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6-11 斬気慧風



「はぁ…漸くこれで最後の迷路か。」


 俺達は今後誰も抜くことが出来ないであろう記録的スピードで迷路のフィールドを踏破しようとしていた。


 正直に言おう。迷路はもう飽きた!


 右に曲がろうが左に曲がろうが同じ風景が続き、たまに小部屋程度の開けた空間があれば罠か魔物しかいない。


 普通宝箱とかあるもんじゃないの?罠の宝箱すらないじゃねーか!


 飽きてしまっていた為、そんなことばかり考えていたらいよいよボス部屋まで最後の階層まで辿り着いた。


 三十階を越えた辺りからエンカウント率は下がったが、出て来る魔物のレベルは上がっていた。


 それでもせいぜいBランクや、たまにAランクが出て来る程度だったので俺達の敵では無かった。


「よし、最後の迷路になることを祈ってガンガン行くぞー。」


「あいあいさー!!あっ、魔物だよー!」


 通路の先の小部屋には魔物が待機している。


「二匹だな。一匹ずついくぞー。」


「あいあいさー!!」


 小部屋に入るとすぐに二匹の魔物がこちらに気付く。土の狼のような魔物だ。


 「いぬー!!どいぬー!!」


 つち犬じゃないんだな。まさか!と思って鑑定してみるとBランクのマッドウルフと表示された。


「シロ、どいぬじゃなかったぞ?」


「シロ初めてみたー!!」


 なるほどね。そーゆーパターンもあるのね。


「シロ、Bラン「ちゅりゃ!」…。」


 説明すらされずに、どいぬは飛び散った。


「一匹ずつって言ったのに…。」


「わーすーれーてーまー!!」


 まー!!……まぁいいか。


「しかし、リスキアが最高難度って言う割に弱いのしか出て来ないな。こんなもんなのかな。」


「ご主人様強いからねー。」


 確かに普通の冒険者からしたらBランクでも苦労するんだろうし、途中で強制転移されて分断と来たらまずAランク冒険者でもここまでは来れないだろうな。


 ビクサールなんかは逃げ回ってるイメージしか湧かないな。


 小部屋を後にし、暫く歩いてるとザワザワした気配を察知した。


「シロ、なんかいるな。」


「うん。いっぱいいるみたい。」


 ザワザワは大量の魔物か。モンスターの家…だな。


「シロ、暴れたい?」


「うん!!でもご主人様はー?シロ遠慮できるよー?」


「うーん、シロに全て任せるのも気が引けるんだが、シロは戦闘狂っぽいからな。まぁ、適当に援護してるよ。」


「やった!!ありがとうご主人様-!!」


 シロは可愛いな。遠慮できるよー?なんて言われたら遠慮なんてさせられないだろ。


 そして俺達はモンスター家へと足を踏み入れた。


「みんな寝てるねー。起きろ-!火事だ-!!!」


 火事だ?何なんだその言葉のチョイスは。シロの声と同時に魔物達は目を覚ました。


 さっき倒したマッドウルフ(どいぬ)やBランクのボムアイ、Bランクのグランバッドetc…。

 およそ30体の魔物が大部屋には詰め込まれていた。


「この数にしては部屋が狭くね?一網打尽もいいところだぞ。」


「ねーねー。もう倒してもいいー?」


「あぁ悪い。じゃ、始めるか。」


 今にも飛び出して行きそうな勢いでシロが聞いてきたので、Go!を出すと魔物の群れの中に消えていってしまった。

 遠距離からちまちまやらないで、わざわざ群れに混ざる辺りがシロらしいな。


「おっ、何かやるな。」


 シロの魔力が膨れ上がったのを捉えた。すると、喚いていた魔物達の中心でシロが動き出したのを感じた。


「うーん。援護の前にとりあえず結界だな。」


 俺まで巻き込まれそうな魔力だったので、即座に援護より自衛手段を選んだ。


「ちゅりゃりゃりゃりゃー!!!!」


 掛け声がすると、大部屋の中心で魔物がどんどん外側へと弾き飛ばされていく。

 俺が見たのは両手を広げて回転するシロだった。


「おぉ!ダブルラリアット!!!!」


 これは地球にいた頃のゲームで見た技に違いない。世界的に有名なストレートファイヤーだ!!!

 

 ストレートファイヤーの登場人物の斬気慧風(ザンギエフウ)というハゲプロレスラーがクルクル回ってラリアットしていたのを思い出す。


 興奮しながら戦況を見守っていると、度々吹き飛んだ魔物が結界にぶち当たる。

 すると周囲の魔物達が皆ダブルラリアットで吹き飛んでしまったのに気付いたシロが今度は走り出した。


 またしても円を描くような動きで走り出したシロは、走るスピードそのままで魔物の尽くをワンパンで沈めてく。ワンパンウーマンだ。


「なんか…シロ強いなぁ。いちいち倒し方を考えて戦っているのがアホらしくなってきたな。」


 約10秒後。立っていたのは俺とシロだけだった。


「清々しい程の圧勝だね。」


「シロつよいー?役に立つ-?」


「強すぎるし立ちすぎる。このままじゃグータラになりそうな程にな。」

 

「えへへー。」


 シロは褒められて少し恥ずかしそうにしながら喜んでいた。そんなシロの頭をポンポンとしていると、気配察知がまた働いた。


「挟撃だったか。やるなダンジョン。」


 振り返ると迷路の天井にビッシリと貼り付くダンゴムシのような魔物がいた。


 気付かれたことに気付いたダンゴムシ達は一斉に飛び掛かってきた。これはえげつないな。


 俺はシロに感化され素手でいく決意を固める。


「俺がやる。ほ~あーたたたたたたたたたたたたたたたたおわったぁ~!!!」


 ダンゴムシ達は既に死んでいる。秘孔は付いてないけど力任せに殴ったからな。


 すると脇にいたシロが悲しそうな声を上げた。


「ね~え~ご主人様~、べちょべちょだよー。」


「そうだね……。」


 ダンゴムシ達の体液を二人仲良く被ってしまった。仕方なくマジック・クリエイトでクリーンというピカピカになる魔法を創って魔力の無駄遣いをしたのだった。


 俺がやるとどうにもスマートに行かないな。


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