6-7 砂漠の階層主
「あったぁー!!かーいだん!!」
ご主人様とルカちゃんと離れ離れになってから走り続けた。
たくさん魔物が邪魔してきたけど、シロは強いからみんなやっつけちゃった。
「あー。また暑いだー。暑いばっかりだー。ルカちゃんのぷにゅぷにゅ冷たい肌ほしいー。」
階段を降りたらまた砂漠だった。砂しか無いからつまんないんだよー。飽きるのよー。
「暑いよー、ノドかわいたー。ご主人様お水ちょーだいー。ルカちゃん氷いれてー。」
ぶつぶつ呟きながらもまた走り出す。
「あちょ!てちょ!しゃちょ!」
走りながらデカいヘビさんの頭を蹴って越えていき、色んな色の空飛ぶ硬いムシを踏み台に空中を走って行く。
最初はご主人様の匂いがしなくて悲しかったけど、さっきリスキア様の匂いがしているのに気付いた。
「リスキア様の匂いのするところに行けばご主人様とルカちゃんに会える-。たぶんー。」
答えが出たから気持ちが楽になってルンルンしていると、突然砂漠にバコーンと穴が空いた。
「ギチギチ…。」
「出たなぁ砂のクモ-!多いなー!」
倒しても逃げてもどこからともなく現れるクモ達。だけど今度のクモは今までで一番大きかった。
「大きなパパクモ-。シロ食べるのか-?」
「ギチギチ…。キシャーー!!!!」
食べるなら容赦しないぞー!と言おうとしたが、クモは話しきる前に口から投げ網のように糸を噴出する。
ふわふわしてるのかなぁ。気持ちいいのかなぁと思って糸を待っているとベチョッと全身に糸がかかる。
「べとべとー。きもちわるーい。特に顔-。」
ついつい好奇心からその感触が知りたくて糸にかかってしまったぞよ。
気持ち悪くてジタバタとしていたら、クモは既に狩りは終わり食事の時間だというようにゆっくり近付き更に糸を噴出する。
「やーらーれー、………るー。」
どんどん糸を放出し、やがて繭のようにされてしまった。このまま巣に連れ帰り、子供クモと食べるつもりなのだろう。
パパクモは完全に繭のようになったわたしを一本の糸で繋ぎ引き摺って歩く。
ご機嫌そうに何かを呟いている。既にシロは繭の中にいないのにー。
「ギチギチギチギチ…。」
「ぎちぎちぎちぎちー。」
「…。キシャーー!!!!」
わたしがパパクモの隣でクモの真似をしてると、一瞬の間を置いてクモが爪で切り裂こうと脚を振る。
「パパクモさんは遅いし力よわいねー!もうかかって来ないなら許すよー?どうするー?」
わたしに振り下ろした脚を片手で受け止めると、クモは更に怒り残りの脚を振り回す。
「もー!!パパクモはおばかさんだなー!!」
私がクモの脚を引っ張ると千切れて緑の血が吹き出る。
「パパクモだめー。あうとー。」
直接触ると血で汚れそうだから空気を斬ろう。ご主人様がいればお風呂入れるから気にしないけど。
わたしは手を剣のように上から真っ直ぐ振り下ろす。パパクモは避けようとしたが全然間に合って無くて、真っ二つに割れた。
「時間もったいないからシロいくよー。」
時間の無駄をしてしまったので、すぐに立ち去る。それからも度々魔物は現れたが、早くご主人様に逢いたいから全て置き去りにして走った。
やがて転移してから九個目の階段へと辿り着いた。
☆
「階段みつけー!次はボス部屋-?むむむ。あれって…。」
階段を下りようとすると一つの黄色い岩が目に止まった。
「イエロー!!イエロー・ギガルピア・ドグランナだー!!!!」
わたしの大きな声に目を覚ましたイエロー・ギガルピア・ドグランナは立ち上がる。
若くハンサムな顔立ちをした黄色い石の顔から手足が生えている。
「すごーい!!カッコいーなぁー!!!」
「……僕のことは構わないでくれよベイビー。」
そう言い残してイエロー・ギガルピア・ドグランナは砂の中に消えていった。
イエロー・ギガルピア・ドグランナに遭遇出来た余韻に浸りながら階段を下りていくとやがて光が見えてきた。
「早くご主人様とルカちゃんに逢いたいなぁー。ボスの次で逢えるかなぁ。寂しいなー。」
早く逢いたい気持ちが足を急かす。駆け下りていった先は今までと同じ砂漠だった。
「また暑い-。もー飽きたよー。」
ダンジョンにも関わらず太陽がかんかん照りで、灼熱の砂が空気を焼いていく。
ボス部屋にも関わらず辺り一面砂漠で、広大なフロアだった。
「あれー?ボスいないー?」
周りを見渡すが近くにボスは見当たらない。
「うーん。でも匂いはするなぁ。」
ボス部屋には魔物は一匹しかいないって聞いた。だから余計目立つ匂いがする。
「下かなぁ。クンクン。」
匂いを辿ると、やがて真下にいることが分かった。
「隠れてる-?ちゅりゃ!!!!」
地面を強く殴り付けると砂が吹き飛び深さ五メートルの穴が空いた。
わたしが覗き込むと潜んでいた魔物と目が合った。
「キリキリキリキリ……。」
「変な奴だ-。ボス-?」
黒い体をした八本の脚を持つ大きな虫。そのボス虫が砂をかき混ぜている。
すると砂漠の砂がボス虫を中心にまるで渦潮のようにぐるぐると回転し始めた。
「ありゃりゃ?」
砂がどんどん回転しながらボス虫の口に吸い込まれていく。流動している砂に脚を掬われて渦に落ちてしまった。
「うー、目が回るぅー。」
ぐるぐると回りながらどんどんボス虫の口に近付いていく。起き上がろうとすると滑ってしまう。
「だめかー。ごーしゅじーんたーまー。」
困ったときは必ずご主人様が助けてくれるってルカちゃんが言ってた。だからご主人様を呼んでみる。
結果…来なかった。困ってないのがバレたのかな。さすがはご主人様だぜ。
なんでバレたのだろうと考えているうちに、ボス虫の顎から生えたハサミが目前に迫っていた。
「くらえー!八つ当たりぱーんち!!」
「キッ…!!」
既に砂だらけになってしまっていたので、汚れを気にせずに正拳突きを食らわせようとすると、ボス虫は振りかぶる拳を見て大慌てで砂の中に隠れてしまった。
「あー、ずるーい。逃がさないんだから-!!爆発するぱーんち!」
正拳突きをさっきまでボス虫のところでは無く、真下に向けて振り下ろす。
すると最初のボス虫探索で抉れていた地面が大爆発し、更に深いクレーターになった。
「あれー?ボスどこー。」
爆発ぱんちで砂を退かして探そうと思ったのに、ボスの場所がわからなくなってしまった。
仕方ないので一度上まで戻る。
「あー!!かいだんだー!!!やったぁ!!」
ボス虫は既に倒してしまっていたようだ。これで次の階に進める。
「ご主人様ー!ルカちゃーん!!いるー?おーい!!!!」
早く逢いたいと願いながら、急いで階段を下りていった。