4-4 おんぶで空を飛ぶってダサい…よね?
俺とルカは滝壺裏の洞窟を抜け、森を飛んでいる。ルカを背負いながらだ。
ルカは走りましょうか?とか遠慮していたが、ダンジョン踏破もどれだけ時間がかかるか分からない。
その為、時間の無駄をしたくないと伝えて乗って貰った。
しかし、俺は最近気付いたことがある。
至る所が柔らかいルカを背負いながら飛ぶのは嬉しいのだが、かなりダサくね?ってことにだ。
「ルカ、済まないが少しだけ寄り道して買い出しとかしておきたいんだけどいいかな?」
「はい。それでしたら…この先に王都ほどでは無いですが、街があります。」
「じゃあ、そこにしよう。」
ルカに案内して貰い、人がいないのを確認してから街の近場の森に降りる。あまり近くに行って、俺が乗り物になってるの見られたくないからな。
「よし、ここからは歩いて行こう。」
「はい。」
「ルカのその靴は何で出来てるの?」
「この靴はリーガルダイルという魔物の革を編んだものです。丈夫ですし、結構大きな魔物なのでたくさんの防具が作れるので里では重宝されていました。中々見付からないのが難点でしたが。」
話によると、黒いワニのような姿をした魔物らしい。買ったものではなく里の皆で作るそうだ。
本当は靴をプレゼントしようかと考えていたが、これ以上のものは中々売ってないらしいのでやめることにした。
「どんなものを買っといたらいいか分かる?」
「そうですね……。」
俺はルカに必要になりそうな物を教えてもらいながら、街に向かって歩いていると、サーチに魔物がかかった。
同時にシロが尻尾で後頭部をぺちぺちと叩く。流石はちびウルフィナス…末恐ろしい子だ。
魔物はまだ距離はあるが、真っ直ぐこちらに向かってきているようだ。
「ハルト様。」
「あぁ、こっちに来てるな。」
最初は一つだった魔物を示す点が、今は三つに増えている。
目をこらすと巨体を揺るがせながら走ってくる人型の魔物が少しだが見えた。
次見えたときは鑑定で見てみるか。
すると、三体とも同じ魔物であった。
「どうやらB+ランクのストローガという魔物のようだ。三体いる。」
「ストローガ…オーガから派生した亜種ですね。オーガと身体能力はそこまで変わりませんが、オーガに比べて知能が発達していると聞いたことがあります。ランク的にはハルト様の敵ではありませんね。」
しかし、何故こっちに向かってきているんだ?俺のサーチよりも優秀な索敵能力があるのかな。
「恐らく、この先の街へと向かっているのだと思います。」
なるほどね、さすがは名探偵ルカだ。
「となると、邪魔されたくないから止めようかな。」
「はい。では、先に打って出ます。」
ルカは一気に走りだしてしまった。寂しいから俺もルカの後についていく。
そしてすぐにストローガとエンカウントとなった。
「……止まりなさい。」
「オオオァッ!!!」
ルカの言葉を無視してストローガが棍棒を振り回す。
あの棍棒の速度ではルカは容易く捌いてカウンターをくらわせてしまうだろうと思ったが、ルカは軽く回避しただけで距離を取るだけだった。
「この先には人族の街しかない。貴方達の向かうべき場所ではない筈よ。」
何故かルカはストローガに話しかける。どうしたんだろう。
しかし、ストローガはルカの制止を聞かずに棍棒を振り上げた。
「氷の枷で捕らえよ。アイスフース。」
ルカが魔法を唱えると突然ストローガがジタバタとしながら倒れ込んだ。
手足が氷の手錠のようなもので固定されている。
「ロックハンド。」
俺は空気を読み、後続の二体の動きを止める。
「ハルト様、ありがとうございます。ストローガ達、これ以上進むというのなら殺さねばなりません。ここを去りなさい。」
「オオオァッ!!!」
言葉の意味が分かるかどうかは分からないが、ストローガ達は敵意満々な声で暴れる。
「ルカ、遠ざけさせるだけでいいの?」
「そう…ですね。」
「覇王の威圧。」
俺は便利な威圧でストローガ達をビビらせる作戦に出ることにした。
すると、暴れていたストローガ達が大人しくなり頭を抱えて震えだした。
「やり過ぎたかな。」
「いいえ、助かりました。ありがとうございます。」
ルカは魔法の拘束を解き、震えるストローガ達に再度訴える。
「住処に戻って、ゆっくり子供を産みなさい。」
あれ?ルカが下ネタか?!と思ってドキドキしたが、一番後ろのメスのストローガを見るとお腹が大きくなっていた。
んー、サーチに頼るだけだと、物事の本質が見抜けないものなんだな。
ストローガ達は解放されると、トボトボと来た道を戻っていった。
「妊娠していたんだな。よく気付いたね。」
「はい。恐らく住処を追われたのでしょうが、ストローガが逃げ出す程の魔物となると…困ったものですね。」
「確かにな。まぁ、とりあえずは街に向かおうか。」
そうしてストローガとの騒動があったが、その後は何も無く俺とルカは街に辿り着いた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
俺達は街の正門へと辿り着いた。
街を囲う塀は厚い石造りで、思っていたよりも立派だった。門は木で造られ、開け放たれた門の前には門兵がいた。
「通行証の様な物は必要なのか?」
「大丈夫です。銅貨一枚で一週間は自由に出入り出来ます。」
「ふーん。案外不用心なんだな。」
「王都となると別ですが、ただの街だと敵は殆どが魔物ですからその程度です。」
これだけ立派な街だと、他国からのスパイが入り込んで情報を仕入れ放題な気がしなくも無いが、まぁその辺りは異世界クオリティーなのだろう。
俺達は門兵にインベントリから取り出した銅貨三枚を渡して、代わりの通行証をもらう。
シロの分もしっかり取られた。
「俺は必要なもの買い集めておくから、ルカは自分の欲しいもの買ったりしてきて。昼ご飯は一緒に食べたいから、二時間後にまたここでいいかな?」
「はい、分かりました。」
俺には見せにくい買い物とかもあるかもしれないので、気を遣って別行動を取ることにした。
資金が少ない為、ルカに持っている全財産を渡して俺は金の工面からスタートだ。




