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6-4 二十階層の主 瞬殺のカトラ



 階段を抜けると雪国でした。


 何てことは無く、普通に広々とした空間に出た。

 前回の時と同様に扉がある以外には何も無い。


「たまには二人とも少し休みたい?俺がやろうか?」


 ここまで全く活躍していない…というか役に立って無いので、俺が今回は戦うと遠回しに宣言してみた。


「問題ありません。」


「シロもやるー。」


 遠回しの宣言では通用するわけ無く、ルカとシロは余裕を見せる。


「でも、ほらっ。こんだけ長く二人で戦ってきていたわけだし。」


「全く問題ありません。お気遣いありがとうございます。」


「シロは足りない位だよー。みんな弱すぎるんだもーん。」


 気を遣った感じで二人に聞いたのが失敗だったか。もしくは二人とも戦闘狂なのか?


「分かった。なら相手を見て決めよう。じゃあ、開けるぞ。」


 俺はまだ諦めず二人に告げ、扉に手を掛けた。


「おぉ、これはまた…。」


 扉の先には湖のようにマグマ溜まりが広がり、その中央には小島の陸地があった。


 その小島には大きな影が一つ。


「あれがボスか。足場も少ないな。」


 視認出来たのですぐ鑑定を行うとAランクのドラゴカトラと表示された。

 

「ルカ、ドラゴカトラという魔物だ。」


「憤怒龍の二つ名がある魔物ですね。」


「憤怒?」


「はい。噴火と憤怒、そして憤怒と土龍をかけた名のようです。名前の通り、怒り狂ったように暴れ回る魔物のですね。」


「なるほどな。」


「龍種ではありますが、飛龍には属さず地龍に属しています。」


 二十階層進んで来たら突然のAランクか。まぁAランク程度じゃ俺達の敵では無いが…。


「ルカはマグマの地龍相手じゃ熱いだろうし、シロは空飛べないからこの足場の無さでは面倒くさいだろ?だから俺が……。」


「問題ありません。」


「楽勝だよー?」


 喋っている途中で二人とも被せてきた。俺の力ではもう制御出来ないようだ。


「そうだよね。知ってるだよ。」


「……ハルト様?」


「ご主人様どうしたのー?元気ないだよー?お腹痛い?」


 俺が思い通りに行かないことに(戦えないことにじゃない)落ち込むと、直ぐさま二人は心配してくれた。


 そしてルカが一瞬だけハッとした表情をした。


「ハルト様、申し訳ありませんがやはりお願いして宜しいですか?私には熱すぎて魔力が必要以上に減ってしまいそうですので……。」


「んー?あー!やっぱりシロもー!!落ちたら熱いからちょっとやだなー!!!!」


 くっ。突然スイッチが入ったかのように二人は戦うのを嫌がりだした。

 露骨過ぎる…。

 俺は何を無意味な気遣いをさせてるんだ。しかし露骨過ぎるぞ。露骨過ぎるが優しさが心にくるぜ。


「そ、そう?じゃあ俺が戦ってくるから、加勢したくなったらしてね?」


「はい。」


「あいー!!」


 今になってワガママ言ってるような気がして二人に戦わせてあげたくなった。


 でも、今更引けない。二人には悪いがここは俺に行かせて頂こう。


「いくぞ!ドラゴカトラ!!せいっ!!」


 俺はシロの真似をして手弾を飛ばす。今回は無属性だがちゃんと魔力を手に纏っていたので、視認し難い弾が飛んでいった。

 マジック・クリエイトに頼らずにやれたから、ちょっぴり嬉しい。


 初の手弾がドラゴカトラへと飛んでいくが、シロのものと比べるとかなり遅い。だが威力は充分な筈だ。


 しかし、着弾寸前にドラゴカトラは体を捻り手弾を食い破った。


「やるじゃん、ドラゴカトラ。」

 

「グォォオオー!!!」


 小島で休んでいたところを攻撃されたドラゴカトラは怒りの咆哮を上げマグマへと潜って行った。


「ご主人様がんばれー!!!」


 シロが両手を上げて応援してくれる。


「おうよー。」


 俺も手を振って返すと、小さくルカも手を振っていた。くそっ、可愛すぎるぞ。


 すると突然マグマが噴火したかのように爆発する。それはドラゴカトラが凄い勢いでマグマから飛び出したからだった。


「グォォオオー!!!」


 マグマの中なのでもっとゆっくり来るかと思ったら、中々のスピードで来た。


 怒りに任せ飛び出したドラゴカトラは空中で火弾を連射しながら巨大な口を開けて突進してくる。


「悪いがご主人様も負けてられないからな。恨むなよ。」


 俺は手に雷を纏い、ドラゴカトラへと掌をかざす。


雷光砲(ライトニングガン)。」


 掌から放出された白き稲妻はドラゴカトラへと突き進み、その大きな口の中へと突き刺さる。

 そして、体内を瞬時に焦がしながら尻を突き破った。


 失速したドラゴカトラは地上に落ち、全身から煙を上げて動かなくなった。


「ごーしゅじんたーむー!!!」


「ごはぁっ!!!」


 折角の格好良く倒した後に振り返るというタイミングを待つこと無く、シロが背中に破壊力抜群の体当たりをしてきた。


 あまりのパワーとスピードで、しかも背中から羽交い締めされている為、ズザーッと顔面スライディングすることになった。

 まぁ、慌てて俺とシロを薄い結界で覆ったので無傷だったが。


 そのまま背中の上から離れぬままシロはペシペシ背中を叩きながら喋り出した。


「ご主人様!!すごーーーく格好良くて、ご主人様がご主人様でよかったーって思ったよー!!!」


「そうか!俺もシロがシロで嬉しいよ。」


 背中に貼り付いたシロを剥がして持ち上げる。子ウルフィナス時代を思い出すな。


「シロちゃん、突撃しては駄目ですよ?ハルト様がびっくりしちゃいますよ。」


「はぁーい!ご主人様ごめんねー。」


「ハハッ、いいよ気にしないで。それよりもほら、階段が出たぞ。」


 ドラゴカトラのいた小島に階段が出現したのが見えた。


「ほんとーだー!やったね!!」


「ハルト様、ご苦労さまでした。」


「ルカもシロも戦いたかったのに悪かったな。」


 俺が謝ると二人とも微笑んでいた。


「ハルト様…格好良かったです。身を挺して私を守ってくれた姿を思い出していました。ハルト様はいつも…素敵です。」

 

 ルカが顔を真っ赤にして思いの丈を述べていると、シロも喋り出した。


「ルカちゃん顔が真っ赤だよー?熱あるー?」


 おでこをルカに寄せてシロがルカを無意識にイジると、更にルカは顔を真っ赤に染めた。


「いつもありがとう、ルカ。」


「ハルト様…。」


 気の利いた事は言えないが、ルカの手を握り引き寄せ見詰め合う。


「ご主人たまぁ…。」


 するとシロが便乗してきた。二人の世界に浸るのは二人じゃないと出来ないことが判明した。


「よ、よし。次の階層がどんな所だか分からないが、三人で助け合ってどんどん突き進もう!!」


「はい!」


「りょうかい牧場~!」


 そうして俺達は地下二十階を終えた。


 因みに小島には俺の背中に乗って貰って、飛行するスーパーマンで渡った。

 特に理由はない。そうしたかったからだ。

 


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