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6-13 救出戦



 墓を出た俺達は通路を走っていた。


 先程までは洞窟のようだったが、途中から石造りの通路に変わっている。


 その通路は、まるでどこかの城の地下に居るんじゃないかと勘違いしてしまいそうなほどにしっかりとした造りだ。


「ルカちゃんの匂い…。」


「シロ!本当か!?近いのか?!」


「……でも、他にも匂いが色々。ご主人様-。」


 シロは心配そうな顔で俺を見上げる。


 そこで俺は漸く限定念話のことを思い出す。何ですぐ忘れてしまうんだろ。


『ルカ、聞こえるか?ルカ!』


 暫く念話を飛ばしていたが結局返事が返ってくることは無かった。


「ご主人様ぁ~。」


 気付けばシロは涙ぐんでいた。俺は焦りのあまり気の利いた事も言えずにシロのあたまを撫でくり回す。


「念話も駄目だ。シロ、急ぐぞ。」


「あう~~。ルカしゃん~。」


 普段は快活なシロだが、ルカの事がよっぽど心配らしく不安げで元気が無い。


「大丈夫。何かあってもルカは俺達が助けるだけだ。」


「う、うん!シロがたすけるー!!!!」


 俺の言葉にシロは何とか気を取り直して、通路を走り抜けていると扉を何ヵ所か通り過ぎた。


 やはり何かの建物なのだろう。地下深くに有るにも関わらずかなり大規模な建造物だ。しかし、シロは扉に目もくれずにひたすら通路を走って行く。


 俺も補助的にサーチを出来るだけ大きく使う。


 すると、このまま真っ直ぐ進んだ先に赤い点が見えた。


 だが、何かの妨害がありすぐに消えてしまった。


 一瞬だった。一瞬だったが青い点が見えた。青く表示されるということは……。


「シロ!!一瞬だがルカを確認したぞ!生きてる!!!」


「ほんとー?!……シロは今燃えているよ~!!待っててねルカしゃ~ん!!!」


 ルカの生存が確認出来た途端にシロはいつも通り、いやっ…いつもよりも燃えながら走って行く。


 そのまま脇目も振らず突き進んでいくと、今までの扉よりも明らかに豪華な扉が見えてきた。


「ここか。」


「うん!!そうみたいー!!!」


 シロは手足が光っている。準備万端ってことだな。


「シロ、ルカに逢いにいくぞ。」


「あい!!!!」


 扉の取っ手に手を掛ける。罠は無いようでそのまま開く。


「……玉座の間か。」


 地下とは思えない豪華な部屋だが、装飾品を見ると少し古びれた感じがする。となるとここは遺跡か。


「ルカッ!!!」


 玉座の間の中央に玉座があり、その大きな椅子の前には床に倒れたルカの姿だけ(・・)があった。


「ちゅりゃ!!!!!」


 俺の気配察知と同時にシロが回し蹴りを放つと、頭上に剣を振り下ろす女の姿があった。


「ニャー!?気配は感じれる筈無いのに何でニャー?!」


 シロが剣を蹴りで弾いてくれたので距離を取ると、玉座の後ろから猫耳少女が驚愕だと言わんばかりの表情で現れた。


 こいつが今回の追っ手だな。


 剣を弾かれた鎧を纏った女はそのまま宙を舞いながら距離を取り、猫耳少女のすぐ横に着地した。

 魔力を流したシロの蹴りで無傷な上に剣も折れず、不意打ちが失敗に終わるとすぐに距離を取る……厄介そうな奴だな。


「邪神の欠片を持った者だな?」


「うーん。そう…ニャー。ヤルン・マルンニャー。剣の子は…うーん。勇者……アイナ・ハーリーだニャー。」


 猫耳少女は言い難そうに答える。言いたくないなら言わなきゃいいのに。


 それにしても勇者か。この世界の勇者は悪人が多いのかね。


「ルカに何をした…。」


「戦って勝っただけにゃ。1対1じゃニャかったけど、氷龍姫は卑怯じゃ無いって言ったニャ。」


 卑怯なのが嫌なのか、答えるより先に言い訳を口にする。なんなんだこいつ。


「まだ死んでないニャ。猛毒を受けてはいるがニャー。ウチは卑怯ニャのは嫌いニャー、人質にするつもりはニャいけど、あまり時間かけてると二度とハルトに笑顔は見せないニャー?」


 試しにルカに鑑定をかけると弾かれてしまった。密かにマジック・クリエイトで創った解毒の魔法もだ。


「無駄ニャー。ウチを倒さない限り解けない特別な結界を張らせてもらったからニャー。無理やり解けば死ぬしニャ。」


 あの結界だけを解く魔法を創ろうと思ったが、解けば死ぬというのが万が一あったらマズい。とりあえずリスクの低い方を選ぶか。


「なるほどな。……だったらすぐに殺してやる。」


 金色の魔力を纏い即座に動こうとすると、勇者と呼ばれていた女が動き出した。


「ハアァァァァッ!!!!」


 剣を上段へと構えた勇者が俺目掛けて剣を振り下ろす。


 それを雷の魔力で創った剣で受けるがかなりの衝撃を受けた。だが雷の魔力が剣伝いに流れ、女勇者の手から煙が上がり始めた。


「どうした?それが全力か?」 


 女勇者は蒼い鎧を身に纏い、灰色の髪に赤眼の18歳位の少女だった。

 地球にいれば間違いなく超絶美人認定されるだろう容姿だが、目に生気を感じさせなかった。


「…こいつはお前の傀儡か何かか?」


 手が焼けているにも関わらず、グイグイと押し返そうとしてくる女勇者を蹴り飛ばし、猫耳少女に問う。


「傀儡?テイムと呼んで欲しいニャー。ちゃんと戦って勝った戦利品だニャー。」


 テイム?この世界では人間をテイム出来るのか。こっちでも地球でも初めて聞いたぞ。


「シロ、女勇者と猫耳どっちがやりやすい?」


「悪者の方が得意-!!」


「分かった。必要ないだろうけど、すぐに加勢する。シロ隊員、ムカつく奴だから……最初から全力でいけ。」


「あいあいさー!!」


 ムカつく奴だからとは言ったが、こういう奴は様子を見ていると足下を掬ってくる。


「油断するなよ。」


「燃えてるから大丈夫~!!」


 だから心配なんだが。とはいったものの俺だって大分燃えたぎっている。


「女勇者。悪いがすぐに終わらせるぞ。」


「アイナ!!そいつが目標のハルトニャ!!抹殺ニャー!!!」


「……。かしこまりましたヤルン様。」


 生気の無い眼をした女勇者は返事をすると、そのまま俺に攻撃を開始した。


 瞳を真っ赤に染めながら。

 

 

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