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4-7 自己紹介拒否権




 俺は土の中から這い出て、ルカの前に出る。


「そんな…出られる筈が無い…。」


 遠くで魔女っ子がなんか驚いてるが、とりあえず槍使いが風を纏う槍を突き出そうとしている。


 俺は手を薄い結界で包み、直ぐさま突き出してきた槍を掴み取る。


「ふんっ。手が千切れるだ…け……馬鹿な…!」


 槍使いは槍を離さなかった為、俺が持ち上げると身体ごと浮き上がりジタバタとしだした。


「俺は忙しいんだ。早く換金しなきゃいけないんだよ…っと!」


 喋りながら、ビクサールの方へと槍使いを投げ付けると重なるようにビクサールの元へと飛んで落ちた。


「ルカ、ありがとう。急いだつもりだったんだけど、色々あってさ。」


「いいえ、私も暇を持て余してただけですから。ハルト様と居られる今の方が嬉しいですし。」


 ルカはこんな状況でも恥ずかしそうにしている。中々の肝っ玉の持ち主だ。


 するとルカに吹き飛ばされて転がっていたビクサールがサッと起き出し、こちらへと歩み寄る。


「なんだ?まだやるのか?忙しいと言ってるだろうが。」


「いいや……そこの見事な蹴りをくれた龍人のお嬢さん。どっかで見た気がするな。」


「私の名はルカシリア・クラウドバル。ハルト様に仇なす者は全て排除します。」


「クラウドバル…。やはりグナシアさんの娘か。」


 グナシアの知り合いか?だとしたらギタンギタンにしないで正解だったか。


 ルカがグナシアの娘だと知ると、先程までの態度が噓のようにビクサールは気さくな態度で話し掛けてきた。


 俺もこの旅はグナシアの許可を得ていると言うと全て鵜呑みにして信用してくれた。

 まぁ、まだやるならボコボコにするからなと脅しはしたが。


「すまなかったな。ハルトって言ったか?もっと早くグナシアさんの知り合いだって言ってくれればいいものを。」


 こいつはアホなのか?誰彼構わずにグナシアの知り合いですなんて言う筈がないだろうに。


「お前らは冒険者なんだよな?」


「あぁ。俺達はレーヴだ。これでもAランク冒険者をやっている。」


「Aランク……ねえ。」


 これは本当に金色のハルト行けそうだな。


「悪かったな。これでAランクで。仲間を紹介する。弓を持ってるのがエルフのラナンだ。弓でラナンの右に出る者はこの辺じゃいねぇな。」


「ラナンよ。先程はごめんなさいね。」


 美人エルフさんは丁寧に頭を下げた。やはり伝承通りお胸は小さいようです。


「槍を使ってるのがルークスだ。俺の幼馴染みで頼りになる男だ。」


「ルークスだ。俺の槍を素手で止めたのはハルトが初めてだ。また今度手合わせしてくれ。」


 嫌です。面倒くさそうです。


「そして、小さいのが魔法使いのモナ。元々王都の魔法騎士団にいた程の魔法のスペシャリストだ。全て捨てて冒険者になる夢を叶えた変わりもんだけどな。だがモナの魔法は本物だ。」


「私もあんな簡単に抜け出されたのは初めて。今度魔法について話し合いましょう。」


 嫌です。モナさん私に魔法使ったんですよ?標的にされそうなので嫌です。顔は可愛いけど童顔過ぎるし。


「最後に俺だ「あっ、名前知ってるんで大丈夫です。」別にいいじゃねーか!ひでぇ扱いだな!お前くらいだぞそんな扱いしてくんの!」


 ビクサールは意地になって自己紹介し、いじけながらも色々なことを話してくれた。


 ギルドから依頼を受けたが、危険な所をグナシアに救って貰った話や、俺をここまで怪しんだ理由などだ。


 ここの所魔物が活発化しているだけでなく、グナシアが魔王等と巫山戯た噂が出回り聖教国がグナシアを捕虜にしたとの話を聞いて、急いで他国から戻ってきたところらしい。

 グナシアが簡単にやられるはずがなく、魔族か魔王か、いずれかの陰謀に違いないと考えていたら、人族に見えない強さの人族がいた為、怪しんだようだ。


 グナシアは解放して、聖教国の件も既に終わっていると伝えるとビクサールは安心していた。


「しかしなぁ。グナシアさんが強いのは知っていたが、娘さんもここまで強いとはなぁ。不意打ちとはいえ、受け身も取れなかったぞ。流石は龍人族だな。」


「私やお父様などハルト様の足元にも及びません。お父様の知り合いでも、死にたくなければハルト様に敵対しないことです。」


「あぁ、早とちりだ!悪かったよ。実際勝てる気なんかしねぇしな。」


 ビクサールはルカの勢いにお手上げと言った状態だ。


 その後ビクサール達は謝罪の意味も含めてなのか、冒険者ギルドでの魔物の素材の換金にも付き添ってくれることになった。


 冒険者ギルドの受付のカウンターへと共に行き、ビクサールが話を付けてくれた。

 Aランク冒険者が一緒なので信用の度合いが違い話がポンポンと進んでいった。


「えー、それではハルトさん。魔物をこちらへお願い出来ますか?」


 受付嬢をやっている人族のお姉さんが丁寧に言い、俺はそれに従って魔物を取り出す。


「おいおいまじか…インベントリ使えるのかよ。しかもいきなり黒石鳥ねぇ…流石はハルト様だな。」


 妬みから嫌味をビクサールは言ってきた。しかし、ルカの冷たい視線を浴びてすぐにシュンとなっていた。


 黒石鳥がBランクなのは群れる事がなく常に単独で行動するから比較的戦いやすいかららしい。しかしBランクだからと嘗めてかかって殺される者が多いらしい。

 危険度も高い上に分布が狭く滅多に取れないそうで高値での買い取りとなるようだ。ラッキーだな。


「黒石鳥はどこで見付けたんだ?」


「太古の森でたまたま戦ったんだ。」


「太古の森か……よく二人だけで狩れたな。」


「ん?太古の森にいたのはルカと出逢う前だ。」


「は?」


 ビクサールは太古の森を一人で歩き回っていたのを知ると俺を白い目で見る。


「さ、流石はハルト様だな。」


 それでも馬鹿にしてくる度胸があるから、Aランク冒険者になれたのかな。


 肉はフォル爺と食べてしまったので、残った物だと毛皮と爪と頭が売れるらしい。

 毛皮はレアなので高額買い取り間違いないのと、強烈な脚力の攻撃にも耐える爪は武器への加工が高ランク冒険者に人気なようでこれまた高額らしい。

 嘴も同様に武器として加工するだけでも高額らしいが、黒石鳥の立派な漆黒の鶏冠が貴族に人気で、頭を剥製にした方が高値で買い取ってくれるようだ。


 ビクサールのおかげで無駄なく黒石鳥が捌けた。Aランクの知識は伊達じゃないようだ。


 その後、余っていたラットコベットなどの素材を売り冒険者ギルドを後にした。

 売値は全部で金貨六枚と銀貨六枚だった。


 こんなことならもう少し魔物を狩っとけばよかったな。金はいくらあっても困らないし。インベントリがあるから銀行要らずだし。


「この後はどうするんだ?」


「旅仕度するための買い物かなぁ。」


「旅って、どこまで行くんだ?」


「えーっと、なんだっけな。北の大地?」


 すると、ルカが直ぐにフォローしてくれた。


「ハルト様、氷の極地です。」


「氷の極地って……本気か?」


「本気だ。そして面倒いからこの話はおしまい。」


「ハルトは冷たい奴って言われないか?」


 ビクサールが最後に何か言っていたが、俺は華麗にスルーした。


「じゃあ、忙しいからまたな。皆さんも頑張って下さいねー!」


「だからなんで俺だけ扱いがぞんざいなんだよ!!」


 ビクサールがまた一人で騒いでるのを無視して、レーヴの皆に手を振って分かれる。


「ハルト-!俺達は当分この街を拠点にするから、いつでも来いよー!」


 ビクサールは悪い奴じゃなさそうだ。

 本来Aランク冒険者なのだから、こんな扱いされないだろうが怒ることもなくいじられてくれた。本当は嫌いじゃないぞ、ビクサールよ。


 

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