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4-6 ヒロインは遅れてやってくるんだってばよ




 俺は異世界を楽しんでいたのを邪魔されたことよりも、この定番な悪役が現れた事にさらに興奮していた。


 ここでなんて言い返したらカッコいいか考えていると、男達は勘違いして笑い出した。


「ふははははっ!こいつビビりすぎて声も出せねぇぞ!!いいか、俺らが居る時は直ぐにギルドから出てくんだぞ?目障りだからな!!!」


「そうだぞ!俺達はCランクのブルーファングだ!ブフンさんはブルーファングのリーダーだ!!!逆らうと冒険者やってけねぇぞ!!わかったか!!!」


「んー、そもそも俺は冒険者じゃないからどうでもいいですけど。」


 駄目だ!ギャフンと言わせるどころか敬語になってしまった!初対面だとついつい出てしまう時がある。リラックスしてないと尚更だな。


 すると、俺の態度が気に食わなかったようでブルーファング(Cランク笑)のリーダーのブフンはスキンヘッドに青筋を浮かべながら怒鳴り声を上げだした。


「てめぇ舐めてやがんのかっ?!!!世の中の厳しさを教えてやるから表に出やがれ!!!!」


 敬語だったのにこんなにキレるなんて失礼なやつだな。ぶっ飛ばしてやろう。ムカつくし。


 そう思い大人しくついていくと、ギルドの外に出たところで声をかけられた。


「子供相手にムキになるなよ。そんなんだからCランク止まりなんだ。」


「あぁ?てめぇ誰に向かっ…………。」


 振り返ると一人の男が立っていた。

 180センチ程で逆立つ栗色の髪。盗賊やってますって言われても何の違和感も感じさせない鋭い目つきだが、パーツが整っている為、男前で迫力がある。


 ブフンの様子を見る限りだと有名なやつなのかな?まぁ強そうな気配は感じられるな。


「誰って、お前しかいないだろーが。そいつが絡まれる要素が見当たらなかったんだが……それでもやるつもりなのか?」


「…くっ。……今日はこれから依頼が入ってるからな。今回は見逃してやらぁ。お前等いくぞ!!」


 子分ぽい奴らを連れてブフンはドカドカと去って行った。何かブルーファングは冒険者というより完全にチンピラだな。やはり冒険者にも色々なやつがいるんだろう。


 すると迫力男前が話し掛けてきた。


「お前……何者だ?」


 迫力男前は威圧感満載で迫力を示してきた。現状か弱き被害者っぽい俺が何故か怪しまれている。

 やはりこいつは中々の実力者のようだ。大分場になれてきたせいかリラックスしてきた。というかなんかワクワクイライラする。


「冒険者とやらは失礼なやつしかいないのか?聞く前にまず名乗るのが礼儀だろ。」


「確かに。…俺はビクサールだ。冒険者をやっている。で、お前は?」


ハルト(まだ金色じゃない)だ。」


「名前は分かった。何者なんだと聞いてんだ。」


「別に何者でもない。ただの人族だ。金が無いから魔物を換金しに寄っただけだが何か?」


 するとビクサールの雰囲気が変わった。最初から威圧感だけ(・・)はあったが、今はいつでも本気で戦える状態へと変えたようだ。


 さっきの雑魚ならともかく、こいつと喧嘩すると目立ちそうで嫌だなぁ。

 暴れた為に金が用意できなくなり買い物できませんでした。なんてルカに報告したくないし。

 面倒くさいのはごめんだ。


 するとブフンとの騒動の時から集まり始めていた野次馬の中に三つの気配を気配察知が感知した。


「ちっ、只者じゃねーな。」


 俺がビクサールの仲間に気付いた事を知ると、ビクサールがぼやく。そして、仲間達は堂々と前へ出て来た。


「ビクサが本気で警戒するなんて異常事態ね。」


 声の主を見て俺は驚愕した。


 そこにはなんと…背丈ほどの大きさの弓を背負った美人エルフがいたのだ。ファンタジー万歳!!


 美人エルフを見た俺が固まっていては更に怪しまれると思い、悔しいがビクサールへと視線を戻す。あまりに残念だ。


「質問がある。俺の目を見て答えろ。」


 ファンタジー万歳と心の中で万歳三唱していると、ビクサールは本気の遣り取りを始めてきた

 面倒くさいなぁと思っていると、ビクサールの目に魔力感知が働いたので、マジック・クリエイトで魔法を創り咄嗟にレジストする。名付けてそのまんま抵抗(レジスト)だ。


 まさかレジストされるとは思いもしなかったようでビクサールは驚きの表情を浮かべ即座に剣を抜いた。

 剣は珍しい形の曲刀で、業物っぽい。


「ラナンは俺の援護だ!ルークスは背後へ回れ!モナは詠唱開始しろ!」


 おいおい。何故こうなった。俺はまだ何もしてないぞ。


「お前魔族か?巧妙に隠してるみてぇだが、人族がそんな濃密な魔力持ってるわけがねぇ。」


 中々の観察眼をお持ちのようだ。鑑定のスキルでも持ってるのかと思い逆に鑑定をしてみると、看破という嘘を見破るスキルだった。


 なるほど。その為にわざわざ質問しようとしていたのか。


「…てめぇ。今何かしやがったな。」


 スキル欄には魔力感知は無かったはずだが、豊富な経験が僅かな違和感を感じ取ったのだろうか。

 クズ勇者の言うとおり鑑定は気を付けて使わないといけないな。余計怪しまれてしまった。


 気付けば野次馬はビクサールの一声で逃げ出すように去っていった。


「次に変な真似したり、動けば容赦しねぇ。正直に質問に答えろ。お前は本当に人族か?」


 この質問はあかんやつや。今の俺は正確に言うと人族ではない。マッチレスヒューマンだ。


 看破のスキルを使ったと思われる魔力を感知した。

 仕方がない。なるようになるだろ。


 俺は抵抗(レジスト)を使い看破を無効にさせた。

 

「それがお前の答えか。何もスキルが通用した時の答えが全てじゃねーんだぞ。」


 ビクサールの言葉が終わると、モナと呼ばれていた魔女っ子っぽい魔法使いに魔力感知が働く。先程詠唱していた魔法を完成させたようだ。

 俺の足元に魔力が集まり、魔法が発動される。


 すると、土で出来ていた足元が突如泥になって靴が汚された。普通に抜け出そうとしたら更に泥は深さと柔らかさが増して、ズブスブと下半身が埋まってしまった。


 これはクリーニング代を請求しなくては。


 巫山戯た事を考えているうちに、今度は地面がカチカチに固まりだして下半身を固定されてしまった。


 普通の土なら俺の身体能力があれば容易く出られるだろうが、魔法の効力で硬くなっている。

 

「どうだ。抜け出せねーだろ。観念したか?」


「馬鹿を言え。」


 俺が言い返すとビクサールは曲刀を首目掛けて横凪に振るう。短気な奴だな。


 どうしようか未だに決まってないが、とりあえず曲刀は捌いてここを抜け出して街の外へ連れ出そうかなぁと考えていると微かに俺の名を呼ぶ声がした気がした。


 空耳かな?と思ったが、目の前で曲刀を振っていたビクサールが弾き飛んで行ったのが見えて直ぐ気付いた。


「は、ハルト様!!大丈夫ですか?!」


「あははは…ありがとう。大丈夫なんだけど…。」


 思っていたよりもルカが早かったのか俺が遅かったのか。まだ換金さえしていないのに、ルカと遭遇してしまった。


「だけど…どうかしましたか?」


「まだ…換金出来てないんだよね…。遅くてごめん。」

 

「とんでもないです。私も任せっきりでしたし。」


 美人エルフはビクサールに巻き込まれて倒れ込み、魔法使いはビクサールの方へと既に退避していた。


 ルークスと呼ばれていた槍使いはルカを敵とみなしたようで、まだ俺達の会話は続いているのに風を纏う槍を突き出してきた。


 

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