
「ニャーー!!!真似するなニャー!!!!」
「にゃーーー!!!真似してないにゃー!!!」
猫の子はにゃーにゃー言う。おもしろい。駄目なのに真似しちゃう。
「……ムカつくニャ。今に見えてるニャー!!!出て来るニャ、グリフィンロード!!!!」
猫の子は鳥籠を出して扉を開く。すると鳥籠が点滅して何かが出て来た。
「グリフィンロードは強いニャー。グリフィンの希少種という超貴重な子ニャー。可愛いニャー。」
グリフィンは知ってるにゃ。獅子と鷲の合体したやつ。でも出て来たのは形は似てるけど、黒くて硬そうで可愛くない。にゃ。
「クリフィンロードーふわふわしてなーい。きらいー。」
「ぐぬぬぬぬぬぬ。どこまでも馬鹿にしやがってニャー!!!行くニャー、グリフィンロード!!!」
「クエエエェェェェ!!!!!!!」
グリリンロード-は可愛くない鳴き声をあげながら、太い後ろ足で蹴りを放つ。
ごめんねグリリン、今のシロは手加減出来ないの。
「ちゅりゃ!!!」
クリリンノートの脚をキャッチする。そして、そのまま空に放り投げると翼をばたつかせながら吹き飛んでいく。
「飛んでく姿は少しかわいいー。でも、よわーい。ちょりゃ!!!」
手を剣みたいにして魔力で包み込み、それを空へと向かって放つ。
ご主人様は手弾と呼んでたなー。もっとカッコいい名前がいいのにー。
手弾が一気にクリリンの元へと辿り着き、片翼の根元に当たると翼がぶちーんと取れてしまった。
「ごめんねー。でも敵なのー。」
片翼を失いグリシン?グリーン?んー、ぐれいしーは錐揉み状に墜落していく。
少し可哀想。でもシロは助けて上げない。ルカちゃんを傷つけた奴の仲間だから。シロ間違ってない。
んー?
でもこの子は猫の子の籠に捕まってたのかな。
それにご主人様とルカちゃんなら助けるかも-?
助けるだろうなー。
あれー?助けなきゃ-?
「よっこいしー!!!」
慌てて助けることにして走り出すと、ギリギリでぐれいしーぼーい?を助けることに成功した。
「グ、グリフィンロード!!!」
違かった。グリフィンロードだった。
「グリフィンですら貴重なのに……その希少種なんてもう二度と手に入らない…………この……クソビチカスがぁぁぁあぁー!!!!!!」
猫の子は突然怒り出したら話し方が変わってる。
「チビじゃないよー?シロだもん。」
「どこまでも舐め腐りやがってぇ……お前だけは死んでも殺してやるからなぁ!!!!!目に物言わせてやるわぁ!!!!!!」
猫の子は目を吊り上げて喚き散らす。自分でグリフィンロード戦わせてきたのに怒るなんておかしい-。
「死んだら殺せないよー?知らないのー?」
「……………。死ね死ね死ね死ね死ねーッ!!!!出て来いお前らぁ!!!!!」
すると猫の子は勢いよく籠の扉を開く。
点滅を繰り返す籠が震えると強い魔力を感じた。
「シロ…待たせたな。」
突然ご主人様の声がして振り返ると、ご主人様が真面目な顔をしていた。
「ご主人様早いねー!!!」
「あぁ、シロの敵に比べたら大したこと無かったからな。ここからが本番だ…ルカを救うぞ!」
「あい!!!!!!!」
ご主人様へ返事をしたその時……大きな咆哮が生まれた。