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4-10 急襲



「ハルト様。」


 ルカに起こされて目を覚ます。


 ルカの甘い髪の香りが鼻をくすぐる。軽く俺の肩に触れ、優しく俺の名を呼ぶ。なんて幸せな時間なのだろうか。


 ふわふわとした意識の中で聞くルカの声も可愛い。


 しかし、ルカの声色がいつもと違う感じがして慌てて体を起こす。

 すると空はまだ暗く、出立するにしては早過ぎる時間だ。


「どうした?」


「なんだか胸騒ぎがして……すみません。」


 これからの旅に不安を感じてしまったのかな?とも一瞬思ったが、ルカはそんなことでは俺を起こさないなと思い直して、サーチを使う。


 しかし、周辺に異常は感じられなかった。更に魔力を込めてサーチを使い、街全体を確認するが異常はない。


 俺が感じた違和感ならば気のせいで済ませただろう。しかし、ルカとなると話は別だ。信頼を寄せているので絶対に何かあると確信する。


 あまり広げ過ぎると魔力を食うので、範囲を限定してサーチの距離を伸ばす。


 すると、二方向目である北西でサーチの10キロ程先が真っ赤になった。


 サーチは敵や魔物を赤く表示するのだが、表示が点では無く真っ赤に染まるのは初めての体験だった。


 ネックレスで身体能力が強化されてるとはいえ、ルカに索敵で負けるとは。疲れて良く寝ていただけだから、悔しくなんかない。


「北西に約10キロ。かなりの数だな。何が起きてるか分からないが、油断せずに準備しておこう。」


「はい、直ちに。」


 俺は未だに初期装備の目立たない服装しか持ってない為、直ぐに用意が終わった。

 強いて言うならシロをルカのベッドから剥がして肩に乗せた位だ。


 ルカもパジャマ姿から直ぐに戦闘用の衣裳 (インベントリにしまってあげてた)に着替えて準備は完了した。


 外に出るとまだ暗く、通りには人の姿は見られなかった。


 魔物があんな大量に向かってきているのに、誰一人として気付いていないようだ。


 そのまま街の正門近くまで辿り着いた時、突如法螺貝を吹いたような音が響く。

 法螺貝の音が止むと、見張り台の上の兵が叫んだ。


「北西方向に魔物の群れだっ!!兵を集めろ!!ギルドにも連絡だ!!」


 正門の直ぐ脇にある兵の待機所から兵が走り出していく。


「魔物の群れ…か。そーゆー事って結構あるの?」


「大規模な群れに強いリーダーが誕生するとごく稀にあります。もしくは、強い魔物に住処を奪われて群れごと追い出された先に人里があったりすることもあります。しかし、そういった場合多くても百体程度かと。」


 ルカの話によると、かなり低い可能性らしい。怪しんだ方が良いかもしれないな。だって百とかのレベルじゃなかったのだから。


 クロトワは一年後に世界は終焉を迎えると言っていた。それまでは来ないような発言だった。だが実際のところやっぱり気が変わったからとか言って、いつ来てもおかしくない。


「クロトワやその仲間が絡んでるかもしれないから、慎重に行こう。」


「はい。」


 俺達が動きだそうとすると、背後から声がかかる。 


「流石にはえーな。」


「ピクルスか。」


「ビクサールだよ!!!」


 声のした方を向くとレーヴの四人がいた。


「モナの魔法で調べて貰ったら、魔物の群れが妙なんだ。有り得ねぇことに群れの中で複数の種類の魔物が確認出来た。しかも高ランクが多数混じっている可能性大ときたもんだ。はっ…魔王でも目覚めたんかな。」


「なるほどな。で、お前らはどうするんだ?」


「俺等はムーバルを死守する。逃げ出せば助かるかもしれねぇけどな。だがこんなんでもトップクラスの冒険者だ。やるときゃやるってところを見せてやらぁ。」


 良い奴だなピクルス。


「分かった。だがやる気満々の所悪いが少ししたら広範囲魔法を使うつもりだから、誰も前には出さないようにしてくれ。もちろんお前らもな。その後は好きにしろ。」


「……分かった。お前らの強さは知ってるからな。従わねぇで巻き込まれるのはごめんだ。」


「じゃ、任せたぞピクルース。」


「ビクサールだっつってんだろ!!!てめぇわざと間違えてんだろ!!!」


 俺達が走り出すとギャーギャー喚きながらも最後には「死ぬなよ!!」と叫んでいた。やはりあいつは良い奴だ。


 俺達はAランクの冒険者でも容易く置いていくであろうスピードで走って行く。もちろん俺もルカもまだまだ全力ではない。


「ルカ、飛べそう?」


「やってみます。」


 そういえば気にしたこと無かったが、ルカは翼が生えているのだろうか。服の下に隠れてるのかな。


 そんなことを考えていると、ルカは走りながら強く地面を蹴り空中に向かって飛び出した。


 すると、途中で氷の翼が背中から生えてスイスイと飛んでいた。


「まぢか、一回目なのに。流石はルカだなぁ。」


 俺もルカに続いて空へと飛び出す。


「ルカ凄いな!俺は結構練習したんだぞ!」


「はい、ハルト様のおかげです!」


 ルカの実力まで俺のお蔭になってしまったぞ。全くもって謙虚な娘だ。


「うわっ、凄い数だな。」


 上空から見るとそう遠くないところに大量の蠢く魔物の姿が確認出来た。


 地上から確認出来なかったのは、まだ丘の向こう側に魔物達がいたからだった。

 恐らくは一万匹位いるんじゃないだろうか。


「いくぞ!!」


「はいっ!!」


 見えた魔物達の中にはピクルース……じゃなかった。ビクサールの言うように高ランクが確認出来た。

 見ていると中ランクが一番多く低ランクが少ないのは行軍中に潰されて死んでいったからのようだ。


 飛行出来る魔物が少ないのはまだ良かった点ではあるけど、Aランクの魔物一匹がAランク冒険者パーティーじゃないと勝てないって事は、確実に街は滅ぶな。


 大分近付いたからか、俺達に気付いた魔物が騒ぎだし様々な攻撃を仕掛けようと魔力を練っている。

 俺は前方へ障壁を創り、とりあえず攻撃を防ぐ準備をした。


「少し鑑定しただけでもAランクの魔物が複数確認出来た。目立つけど強めに行こう!!」


 草原で聖教国軍と戦った時のように複合魔法でいこうと伝えようとすると、シロがぺちぺちと尻尾で背中を叩いてきた。

 

 あまり自己主張しないシロがこんな時にどうしたんだろうと振り返る。


 するとシロは魔物の群れよりも遥か後方、遠くの一点をじっと見つめていた。


 そこにはまだ何も見えていないにも関わらず。


 微動だにせず、まるでそこになにか(・・・)いるかのように。


「ルカ!何かくるぞ!!!」


 突如強大な魔力を感じて声をあげる。

 しかし大量の魔物へ魔力感知が働いていて、詳細を把握できずにいた。


 すると……。


「ハルト様!上です!!!」


 そこには俺達よりも高い高度から、巨大な隕石のように燃える岩石の塊が一つ。


「……ちっ!!」


 早過ぎる。これだけの魔法にも関わらずほぼノータイムで放ってきやがった!!


 避ければ街もクレーターの一部になるだろう。知った上でのこの魔法か。


「上等だぁっ!!!!」


 あの街には弄りがいのあるビクサールやその仲間たち、ヤナタ親子もいる。見捨てることなんて出来ない。


 俺の大切なものは俺が守ると決めたんだ!!!

 

 何処の誰かは知らないが、俺の心に熱い炎を焚きつけた事を後悔させてやる!!


「マジック・クリエイト!!!」



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