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6-12 トラウマ



ダンゴムシ達を倒した後、それほど魔物に遭遇せずにすぐ三十階台最後の階段へと辿り着いた。


「よし、じゃあボス部屋へ行きますか。」


「はぁーい!!」


 前のことも有り、階段は特に危険(トラウマ)なのでシロをおんぶして下りていく。

 そしていつもの広間へと辿り着いた。


「シロ開けてもいーい?」


「ん?あぁ、もちろんいいよ。」


 シロは前からボス部屋への入口となる扉を開けたかったようで、嬉々として扉に手を掛けようとしたが取っ手を掴もうとした寸前で手を止めた。


「シロ?どうかした?」


「ご主人様……手を繋いでもいーい?」


「ああ、構わないよ。」


 ボス部屋が怖いのかなと一瞬思ったが、シロ程の実力があればボス部屋などアトラクションのようなもののはずだ。

 何か思うことや、感じることでもあったのだろうか。


「開けられるか?」


「あい。」


 手を繋ぎながら、ボス部屋へと繋がる扉へとシロは手を掛ける。その瞬間俺は繋いだ手を強く握ってシロを引き寄せる。


「シロ!!」


 扉が突如発光し、紋様が浮かび上がったのだ。


「ごごご、ごしゅじんたまぁ~~~!!!」


 扉から距離を取ろうとしたが、引き寄せたシロが顔面に強力に抱き付いて動けなかった。


 その為、扉の前に赤い魔法陣が浮かんだのが微かに見えたが今回も避けることが出来なかった。


 そうして、俺達は二度目の強制転移をくらったのだった。





「何処なんだここは。」


 転移をくらって飛ばされて、光が止むとそこは迷路ではなく人工的な洞窟のようなところだった。


「ごしゅじんたま~。ふぇ~ん、ごしゅじんたまいてよかったよ~。」


 良かった。抱き付いていたシロも一緒だった。


「一緒に転送されて良かった。でも喜ぶのは後にした方が良さそうだぞ。」


「グスッ。そうみたいだね。グスッ。」


 今のところ魔物は目に付かないが、気配察知がガンガン働いている。


 周囲には大きな石像が壁に埋め込まれ、松明が至る所で揺らいでいる。


「何か意味の有りそうな部屋だな。」


「多分お墓だよー?お化け出るかなー。」


 墓ねぇ。誰の墓場か知らないが転送された先が墓場なんて気味が悪い。


「リスキアの作ったダンジョンは悪趣味だな。」


「むぅ。リスキア様の匂いが薄いのー。ダンジョンには繋がってるみたいだけど、リスキア様の作ったダンジョンとは違う感じがする-。」


 シロの言葉に俺はドキリとした。


 胸騒ぎが確信に変わった気がしたからだ。


 幾度も感じた視線や殺意。そして疑惑。


 解決してない事柄を考えると、邪神の欠片に関与する奴がつけてきていた可能性が高い。


「シロ、嫌な予感がする。急ぐぞ。」


「うん!」


 普段おちゃらけてるシロだが、俺の感覚に同感のようで真面目な顔で即答した。


 墓場は迷路のようには入り組んでおらず、ひたすら幅と高さのある通路が真っ直ぐ進んでいるだけだった。


 俺が先陣を切って走り出すと、すぐに気配察知の働いた正体が判明する。


「くるぞ!」


 横穴式石室のような穴が大量に壁に空いている。そこから這い出てきたのは大量の骸骨だった。


「シロ、Bランクのボーンソルジャーだ。百体はいるぞ。」


「アンデットなら得意-!!」


 わらわらと這い出てきては剣を構える魔物達。アンデットとなると物理攻撃だと復活するんだろうな。


「なら好きに暴れていいぞ。」


「あいあいさー!!」


 シロは白い光を拳に集め握り締める。僅かに神力を練っているようだ。

 ツインテールも逆立ち、シロはやる気満々で飛び出していった。


「サーチ。」


 シロが大暴れしているうちに俺はサーチを使う。するとダンジョンサーチではなく普通のサーチが使えた。


「ビンゴだな。」


 やはりリスキアのダンジョンとは関係ない。どうしてこうなったのか分からないが、恐らくは追っ手だな。


「マジック・クリエイト。」


 魔力も温存したいが、俺の魔力使用料と魔力回復のペースが合っていないので魔力が有り余っている。

 少しの怒りと焦りを魔力に乗せて、魔法を創り出す。


「シロ、邪魔するぞー。」


 声を上げて放ったのは聖なる太陽光。サンライトホーリーだな。まぁ、光魔法のホーリーだ。


 創り上げた魔法を天井向けて放つと、白く輝く玉が打ち上がり、ボーンソルジャーの群れに聖なる太陽光が降り注ぐ。


「まーぶしー!!」


 シロが嫌がるほどの光度でボーンソルジャー達を照らすと、カタカタと震えながら骨粉へと変わっていく。


 だが、まだ気配察知は変わらず機能していた。


「お前が骨の親玉か。」


 姿を現したのは醜い老人のような魔物だった。


 伸びた髭は白く、大きな目と耳。体は小さいが弱くは無いのだろう。


 鑑定にはボーン・コレクターというAランクの魔物だった。


 こいつが骨を操る魔物みたいだが、邪神の欠片を所持する者では無いのは気配察知の強さで感じる。


「ちゅーりゃー!!!!」


「おぉ、問答無用だな。」


 Aランクとはいえシロの敵では無い。攻撃どころかまだ全体像すら把握出来ていないのにシロの拳で天に召された。


 会話出来るかどうか分からないが、シロにとって本当に問答が無用だったのだろう。


「むー!まだいるよー?」


「みたいだな。」


 地響きを起こしながら現れたのは、墓所を護るように立ち並んだ石像達だった。


 石像は岩を引き千切るように腕を振り、埋め込まれた体を動かす。

 まさに動く石像だ。みーたーなーとか言うつもりじゃないだろうな。


「シロ、ストーンマンだ。Aランクの群れだから遠慮するなよ。」


「もちろんさー!!」


 島んちゅなの?そうツッコミたくなる返事でシロは戸惑い無く先行していく。


 咆哮はないがスガガガガと岩が動く音がする。そしてその音の後に岩が爆発していく音もする。


 遠慮するなよ。俺は確かにそう言った。


 だが1分経たずに三十体は居たであろうAランクの魔物が木っ端みじんになるとは思っていなかった。


 どうやらAランクだろうがBランクだろうがシロにとっては関係ないようだ。


 それにしても俺の出番少ないな。


「動く石はただの石だー!」


 謎の決め言葉をシロが決めると、最後の一体だったストーンマンが全滅した。


「こいつらの本当の親玉が居るはずだが、シロわかるか?」


「うーん。色んな匂いが邪魔してるー。」


 変な匂いか。恐らくそこに何かあるな。ルカの匂いが感じ取れていないのが心配だが、今はそこしか向かう他無い。


「その匂いの所で良いから案内頼む。急いで向かおう。」


「はーい!!」


 ここがダンジョンとは関係ない場所だとすると、俺達よりも先に40階層へと辿り着いた者が居る。

 そしてそいつがトラップを用意して俺達を連れてきた。


 確率的にルカが単独で遭遇している確率が高い。


 俺は考えれば考えるほどネガティブな答えを生産していき、べとべとと絡み付く感覚に耐えながら再度走り出した。

 

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