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3-28 豊穣の女神 ナーナ・スシナ



 元豊穣の女神ナーナ・スシナは絶望感を味わっていたようだ。


「立ち尽くすナーナがその時何を考えていたのかは分からない。でも今思えば、あの時すでにナーナの中の何かが変わり始めていたのかもしれないわ。」


 やはり、ナーナは繊細な女神っぽいな。これはナーナが暴れ出すな。


「話を戻すわね。ナーナはその後、壊滅した村を呆然と歩いていたわ。すると、潰れてしまった一つの家屋の中から赤ん坊の鳴き声がしたの。ナーナはまるで縋り付くように走り出していた。」


 おや、少し予想とは流れが変わってきたぞ。


「瓦礫を丁寧に退かすと、まだ言葉も喋れない可愛い男の子が出て来た。ナーナはその子をその村で育てると言い出したわ。私達がどれ程説得しても聞く耳持たなかった。何を言っても、私の責任だからとしか返ってこなかった。」


 神が地上で人間を育てるとかすげぇーな。もしかして、その子供が怨んで邪神になったとかか?!


「ナーナはその子をプランと名付けた。気付けば私達は口うるさい邪魔者扱いされていたわ。全ての愛はその人族の子供に注がれていた。その時点で神からは堕ちていたから、他の豊穣の神と成り代わっていた。でも、一度も無いケースだったから、神々は皆戸惑いどうしようかと決めているうちに、少しの間放ってしまっていた。しかし、神々の世界と地上での少しは感覚が違っていて、気付けば15年の時が経過していたわ。」


 やはり神界と地上では感覚が違うんだな。俺が神界に言ったときは殆ど時が進んでいなかったが、リスキアの庭園は色々と違うのだろうか。


「プランは大きくなり、恋をした。隣村の可愛い生娘に。だけど、隣の村ではナーナの村を気味悪がり、二人の仲を良しとしなかったの。その娘も同様にプランを否定した。」


 やはりプランが邪神になるパターンのやつや。間違いない。


「そして、意気消沈するプランにナーナは励ましの言葉を送った。やがて時が彼を癒して、二人仲良く暮らしていた。」


 おぉ、いよいよ大詰めか。プラン邪神説間違いないなこれ。



「でもそれは長くは続かなかったわ。ナーナはプランに全てを話したの。元豊穣の女神だったことや、自分のミスで村を破滅させたこと。そして、実の母で無いことも。」


 駄目だよナーナ。優しい噓もあるんだよ。


「プランは微笑むとナーナを抱きしめた。そして、腰に携帯していたナイフをナーナの背に突き立てて言ったの。全てお前のせいだって。」


 なんてこった。悲しすぎる。悲しすぎるだろ。プランも男なら少しくらい懐の大きさを見せろよ。


「そうして、大切な人に裏切られ、愛する筈の人を殺してしまい、壊れてしまったの。ナーナがね。」


 ナーナの方なんかーい。


「ナーナの方なんかーい。」


 はっ!立て続けに予想が外れるあまり、心の声が口から漏れてしまった。しかも、どこかのルネッサンス貴族っぽくなってしまった。


「そりゃそうでしょ。さすがに人族の唯の村人に元女神が負けるわけ無いでしょ。」


 まぁ、確かにそうなんだけどな。それにしても悲しすぎる。


「その時、ナーナは以前の穏やかで心優しいナーナでは無くなった。心を黒く染めてしまったの……。直ぐに私達は彼女を探したけど、完全に見失ってしまった。」


 リスキアは本当に悲しそうに言う。


「彼女が次に現れたときには、邪神となっていたわ。全てを憎み、この世界を滅ぼそうとしていた。その時には既に三つの国が亡国となっていたの。神々は皆協力して、彼女をどうにか封魔石に封じる事に成功して、八つに割って神界の最奥に閉じ込めた。」


「それが邪神の欠片ってことか?」


「そう…だと思うわ。でも、そんな簡単に持ち出せるものじゃない。」


「他の神が裏切った可能性は?それと、邪神は復活したりするのか?」


「どちらも有り得ないわ。神が悪に手を貸したとしたら、その前に邪神となっているもの。あと、一度封魔石を割ったら二度と戻らない。だから、ナーナが蘇ることはないわね。でも、私達神々の誰かを殺せば、邪悪な者が邪神として君臨することは出来るでしょうね。」


 なるほどな。ランスロットの言っていた奴は、間違いなくそれ狙いだろうな。しかし、どうやって神界にある邪神の欠片を盗んだんだろうか。


 結局リスキアにそれを聞いても、分からないとしか返ってこなかった。


「今分かることはそれくらいかしら。私の方でも出来る限り調べておくわね!」


「あぁ、頼んだ。ところで、創造神の加護ってルカには与えられないのか?」

 

 これから一緒に戦うルカには是非とも欲しいところだ。


「ん~…。龍人の半分は人族なのよねぇ。ハルトは創造の種を受けたから人族は超越していたし、何より異世界人だからこちらの世界の定義に完全に当てはまるわけじゃなかったの。むしろ、予想外ではあったけれど、今のハルトは亜神みたいな存在よ?だから間違いなく与えることが出来たのだけれど。加護といっても私の場合、神の力を直接授けるようなものだから、今のままのルカちゃんだと耐えられない可能性が高いわ。」


「流石はハルト様です。」


 亜神は聞かなかったことにしよう。俺は人間を辞めていないんだもの。


 まぁそれだけの力がほいほい与えることが出来たら苦労しないか。

 それにしても賭けかぁ………うん、無いな。


 俺も補助魔法のようにして短時間ならルカに使わせる事も出来たし、問題があるとすれば回数に制限が有ることと、俺の居ないときがあったとしたらだ。


 すると、俺が諦めの言葉を発する前にリスキアが喋り出した。


「……創っちゃおうかしら。」


「え?」


「万能じゃないけれど、こう見えても創造神なのよ?ルカちゃんが私の加護を問題なく受けられる方法を創っちゃおうかなぁって!」


 そうか、こんなちみっ子な見た目だからついつい忘れがちだが、リスキアはお偉い神様なんだよな。


「そんなことが出来るのか?」


「勿の論よ!!!でも、全ては陰と陽から成り立っているの。だから、加護のように大きくプラスになるような内容程、取得するのが難しくなるわ。そればっかりはどうにもならないのよ。」


 まぁ、そういうものなら仕方が無いか。


「因みにどのような内容なのですか?」


 ルカが少し不安そうに口を開く。


「創造神の加護を授けるものなんて創ったこと無いから、他の神々と相談しなくちゃいけないからね。まぁ、一つの財宝扱いだろうから隔離するとなるとダンジョンになるでしょうね。しかも、超高難度の。」


 キターーーーー!!!!夢溢るるファンタジーの一つであるダンジョン!!どんなダンジョンなんだろうか……不思議な感じのダンジョンか?おらわくわくすっぞ!!


「わかった。そのダンジョンを踏破すれば良いわけだな。」


「そういうことね。とりあえずハルト達には氷の極地へと向かって貰おうかしら。ルカちゃんなら大体の場所は知ってるわよね?詳しい話はまた神託で連絡するわ!」

 

「わかった。ルカ、一緒に頑張ろう!!」


「はい!!頑張ります、ハルト様!!!」


 そうして、リスキアと離れた俺はルカとシロと共に氷の極地へと歩き出す……前に龍人の里に向かってたんだった。危ない危ない。


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