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4-2 グナシアの陰謀




「ふわぁー。朝かぁ。」


 俺の横では、シロがうつ伏せでまだスヤスヤと眠っている。まだまだ子供だな。


 とうとうスカイガーデンを出立する日が来てしまった。寂しくなるなぁ。

 でも、今回の旅立ちは一人じゃ無い。ルカと一緒だから、不安感が全然違うな。


 そんなことをボーッと考えていると、ドアをノックする音が響いた。


「ハルト様、起きてらっしゃいますか?」


「あぁ、起きてますよ。」


「朝食の準備が整いましたが、如何なさいますか?」


 今日は珍しくルカではなく、使用人っぽい人が来た。


「直ぐに行きます。」


「かしこまりました。では、失礼致します。」


 急いで身支度を整えて、部屋を出た。


 豪華な朝食の並んだ部屋へと入るが、ルカの姿が見当たらない。


「グナシア様、マナシラ様、おはようございます。」


「おはよう!よく眠れたかい?かなり呑まされていたらしいが体調は大丈夫かい?」


「はい、眠れました。それに昨日のお酒も残っておりません。」


 あれだけ呑めば間違いなく酷い二日酔いで、旅立てずに寝て過ごすんじゃ無いかと不安だったが、やはりハイスペックなこの身体は二日酔いが起きないらしい。

 むしろ、どれだけ呑んでもほろ酔い程度で止まるという都合のよさだ。


「因みに旅というのは、どれ位で終わるんだい?旅が終わるまでは戻ってこないのかい?」


「用があったり、時間が取れれば里に顔を出すことはあるかと思いますが、中々厳しいのではないかと。旅は最低でも1年以上はかかりますね。」


「1年以上……か。」


 俺とグナシアが話していると、マナシラ様は忘れ物したようで自室にもどっていった。


 するとマナシラ様が居なくなったのを確認したグナシアが暗い顔をし、言いにくそうに話し出した。


「そういえばルカシリアの事なんだが……。ハルト君…申し訳ない。」


 え?え?なに、なによ突然。すげぇ怖いんだけど!何があったんだよ。何下向いてんだよグナシア!!!!


「ルカシリアは先に出ていってしまったんだ。俺は止めたんだが…無駄だった。本当に申し訳ない。」


 出て…いった?ルカが俺を残して旅だった?


「どういう……ことですか?」


 俺が戸惑いの余り言葉を詰まらせていると、マナシラ様がスパーンッとグナシアの頭を叩いた。


「戯れも度が過ぎてるわよ。」


「え?」


 最早意味が分からない。何が起きている。


「ハルト君、ルカシリアなら先に朝食を終えて皆に出立の挨拶に向かっているわ。」


「え?」


 だめだ追いつかない。パニクって脳が処理しきれないぞ。


「まてマナシラ。俺は嘘は付いてないぞ!ハルト君と朝食を食べてからでもいいじゃないかと確かに止めたし、先にこの家から出たのだって事実じゃないか!」


 なるほど。グナシアめ…謀ったか。


 すると、もう一度スパーンッといい音がした。


「ハルト君ごめんなさいね。この人こう見えて馬鹿なのよ。」


「あー、今日初めて分かりました。」


「な!?し、仕方ないだろ。娘が出てくんだぞ!一人娘だぞ!」


 あっ、グナシア開き直りやがった。まぁしょうが無いか。気持ちは分からんでも無い。


「ハルト君、気にしないでね。少しいぢけてるだけだから。さぁ、そろそろ食べましょう。」


「はい。」


 グナシアはふて腐れた感じで朝食を食べている。すると、丁度食べ終わったところでルカが帰ってきた。


「ハルト様、おはようございます。」


「お、おはよう!ルカ。」


 俺は突然昨晩の事を思い出してしまい、少し慌ててしまった。落ち着け俺。これから一緒に長い旅に出るんだぞ!!


「ハルト様、早めに出発した方が宜しいかと思うのですが、どうですか?」


「あぁ、じゃあそうしようか。今荷物取ってくる。」


 俺が荷物を取って戻ると、見送る為に屋敷のメンバーが既に集まっていたので挨拶をする。


「皆さんお世話になりました!」


「ハルト君、言うまでもないのでしょうけど…ルカシリアのこと頼んだわね!いつでも好きなときに帰ってきてちょうだい。」


「はい!もちろんです!」


 すると、先ほどまでいじけていたグナシアが笑顔で話し掛けてくる。


「ハルト君、さっきは悪かったね!冗談だから気にしないでくれたまえ!……絶対に無事に帰ってきてくれ。」


「約束します。」


 それぞれ挨拶を終えて屋敷のドアを開けると、里の皆が集まっていた。


「ハルト様-!!またすぐに来て下さいねー!!」


「ハルト坊!!!うまい酒持って来いよー!!!!」


「体に気を付けてなぁ!!!!」


「ムッツリ王子バンザーイ!!!」


 むむっ!!最後のは誰だ?戻ってきたら復讐してやる。


「皆さんお世話になりました!!!また直ぐに帰ってきます!!!それまでお元気で-!!!」


 俺が頭を下げ、ルカは手を振る。


 そして名残惜しいが振り返らずに里を後にする。


 しかし、少し歩いたところでグナシアが大きな声で俺を呼んだ。


「ハルトくーん!!!そういえばお礼がまだだったねー!!!里にはたいしたものが無いんだ-!!!変わりと言ってはなんだが、帰ってきたらルカとの挙式を用意するよ!!!!」


「お父様!!!!!?」


 グナシアはいたずらっ子のような顔をしながら手を振る。


 要するに死ぬなよってところか。まぁ、これじゃ簡単に死ねないな。


「グナシア様!!ありがとうございます!!!!」


 俺は大きな声で返事をすると、大歓声が湧いた。みんな下世話な話が好きだからな。

 

 グナシア様も親指を立てて、嬉しそうな顔で笑ってくれた。


「ハルト様……。」


 普段は雪のように白いルカの肌が真っ赤に染まる。皆の前なのにちょっと調子に乗りすぎたかな?


「……嬉しいです!!」


 ルカはまだ皆が歓声を上げながらこちらを見ているのにも関わらず、背中に手を回し抱き付いてきた。


 んー、まだ告白もしていないのに、婚約のような真似をしてしまった。

 でも、ルカも拒絶しなかったからラッキーだな。


 しかし、事ある毎に本当にルカは純粋で心まで綺麗なんだなぁと、しみじみ思う。


「ルカ、絶対に無事に帰ってこよう!!」


「はいっ!!ハルト様!!!」


 これから先にどんなことが待ち受けているかはまだ分からないが、俺はルカと必ず帰ってくる。あとシロと。


 俺は強い覚悟と気合いが入り、最高の気分で里を後にした。


 

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