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4-12 ルカの挑戦




「凄い…流石はハルト様ですね。」


 私はハルト様の指示に従い魔物の排除に向かったが、ハルト様の魔法により、溢れていた魔物が四割程まで減っていた。


 地面は抉れ、魔物の死骸がそこかしこにあった。私は魔物の亡骸へと呟く。


「可哀想ですが、敵を見誤りましたね。」


 そして獲物を見つけて喜ぶ弱い魔物達へ津波を起こし呑み込むと、それを凍らしていく。たったそれだけで私の周囲に魔物はいなくなる。


 ハルト様のお陰で前よりも大分強くなれた。…でもまだまだハルト様の隣に立つには弱すぎる。


 空を見上げるとハルト様が敵と対峙している。かなり距離は開いたが、ハルト様が時折こちらをチラチラと気にしてくれているのがわかる。

 思わず念話を使ってみたい衝動に駆られたが、邪魔をしていけないと我慢した。


「ふふっ、ハルト様は本当に優しい方です。でも大丈夫です。この程度私一人でもやってみせます!!」


 前へと向き直り魔物達を見詰める。生き残りは高ランクの魔物ばかり。だけど、不安はない。


「ムーバルには行かせません。一匹足りとも。」


 まだ四千近い魔物がいる。中にはAランクパーティーでも勝てない魔物もいるでしょう。

 

 だけど、今は全く負ける気がしない。


 この戦いは私の目標には低すぎる。


「空駆ける氷精よ。地混ざる水精よ。我が意志に沿い、何人も逃さぬ壁となれ。水氷対壁(コルチューナ)。」

 

 攻撃魔法ではなく、全ての魔物を囲うように破れぬ氷の壁を生み出した。出口は私のいる場所のみ。


 ここで全ての魔物を迎え撃つ。


「ハルト様に敵対するのならば……それは私の敵です!!」


 私の魔力に反応して魔物達は続々と咆哮を上げる。直ぐ傍で目に付くだけでも、初めて見る魔物や高ランクの魔物がいる。


 ロードバル、ギガイーサ、ブラウイーター、ゴヌ…。


 Aランク、Bランクの魔物達が地響きを起こしながら迫ってくる。

 どこからか溢れ出る自信を確信に変えるべく、私は戦う。



「…遍く生ける吹雪の精よ、凍土を統べし氷精よ、仇なす魔の源を絶つ力を与えよ。白氷武装。」


 いくら成長したとはいえ、ハルト様の補助魔法無しでは本来の氷の鎧の姿となるかと思っていたが、ネックレスのおかげでまたドレスを着ることが出来た。


 怖くない、少しも。


 胸元で輝くネックレスを両手で包み、想いを込める。


「ハルト様の足手纏いにはなりませんっ!!私は私の力を持ちます!!!!」


 私の決意の叫びを掻き消すかのような音を立てて一匹目の魔物が飛び出してくる。


「…まずはギガイーサですね。」


 長い戦いの幕開け。最初の魔物はAランクのギガイーサだった。


 その姿ははち切れんばかりの筋肉が分厚い赤色の皮膚に包まれた巨体。そして力のある者程大きくなる三本の捻れた太い角。


 この魔物がAランクなのは巨体から繰り出される圧倒的な破壊力だけではない。

 瞬発力と対応力も並みの魔物の非では無いが、何より厄介なのが群れで生活をしていることだ。

 ギガイーサが単独で動く事はないのだという。


 ということはギガイーサの群れがあるということ。


 すると挨拶だと言わんばかりに、巨体からは想像も出来ない早さでこちらへ大きな拳を突き出してくる。


「白氷刀。」


 白氷武装を使った際に生まれる薄く頑丈な剣を背中から抜く。


 空中に飛び出し体を反って拳を避ける。

 そして、背に掠める腕を体を捻りながらカウンターで斬り付けた。

 すると、少しでもダメージを負えば良いと思っての軽い攻撃が、ギガイーサの太い丸太のような腕を切り落とす。


「クギャーーー!!!!」


 予想外の出来事にギガイーサは腕を抑えて丸まってしまった。するとやられたギガイーサを庇うように五体のギガイーサが前へ出て来た。


「五体ですか。さぁ、おいでなさい。」


「クギャグーーー!!!!」


 歯を剥き鋭い眼差しで睨みながら三体同時に走り出すと、残りの二体はその後ろに続く。


 ギガイーサは地面を殴り付けると、地面が割れて崩れていく。そしてその衝撃が迫ってきた。


「良いスキルですね。」


 足元が安定している内に空へと飛び出そうとすると、これを待っていたと他のギガイーサが迫る。


 一体は私の空中での動きを封じ込める為に飛び出し、もう一体は足を掴みにかかる。


 でも今の私は空中でも自由に動ける。


 空中で速度を上げ、二体のギガイーサの更に上を行き、すり抜けざまに氷の鞭で拘束する。

 

 すると今度は違う魔物の鳴き声がした。ギガイーサ達はやられた仲間を背負い後退する。


「クルフルゥーーーー!!!!」


 するとギガイーサを飛び越えて、次の魔物が飛び掛かってきた。


 それはロードバル。グリフィンの愛人と呼ばれるこの魔物は鶏の頭に鹿の角。体の上半身は獅子で下半身は蛇である。


 所謂(いわゆる)キメラであるが、この魔物は魔法も使うし身体能力も高い。

 そしてその角は魔剣をも砕くと言われるほどの硬度があり、弱点が無く万能、王国の騎士団もロードバルが現れたら戦争だと思えと教えられる程の魔物だ。


 グリフィンのように空は飛ばないが、その移動速度は計り知れない。


「ロードバル。相手にとって不足はありません。」


 私を串刺しにすべく、頭を下げ巨大な二本の角を前に押し出し、フェイントを混ぜながら飛び出してくる。


「龍飛剣・一閃!!!」


 お父様が得意としている剣技を放つとロードバルは角で受けて後退する。


「まだです!龍飛剣・白蒼!!!」


 私が一閃をアレンジして生み出した剣技は氷の刃となり、横凪の剣閃に沿って突き進んでいく。


 そしてロードバルの角とぶつかると、グラスが割れるような軽い音を鳴らしながら弾ける。

 

 ロードバルはどうだと言わんばかりの表情だが、この剣技はここからだ。


 白蒼をうけた角は突如白い靄に包まれる。ロードバルは頭を振り回すが靄は溶けること無くどんどんと濃くなっていく。


「クルッフルゥーー!!!!!」


 怒りの表情でこちらを見据えたロードバルへと追撃を仕掛ける。


「龍飛剣・破断!!」


 ロードバルの真っ白に凍結した角目掛けて放った剣技は角に触れた瞬間に爆散し、四方八方へと刃を生み出す。


 刃を受けた頑丈な角は、白蒼で凍り付き脆くなり、破断の無数の刃に耐えられずボロボロと崩れ落ちていった。


 ロードバルが角を失い混乱しているところへ、ロードバルごと私を狙った高速のブレスが飛んできた。


 何とかギリギリ回避するが、白氷武装が欠けて袖が破けてしまっていた。

 

「ヒュードラ…。」


 巨大な川や湖に棲息する二つの首を持つAランクの魔物。


 水龍とよく間違われるが実際は水蛇であり、先程のブレスもドラゴンの固有スキルのブレスでは無く、高圧水流だったようだ。


 しかし、水蛇だからと舐めてはいけないと聞いたことがある。何せドラゴンを狩ってしまうこともある程の強さと獰猛さを持っているのだから、と。


「珍しい魔物ばかりですね。」


 ヒュードラの吐く高圧の水流へと魔力を流す。


「我が鎧に纏いし氷精よ。迫る水の源を凍てつかせよ。氷結羅反!!!!」


 まるで時間が停止したかのように高速で迫っていた筈の水が静止し、その先からどんどんと凍てついていく。


 やがてヒュードラの吐く高圧水流へと辿り着いた氷結の移動はヒュードラの頭部を呑み込み頭部を氷像へと変える。


 まだまだ、戦いは始まったばかりだ。

 

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