5-7 逃亡者
前回のあらすじを説明しよう。
なんとシロは女の子だったのだ。
「るかちゃん!!またご主人様が遠い目してるー!!」
はっ!!また、別の世界に行っていたようだ。
「ハルト様、大丈夫ですか?」
「ご主人様大丈夫-?」
可愛い……シロが可愛い。
「あぁ、大丈夫だ。そういえばシロは何で金髪なんだ?」
俺はパニックか?何故こんな質問をしてるんだ。
「えー?私のうぶ毛金髪だったからかな?」
なるほどね。真っ白いフニフニの体にはか目に見えない金髪の産毛が生えていたと…。
「ずっとシロのこと男の子だと思ってたよ。」
「えー、なんでー?」
「いやー、ルカの事が好きな男の子かと。寝るときもルカとだし、風呂もルカとだったから。」
「ご主人様とお風呂は恥ずかしかっただけだよー?」
なるほど。子ウルフィナスの姿の時からレディだったと。なるほどなるほど。
「角はそのままなんだな。」
「うん!角は大事-。」
うむ。角は大事だ。でもその角は目立つなぁ。
「マジック・クリエイト。」
俺は急遽手持ちの素材や魔石などを使って、幅のあるカチューシャ?だと直ぐ取れそうだから、はちまきの用な物を創ってみる。
するとはちまきの中央部分が鋼で装飾された飾りがついた可愛らしいおしゃれなものが完成した。
腕輪との相性も良さそうだ。ついでにこれに身体能力向上を付与してできあがりだ。
「シロの角は目立つから、これを頭に巻けば角も装備のように見えるだろう。」
「ご主人様、ありがとー!!!!」
シロはいきなり飛び付きながら嬉しそうにお礼を口にした。
「シロは大事な仲間だからな!」
「うん!!それにこの腕輪も可愛くて、すごく気に入ってるよ!!」
シロも可愛いなぁ。ルカとシロと一緒なんて最高のパーティーだな。
ルカがシロにハチマキを付けると、童顔のシロが少しだけ戦乙女の仲間入りしたように見えた。
「シロちゃん、とっても似合いますよ。良かったですね。」
「えへへー。」
ルカは優しい表情でニコニコしながらシロの頭をなでなでしている。ルカは普段美人で凛々しいが笑うと可愛いなぁ。
この二人を守れるように、俺も強くならないとな!!
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「二人とも寒くない?」
「はい、私は寒いのは得意なので大丈夫です。」
「私も全然へいきー!!!」
俺達はプルートーンゴーレムを倒した後、二日間かけて大分北上してきた。
辺りは一面雪景色だ。いやっ、氷だな。
「ルカ、氷の極地とやらはまだまだかかるのか?」
「今までの早さで行ければ、あと一日と行ったところでしょうか。」
「分かった。そろそろ一端休憩にしようか。」
俺はシロとルカを背負って飛んでいる。
ダサいが人目も無いし、節約になるからな。
首を曲げ続けているが余裕だ。マッチレス・ヒューマンの体、万歳だな。
最近気付いたのだが、スーパーマンみたいに飛びながら背中に乗って貰うのがダサいなら、乗り物創って飛ばせばいいんじゃね?
まぁ今は忙しいからゆくゆくだな。それにルカの靴に飛行出来る付加を付けたのは戦闘時にも役立つし良しとしよう。
吹雪の中へ降りたため、俺は急いで家を立てる。雪で潰れないように屋根を合掌造りのように急斜面にする。
流石は魔法なだけあって、保温材を詰めなくても中に入り囲炉裏に火をくべるとかなり暖かかった。寒さで凍えることは無くても寒いものは寒いからな。
「ご主人様、温かいねー!!」
「そうだな。」
シロはルカからもらったリボンでツインテールに変身している。
地球の特撮ヒーローウルトラ男の敵で出てきたツインテールではない。
童顔にツインテールは破壊力抜群だ。童顔適正の無い俺でも可愛いと素直に思える。
俺は大分長い時間飛んでいた為、肉体的というより精神的に疲れていたので、特設ソファーでダラダラとしていた。
するとルカがお茶を用意してくれた。
「どうぞ。はい、シロちゃんも。」
シロはお礼を言うと、お茶をやたらフーフーしている。ウルフィナスは猫舌なのだろうか。焼きたての肉はがっついていたのに。
「ありがとう。そういえば、ルカは龍人族なのに飛べないのは何でなの?」
「龍人族でも空を飛べるのは、よりドラゴンに近い者達です。私は人族寄りなので、そもそも私には翼がありませんから飛べないのも当たり前ですね。」
やっぱりルカには翼が付いてなかったんだな。今は飛べるんだし、翼あったら寝にくそうだし良かったんじゃ無いかなと思う。
「当然なのは分かっていたのですが、昔はそれが悔しくて氷の翼を作ってひたすら練習していました。」
それが飛んでいた時に出した翼か。
「じゃあその努力が今に繋がったね。」
「はい。全てはハルト様のおかげです。」
努力が繋がったと言ったのに全部俺のおかげにされてしまった。まぁ、ルカがいいならいいか。
☆
その後、俺達は順番に(ルカとシロは一緒)風呂へ入り、寝る準備をしていた。
「明日も早いから早く寝よう。」
「はい。」
「はーい。ご主人様、オヤスミー。」
シロはオヤスミーと言いながらモゾモゾとルカの布団に潜っていく。三人分の布団用意してあるんだけどな。
ルカは特にそれをツッコむ事も無く、当たり前のように布団に入っていた。
俺も寝ようと毛布をめくったその時、突如魔力感知が働いた。
「ルカ!!」
俺が声を出すとほぼ同時に爆音が轟き、地響きが起きた。
野営用の家がグラグラと揺れ、ルカとシロが直ぐに布団を飛び出す。
サーチで周囲を確認すると二十メートル先に赤い点が浮かぶ。
「ハルト様、敵ですか?」
「ちっ、間に合わないか。」
赤い点は一気に家の傍まで移動してきた。外へ出て迎え撃つつもりが、これではルカに返事する暇さえも無い。
とりあえずは結界だな。
即座に家ごと結界を張る。するとすぐに結界へと攻撃がぶち当たる音が聞こえた。
「結界を張った。敵で間違いないだろうな。二人も念の為、戦う準備を頼む。」
俺は二人に準備を頼み、先に家を出て行くことにした。
魔力を練りながらドアノブを握り扉を押すと……。
「あれ?」
そこには何もいなかった。サーチで確認しても赤い表示は無かった。
しかし確かに赤い点はあったし、結界に何かがぶつかる音がした。
魔法を使った音や地響きもしたし。
「ご主人様-!いつでもいけるよー!!」
するとシロが家から飛び出してきて、シュタッとポーズを決める。
「あぁ、でも敵が消えたんだよね。」
「えー。戦いたかったなぁ。」
え?シロさんは戦闘狂タイプですか?
「ハルト様、転移でしょうか。だとすると……。」
「あぁ、転移だと奴らの可能性も出て来るんだよなぁ。」
念の為、サーチをかなり広げてみる。すると、猛烈なスピードで遠ざかっていく赤い点があった。
「あっ!見つけた!!ちょっと行ってくる!!!」
そう言い残して、俺は結界を出て全力で走り出した。