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4-9 春に笑う月



「マジック・クリエイト。」


 ルカは俺の居場所を知りたいと言っていたが、それだけではちょっと足りない気がしたので、リスキアからヒントを得て念話を追加で付けることにした。

 というか、俺の場所だけじゃ無くて索敵にも使えるようにサーチを付与すればいいんじゃね?

 と思いサーチと念話をネックレスに付与してみる。


「むー、……容量オーバーか。」


「駄目でしたか?」


「いやっ、ちょっとやり直してみる。」


 やはりサーチと念話じゃデカ過ぎたか。念話が曖昧だったのかな。

 じゃあ、俺だけとの念話に限定してみよう。それとサーチもやめてハルトサーチにしてみよう。これならイケるかな?


 マジック・クリエイトでイメージを生み出し付与する。すると鑑定で見てみると、上手くいっていた。


 その後、試しに回復魔法を付与してみたが、これが限界のようで成功しなかった。


 鑑定結果をまとめてみるとこうだった。


 ブルーアクラ(亜神(チート)改)


 ・水属性上昇

 ・氷属性上昇

 ・魔力上昇

 ・魔力量上昇

 ・身体能力上昇

 ・限定サーチ (ハルト)

 ・限定念話 (ハルト)


 となった。チート改ってなんや。


「お待たせ、終わったよ!」


 俺は付加された効果を全て説明していく。すると、ルカは少しポカーンとしていた。確かに異常な程の付加だよな。


「こんなに高価なネックレスを頂き、そして付加効果まで付けて頂きありがとうございます。……大切にします。私の宝物です。」


「喜んでもらえたなら、頑張った甲斐があったよ!」


 ルカは心から嬉しそうに、ネックレスのブルーアクラを手で抱きしめるように包み込む。

 プレゼントは上手くいったようだ。


 残りの残金は銀貨四枚しかないが、どうにかなるだろう。


「あっ、忘れてた!」


「どうしましたか?」


「ルカの靴にも付与したかったんだ。買おうと思ってたんだけど、気に入ってたみたいだから。それに付与する感じでいいかな?」


「はい、ありがとうございます。」


 ルカの靴は良い靴らしいから付与出来るんじゃないかと考えていたのを忘れていた。

 

「あの、どんな効果を付与して下さるのですか?」


「空を飛べるようにしようかなぁと思って。」


 ルカは今まで氷で足場を作ったり、短い距離なら強い脚力で飛んでいた。

 しかし、移動となると不格好にルカをおぶさっていたし、何より戦闘時も更に有利に進むのではと考えていた。残念な気持ちが無いと言えば嘘になるが。


「マジック・クリエイト。」


 魔力を込めれば俺と同じように飛べる靴を作るべくイメージする。

 

 多少の練習は必要かもしれないが、ルカならきっとすぐ使えるだろう。


「終わったよ。」


「ありがとうございます。疲れていませんか?」


「大丈夫だよ。」


 本当は少し怠い。連続でマジック・クリエイト使いすぎた。燃費悪いからなぁ。

 

「ルカは急いで出たい?それとも大分日が落ちてきたから、明日の朝に出る?」


「ハルト様もお疲れでしょうから、明日にしましょうか。」


「じゃあ、今日は宿にでも泊まって、明日の朝出発で決まりね。」


「はい。シロちゃんもお腹空いてそうですしね。」


 はっ。いかん、また忘れていた。いつも俺の肩でくつろいでる風景に慣れてしまって、ついついシロの事を忘れてしまう。


 俺達は公園を後にして、宿屋探しを始めることにした。

 先程ヤナタ親子にジュエリーショップの場所を聞いたついでに、念の為宿屋も聞いておいたので大体の検討はついている。


「ここ…だよな。」


 俺達は教えて貰っていた宿屋‘春風(はるかぜ)亭シオウタ’に着いた。

 しかし、そこにあったのは宿屋と言うには立派すぎる造りの建物が建っていた。


「はい、確かにシオウタと看板には出ていますが……高そうですね。」


 高そう?そうかなぁ、まぁ安くは無いんだろうけどね。じゃ、ここでいいか。とか言える金があれば良かった。

 そんなことが言えるはずなく、俺はルカに謝って本当の宿屋探しを始めた。


「素泊まりの平均的な値段は幾ら位だか知ってる?」


「銅貨三枚から五枚程度かと思います。」


 さすがルカ姉さんだぜ。頼りになる。その位の値段の宿が見付かれば問題ないな、見付かれば。


 問題が有るとすればこの街に何件の宿屋があり、何部屋空いてるかだ。


 ここは困ったときの屋台のおっちゃんやおばちゃんだ。アホみたいに買い占めたから、顔を覚えては貰った筈なので遠慮無く宿屋の場所を聞く。


「この通りに安い宿屋なら二件あるよ!」


 との事だった。ありがとうおっちゃん。


 屋台のおっちゃんの言葉を信じて歩いて行くと、‘笑福(わらふく)亭ツルビ’という宿屋が出て来た。

 ちょっとボロいが贅沢するつもりも無いので(出来ないし)ここにしてみよう。


「すみませーん!」


「あー?なんだぁ?」


 俺が無人の受付で声を掛けると、かなり感じの悪い親父が出て来た。笑福亭の看板背負ってるクセに、笑いも福も無さそうな親父だ。


 客に対してなんだじゃねーだろと言いたい気持ちを飲み込み、糞親父に部屋は空いてるか聞いてみる。しかし、既に丁寧な対応は捨てたぞ。


「泊まりたいんだが、部屋は空いてるか?」


「あぁ?女連れか?だったら部屋はねーな。猿になる暇があんなら依頼でも受けてこいや。」


 くっ。爆破してやりてぇ。


 しかし、そんなことをしてはルカに器の小さい奴だと思われてしまう。ここは我慢だ。


 笑福亭ツルビが廃業することを願いつつ更に通りを進んでいくと、やがてもう一つの宿屋が見えてきた。


 その宿屋は‘月亭ホセイ’という宿屋だった。

 簡素な造りの親しみが持てそうな造りの宿屋だ。これは期待が持てるぞ。


 俺が戸を開けて宿屋へ入るとカウンターには恰幅の良いおばちゃんが出迎えてくれた。


「いらっしゃい!」


「突然すみません。泊まりたいのですが、部屋は空いてますか?」


「これはこれはご丁寧にねぇ…態度からして冒険者には見えないけど、こんな宿屋で良かったら使ってってよ!部屋に希望はあるかい?」


「ありがとうございます。では、ツインの部屋はありますか?」


「ツインは今いっぱいでねぇ。ダブルなら空いてるけど、どうするかい?」なんてことは無く、普通にツインの部屋を借りることが出来た。

 部屋が空いていたのは嬉しいけど、なんだか悲しい気持ちになるのは男の性か。


 カウンターの隣の扉は食堂になっていた。食事付きにするか聞かれたが、素泊まりにしてもらった。金は無いが食料はあるからな。

 因みに値段は良心的で銅貨四枚だった。おばちゃんの性格の良さは宿屋にまで現れていた。


 ルカとの間で明日の出立は早い時間にしようとの事で話は決まったので、インベントリから夜食を取り出して食べ、早々に寝ることとなった。


 もちろん、ツインルームなので別々に寝て、自分のベッドを出ることは無かった。


 シロはちゃっかりルカのベッドで寝ていた。


 羨ましいことこの上ない……。

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