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5-2 張り付く気配



 ムーバルを出た俺達は高高度を飛んで人目に付かぬように移動を続けていた。


 思ったよりも飛行を続けるのは魔力を使うようで、ルカが少し辛そうにしていた為、休憩を取ることにした。


 どこか休めそうな所は無いかと探していると、森の中にちょっとしたスペースが空いていたのに気付いた。


「ルカ、あそこで昼休憩にしない?」


「はい、ハルト様。」


 降下しながらサーチで見たところ周辺には人や魔物もいなかったのでそのまま着地した。


「あれだけ飛んでいても顔色一つ変えないなんて、流石はハルト様ですね。」


「ルカも二回目なのに普通に飛んでるから凄いけどね。はい、ルカの分。」


 息は切らしているが、本当に凄いと思う。ルカは色んな才能がありそうだな。


「ありがとうございます。」


 ルカへちょっとピリ辛だが上手い謎肉スープとサンドイッチを渡す。

 シロにはプーの串焼きを5本あげた。


 ルカは上品にスープを冷ましながら食べ、シロは焼きたての熱さを全く気にせずにバクバクと齧り付いている。


 ふたりとも可愛いなぁ。


 食事を終えてお茶を飲んでいるとシロはすぐに寝てしまった。まだ子供だから仕方ないか。


 すると、向かいに座っていたルカが隣に移動して、バッグから何かを取り出した。


「ハルト様、宜しければ使ってください。お気に召すといいのですが。」


 なんと人生初の女子からのプレゼントだった。しかもそれがルカのような美人さんからなんだから感動だ。


 包みを開けると中には地味すぎず派手すぎないクールな印象のズボンや服が入っていた。

 地球ではコスプレと言われそうだが、ファンタジーなこの世界だと間違いなくカッコいい服だ。


「プレゼントなんて初めて貰ったよ!めちゃくちゃ嬉しいよ!!早速着させてもらうね!」


「よかったです。ムーバルで丈夫な服を探していたら見付けました。」


 ルンルンしながら着替えてみると、馬子にも衣装といった感じだった。普段自分に自信の無い俺でも似合ってる感じがする。着心地もいい。


「これは宝物になるなぁ。」


「ふふっ、大げさですよ。」


 ルカも俺の喜ぶ様子を見て微笑む。でも大袈裟じゃなく俺にとっては宝物になった。


「マジック・クリエイト。」


 俺は優先順位で間違いなく一位の効果を付加することにした。

 俺がマジック・クリエイトを使ったのに気付いたルカが質問をする。


「何を付加されたのですか?」


「ん?この服に形状維持されるように付加したんだ。これなら燃えても破れてもすぐに元に戻るかなと思って。」


 本当なら絶対燃えないし破れない最強の衣服になるようにしたかったが、それだと最強の防具よりも頑丈な最強な素材にするということになるだろう。

 となると、まず普通の衣服に付与できる限度を越えているのは間違いないので、元に戻る衣服に留めた。


「大切にして下さって…ありがとうございます。」


 ルカは俺の肩に頭を寄せてお礼を口にする。お礼を言いたいのはこっちなんだがな。


「ハルト様…私はハルト様と出会えて幸せです。」


「俺もルカと出会えて、こうして傍に居られて幸せだよ。」


 すると目を覚ましたシロが頭に這い上がってきてペチペチと頭を叩いてくる。


「シロとも出会えて嬉しいよ。」


「私もシロが大好きですよ。」


 たまにはこういうほのぼのとしたのもいいなと思いながら、俺はこの時間を大切に過ごした。


☆ 

 

 休憩を終えた俺達は再度出発しようとしていた。


「ルカ、おんぶしてってもいい?その方が魔力の節約になるし、もし急遽戦うことになった時ルカが疲れてたら困るしさ。」


 俺は気付いたのだ。おんぶが無くなる寂しさに。じゃなくて、そうすれば節約になることにだ。断じて噓では無い。


「宜しいのですか?」


「もちろんだよ!!!!」


 俺は即答し、ルカを背中に乗せた。シロはルカの背中に移動してしまったが仕方ないな。


 すると飛び立つと同じタイミングでムーバルの丘で感じた僅かな気配を俺は察知した。


 またか。…つけられているのか?


 即座に気配察知に意識を巡らせ、サーチもフルに使う。だが、怪しい者を発見することは出来なかった。


 手練だろうか。

 勘違いでは無いはずなので、間違いなく何かがいる。このまま氷の極地へと向かって良いのかとモヤモヤした気分でいるとルカが俺の変化を察知した。


「ハルト様…どうかしましたか?」


「うーん。」


 それにしてもルカはめちゃくちゃ鋭いな。飛び出してからスピードを落とすこと無くそのまま飛んでいたはずなんだが。


「ムーバルでも有りましたが…何か気になっているようでしたら、私にも教えて頂けませんか?微力ながらお手伝い致しますので。」


 秘密にしていたワケでは無いのだが……。

 確かに話さないでいる必要もない。というより話しておいた方がいいに決まってるか。


「実はムーバルの丘でルカと歩き出したときに、僅かだけど殺気のようなものを感じたんだ。それがさっきもあったんだよ。気のせいでは無いと思うんだけど、サーチや気配察知を使っても引っ掛からないんだよ。」


「そうでしたか。となると私達についてきている可能性がありますね。」


「そうなんだよ。だからこのまま氷の極地へと向かって良いのかと悩んじゃってさ。」


「そうですね……ハルト様のサーチにもかからないとなると何かありそうですね。」


 とりあえずは氷の極地までまだまだ距離はあるので、このまま進んだ先でそれでもついてくるようなら手を打とうという事になった。


 とりあえず今俺が出来ることは振り切るべくスピード全開で飛んでいくことだ。



 昼過ぎから飛びっぱなしで5時間程経っただろうか。流石に疲れてきたので、そろそろ夜を明かす場所を決める為にルカに話す。


「この付近の事は分かる?」


「いえ、さすがにこれ程遠くまでは訪れたことがありません。」


 確かに街道と呼べるものも無くなってきた。人が管理している範囲を越え、大分僻地まで来たようだ。

 これから町を探して向かうのは無理そうなので近場で野営することにした。


 飛びながら良さそうな所を探していると、長かった森林が終わり草原へと変わっているのが見えた。


 森を越えてすぐの所を野営地に決めて、土魔法で耕して周囲の雑草を埋め平らにした後、石のイスを作る。


「ルカはどんなものが食べたい?」


「ムーバルの屋台の物は何でも美味しかったので、何でも大丈夫です。」


 とりあえず腹ごしらえしようと考えルカに聞くと、何でも良いという難問が返ってきた。


「じゃあ、これにしよう。」


 屋台のやつじゃなくて、ヤナタお薦めの食堂だったキネウマという店の料理を振る舞うことにした。

 ビクサールにはどの料理がどの店のものかは聞き取り済みだ。抜かりは無い。


 俺も同じキネウマの肉野菜炒め定食の様なものにした。


「ハルト様、美味しいですね。」


「ムーバルの料理は当たりばっかりだね。」


 すると長旅で疲れて寝っぱなしのシロが起きて、晩御飯をねだるように足をペチペチとしてきた。


「シロはまたプーが食べたい?」


 するとシロは言葉が分かるのか首を振る。とうとう好奇心が湧いて来る年頃になったかシロよ。


 試しに野菜も摂取させようとネギマの様な串焼きを差し出すと、綺麗に肉だけを食べていった。

 肉食なのかな。


「シロちゃん、お残しは駄目ですよ?」


 シロはルカに叱られると渋々ネギのようなものをかじり始めた。

 シロの人間らしい一面に驚きだ。これが躾ってやつか。


 俺が感銘を受けていると再度気配を感じた。しかし今回はサーチに引っ掛かった。


 同じ人物の気配のような気がしなくも無いが、何となく違う感じもする。


 いい加減鬱陶しくなってきた俺は勢い良く立ち上がった。膝に乗せていた食べ途中の料理があるのを忘れて……。


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