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5-5 新しい朝が来た




 それは俺達が野営した翌朝の出来事だった。



 普段は俺の肩にいるシロだが寝るときはいつもルカと寝ている。


 しかし、昨日だけは違っていた。


 シロは一人で寝たいと部屋の隅に移動したのだ。


 そして夜が深まり俺達が寝静まると、シロは大量の汗をかいて(うめ)いていた。


 それに気付いたルカと俺は慌てて起きてシロの傍に行った。


 鑑定で状態を見ると発熱と出ただけで、特に他の異常は見られなかった。


 ルカの作った氷水で冷やしたタオルで、シロの汗を拭い、回復魔法をかける。


 小一時間ほどそれを続けるとシロは少し落ち着いて、再び眠った。


 俺達もシロが寝たのを見届けた後、布団へと入った。布団をシロの傍に移動させて。


 



 そして、朝が来た。

 

 



 目が覚めて、そこで見た物は。





 デッカくなっちゃった!シロだった。





 どうしよう…………シロがおっきくなっちゃった…。


「シロ?シロだよな?母ちゃんの方じゃないよな?」


「顔つきはシロちゃんですが……まさか一気にこれ程大きくなるなんて……。」


 するとシロは俺をいつものようにペチペチと……いや、バシンバシンと叩く。


「いたっ!いたた!!やっぱりシロか!いきなりデカくなり過ぎだろ!!」


 シロは体が大きくなり、俺にダメージを余裕で与えるほど破壊力も身に付けたらしい。


 しかし、これは困ったぞ。非常事態だ。


「ルカ、困ったぞこれは。シロが大きすぎて、これじゃどこいっても騒ぎになる。肩にも乗れないし。」


 肩に乗れないどころか、これは俺が乗るサイズだぞ。


「そうですね。どうしましょうか。とりあえずシロちゃんお腹空いてそうなので、朝食にしませんか?」


 おぉ、ルカはいつでも冷静だな。ほんと頼りになるぜルカ姉さん。


 一旦落ち着くことにして、俺は朝食を用意する。

 

しかし、どれだけプーの串焼きをあげてもシロは一噛みで呑み込んでしまう。このまま与え続けたら頑張って屋台で手に入れた食料がすぐに底を尽きてしまう。


 これは満足させるには最低でも牛一頭は必要だな。


 俺は現状を打破する為に魔物を捕らえに行こうか悩んだ。だがそれでは対処療法のようなものであり、根本的な解決には至らないとも思う。


 しばし考えたが、現状を把握する為にもライフラインに手を伸ばす。オーディエンスはルカしかいないから、ここはテレフォンを使おう。


 神託の種のスキルでリスキア(久々だね)に念話を飛ばす。


『あー、あー、リスキア起きてるか?』


『……はい。ハルト、どうしましたか?』


『朝早くからすまないな。因みに昨日の俺達のこと見てたか?』


『いいえ、今は忙しく確認していません。』


『そっか。ちょっと相談があるんだ。知恵を貸して貰いたい。』


 俺は昨晩からの一連の流れを説明する。シロが熱を出して、朝起きたらおっきくなっちゃった!までだ。


『……そうでしたか。では質問しますが、ウルフィナスの子は直前に何かと戦いましたか?』


『ん?あぁ、それなら昨日突然現れた素早いゴーレムを仕留めてくれたよ。因みに名前はシロだ。』


『それが原因で間違いないでしょう。ウルフィナスの子は経験値を得て成長したのです。』


『そんなに一気に成長するものなのか?因みにシロな。』


『人族はレベルが上がると身体能力が上がりスキルレベルが上がったりもします。魔物も同様ですが、魔物には更に進化があります。様々な派生があり、例えばゴブリンで言えば、レッドゴブリンやゴブリンキング、スキルを持つ者はゴブリンアーチャーやゴブリンナイトなどの特殊なゴブリンにもなります。しかし、ウルフィナスには進化がありません。なので限界はありますが、体躯が大きくなり、そのまま単純に強くなっていくのです。そして、その相手(ゴーレム)が強者であり、より多く経験値を得た。その為にウルフィナスの子は進化の代わりに大きく育ったのでしょう。』

 

『なるほどな。しかし、共に旅をするのにあのサイズだと目立ちすぎるし、弊害が多すぎて困っているんだ。シロと離れるのは嫌だし。因みにシロだぞ。』


『確かに余り目立っていると、どこかにウルフィナスを知る者がいないとも限りませんから安心出来ませんね。人族は魔物だと思っているでしょうから、Sランクの魔物を使役しているとなると大いに騒がれるでしょう。……でわ、魔法で小さくしてみては?永遠にとは行かないでしょうが、場面に応じてでもよいのではないでしょうか?』


『そんなことが可能なのか?』


『それはマジック・クリエイトを持つハルトが一番よく知ってるのではないですか?』


『……わかった。俺なりに何とかやってみるよ。突然済まなかったな。』


『いいえ、私もハルトがあの子を大切に想っているのが分かって良かったです。それでは引き続き頑張って下さい。』


『あぁ、また氷の極地へと着いたら連絡する。』


 そういってライフラインの一つ、テレフォンは終了した。答えは四択では無いが、何とかするしかないな。


 とりあえずルカに報告しよう。


「ルカ、今リスキアに連絡取って聞いてみたんだけど、シロは普通に成長しただけだって。」


「そうでしたか。安心しました。」


 まぁ、確かに安心はしたな。


 ウルフィナスは余裕で五メートル以上あった。シロは三メートル位だからまだまだ大きくなるんだろうな。

 

「一応アドバイスももらったんだが、何だかね。」


「どんなアドバイスですか?」


「シロを小さくしろって。」


 俺の率直な考えだけで言えば、折角成長したのだからそれはしたくない。

 ルカにそれを伝えるとルカも同意してくれた。


 食後のお茶を啜りシロの背中に寄り掛かりながら俺は頭を悩ませ続け、やがて一つの案が浮かんだ。


 それは人化だ。


 シロには悪いが俺の弟として生きて貰おう。そうすれば全て解決する。

 あとはシロの気持ち次第だが。


「シロ、シロが良ければ何だけどさ…魔道具で人族に変身出来るようにしたいんだ。そうすれば食料問題も解決する。それに街にも入れるし宿にも泊まれる。会話だって出来るようになるかもしれないし。外せば元の姿に戻れるだろうし。どうかな?」


「確かに良い案ですね。私もシロちゃんと会話がしてみたいですし。」


 するとシロは寝ながら俺に頬ずりしてきた。これはOKってことだろう。


「よし、じゃあそれでいこう。」


「はい。ところで、魔道具にする素材はあるのですか?」


 そうなんだよ。そこからなんだよね。


 でもやると決めたからには必ず創ってやる。

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