表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/161

4-8 ムーバルの芸術




 ビクサール達と別れた俺達は買い出しに来ていた。


 インベントリがあるので、食材よりも出来上がった料理の方が直ぐに食べられるので、屋台でひたすら買い回っている。


 屋台でも俺ほどの大口の客は居ないらしく、眼をキラキラさせながらどんどん料理を作ってくれた。


「ルカ、お腹空いてる?これ美味しそうだから、少し食べてから他の買い出しに行こうよ!」


「はい。本当に美味しそうですね。」


 この世界の事が無知な為、素材は何を使っているのか分からないが、チャーハンのような料理だ。


 米に謎の野菜、謎の卵、謎の大きめの肉が入り炒められている。秘伝のソースとやらで普通のチャーハンよりも色は濃くなっているが、立ち上る湯気の匂いを嗅いだだけでよだれが出てくる。


 そして、他の屋台で買った、プーの串焼きというものを乗っけてルカに渡す。


 プーというのは養鶏のように、人族に飼われている玉のように丸々とした飛べない鳥らしい。

 シロはチャーハンよりもプーが気に入ったようで、一本食べ終わると手で俺の足をペシペシと、おねだりが止まらなかった


「はぁー!旨かったぁ。シロも気に入ってるし、こりゃ追加で大量注文しておかなきゃな!」


「美味しかったですね。ご馳走様でした。」


 ルカも笑顔で答える。シロは腹が満たされて、幸せそうに昼寝を始めた。二人とも満足してくれたようでよかった。


 俺は屋台のおっちゃんに追加で作れるだけ作ってくれと頼み、後で取りに来ると言い残し他の買い出しへと向かう。


 石鹸やタオルなどの生活用品も大量に買い、井戸で飲み水を大量にインベントリへ放り込んでいく。


 一通りの旅支度を終え、あとは俺の目標だったものが置いてある店を探すことにした。


「ジュエリー扱ってるお店の場所って知らないよね?」


「すみません。私が通った道では見かけませんでした。」


 すると、都合良くヤナタを肩車した父親を見かけたので聞いてみると、


「兄ちゃん!彼女いたのか?!やるなぁ!!!お姉ちゃん!兄ちゃんは最高に良い奴だからよろしくな!!!」


 とヤナタはルカに′彼女’という極大魔法を放った。既にルカの顔は燃え上がりノックダウン寸前だ。

 二人とも可愛いな。


 ヤナタとの話をすると、ルカはそんなんだから遅くなるんや!!とは言わずに、優しく微笑む。


「流石はハルト様です。ハルト様は本当に…。」


 とルカがステキな事を口にしてくれそうな時に、ヤナタが「姉ちゃん頑張って-!」などと言ったせいで、ルカは真っ赤な顔で黙ってしまった。

 ヤナタめ、やってくれたな。


 その後ヤナタ達にジュエリーショップ的な店の場所を教えてもらい、そこへと向かった。

 ヤナタが去り際に「すんごく高いってユンちゃんが言ってたお店だよね!」とか父親と会話してたのが気になる。


 ジュエリーショップっぽい店はムーバルの芸術という店だった。


「ハルト様は装飾品に興味があるのですか?」


 と、ルカが質問してきた。そうじゃないんだよルカちゃんや。


「俺のじゃなくて、ルカのを見に来たんだ。本当は一人で来てサプライズで渡す予定だったんだけどね。」


「私…の。宜しいのですか?」


「もちろん!プレゼントだから俺が選んでもいい?」


「は、はい!!もちろんです!!!」


「じゃあルカは入り口のイスでワクワクしながら少し待っててね!」


 自らハードルを上げてしまったが致し方ない。だって初めてのプレゼントなんだもの。


 俺は陳列されたアクセサリーを端から順繰りみていく。ネックレスや腕輪、剣や鎧に付けるオシャレなパーツ等様々な種類のものがあり、悩んでいると一つのネックレスへと目が止まった。


 ルカの瞳の色と同じ美しい蒼。

 サファイアよりも薄い色合いで、どちらかというとアクアマリンのような宝石だった。

 ルカの白い髪にもよく映えそうな蒼だ。


「よし!これに決めた!!!」


 俺は店員のお姉さんに渡すと、金貨六枚と銀貨二枚と言われた。

 この世界の生活水準から計算すると金貨が約十万円で銀貨一万円として六十二万。高ぇ…。


 今までの人生で使ったことの無い金額だが、決めた以上は金額で変えたくは無い。

 何となく貢ぐ君の気持ちが分かった気がする。


 残りは銀貨四枚(四万円)だが、本当に困ったら魔物を狩って売れば良いので大丈夫だろう。


「恋人へのプレゼントですか?」


「はい。」


「この宝石はブルーアクラといいます。海の女神アラクサラの愛の結晶と呼ばれ、少々高いですが、愛する想いを込めたプレゼントには最適な宝石です。」


「これにします!」


「はい、ありがとうございます!お包みしますか?」


「んー、一度取り出したいので簡単な箱なんかありますか?」


 するとお姉さんは要望通りに開閉式の箱に入れてくれた。銀貨一枚取られたが。

 ムーバルの芸術はネーミングセンスのわりに、ちゃんとしたジュエリーショップだった。


「ルカ、お待たせ!!」


 俺はルカの手を取り店を出る。手を取り歩く恥ずかしさよりも、大金を叩いた人生初のプレゼントでアドレナリンが大量に出ていた為、早く渡したい気持ちが勝っていた。


 そして、ジュエリーショップへ向かっていた時に見かけた樹や花々が植えられた庭園のような美しい公園へと辿り着く。


 ルカをベンチに誘導し、ネックレスの入った箱を取り出す。


「ルカ、旅に着いてきてくれてありがとう。お蔭で寂しくないよ。」


「いえ、私が望んだことですから。」


「俺が付けてあげるね。」


 俺はルカの後ろへ回り、箱の蓋を開けてネックレスを取り出す。

 そして、ネックレスをルカの首にかけて留め具を留める。のだが、緊張で手が震えて中々付けられなかった。


 何とか取り付けてルカの横に戻る。


「これは…ブルーアクラ…。」


 ルカは胸元で蒼く輝く宝石を見て感動したように呟く。

 愛の告白に用いられる宝石と知っているからか、既に顔が真っ赤だ。


「これにね…マジック・クリエイト。」


 俺はこれまで魔石に結界を込めて魔道具を作ったりもしたので、ルカにプレゼントを考えた時に何か付加を付けようと決めていた。

 

 魔石のサイズによって付与できる限界があった。といっても最大で二個までしか効果を付与出来たことがないのだが。

 魔石は限界を超えても壊れる事は無く、それ以上の効果が付加されることは無かった。


 上書きしてみようともう一度付与してもやり直しは出来なかった。


 なのでブルーアクラへ優先順位の高い順に付与していく。まずは得意な魔法の威力アップを狙って水・氷属性の付加。


 これは全く問題なく付与することが出来た。ブルーアクラ自体が水の属性にあたるからか、今まで感じたことが無い位すんなり入っていった感じがした。


 次は魔力アップだな。ついでに魔力量も上げた方がいいか。

 

 マジック・クリエイトで魔力・魔力量上昇をブルーアクラに付与する。


 付与してから思ったんだが、魔力は要するに魔法の威力に関係していて、ルカは基本的に回復魔法以外は水か氷魔法しか使わない。それだと魔力上昇って意味あるのかな。威力だけじゃ無くて、細かい技術的な部分にも関係したり色々あんのかな。

 などと、悩んでもどうにもならないことで悩んでしまった。あまり時間かけると、ルカに迷惑だから急がねば。


 鑑定すると二つ目もちゃんと入っていた。正確に言うと四つの効果だが。

 何が付与出来る容量に関係しているのかは色々やって調べてみないと分からないが、ブルーアクラは俺とルカにとって綺麗なだけの宝石では終わらなかった。


 無理だろうなと思いながらも更に付与を考える。

 防御力をあげようかとも考えたが、魔法の結界や障壁でルカなら瞬時に防ぐことも可能だし、もっと根本的なものを上げたいと考えて、身体能力上昇にした。

 上手くいけば多少は防御力も上がるんじゃ無いかな。


 結果…上手くいった。やるなブルーアクラ!


 では、次もやるしかない。んー、優先順位って難しいな。自分じゃないから尚更だ。これなら何を付加したいか聞いた方が良かったかな。


 そう考えているとルカが違和感を感じたようで話し出した。


「ハルト様…なんだか先程からすごく力が湧いてきているような感覚があるのですが、補助魔法ですか?」


 何か騒動でも起きるのかと、ルカが少し心配そうな顔をしている。ルカごめん。


「今丁度そのことでルカに相談しようと思っていた所だったんだ。そのネックレスに付加効果を与えていたんだけど、悩んじゃって。」


「ネックレスに…付加ですか。そんなことが可能なのですか?」


「うん、確実ではないけどね。どんな効果が嬉しい?」


「流石はハルト様ですね。……私は得意な氷属性をもっと向上させたいです。」


「それはもう付けたよ。それ以外に水属性と魔力と魔力量の上昇。あと身体能力上昇もつけたよ。他にある?出来るか分からないけど、どんな希望でも試してみるよ。」


「そ、そんなにですか?ありがとうございます!体が軽いのは補助魔法ではなく、ネックレスの効果だったのですね。どんな希望……でしたら私の希望はハルト様の場所が常に分かるようにして頂きたいです。」


「えっ。俺の場所?」


「は、はい!」


「そんなんでいいの?」


「それが良いです。勇者ランスロットが里へ来たとき…生きた心地がしませんでした。ですから、私はハルト様を感じていたいのです。それが安心に繋がります。も、もちろん居場所を知って欲しくない時は外すようにします!」


 居場所を知って欲しくない時ってなんだろう。まぁ、ルカがそれで安心出来るならそうしよう。


「じゃあ、ちょっと待っててね。」


「はい。」


 ルカは幸せそうに微笑み頷いた。




 やべぇ…まぢ可愛い…。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ