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3-27 神使


 


神使(しんし)


 それは神々が住む神界へと通ずる神道(しんとう)の入口を守る者。

 圧倒的な力で侵略者を排除するその魔物は、聖獣や邪神獣などと同様に、その怒り触れるべからず、とされている。

 



 その昔、とある魔王が、神々を殺し神へと成り代わろうと企んだ。


 そして、神使の元へ、1000の巨人兵を引き連れ現れた。

 

 しかし、魔王は直ぐに知る事となる。己の思考が如何に粗末であり、神使の力が如何に強大なものであるかを。


 引き連れた巨人兵よりも巨大な魔王は、神に成り代わるはずが、動かぬ巨大な肉塊に成り代わってしまったのだ。




☆ ☆ ☆ ☆ ☆




「あの子達は私の子供のようなものであり、守ってくれる存在でもあります。」


 リスキア(ウパの母)め。子持ちだったか。


 俺が巫山戯た妄想世界を旅してると更に詳しく話をしてくれた。


「神道は何ヶ所かありますが、そこにはそれぞれ神使がいます。人族にはSランクモンスターなどと呼ばれて恐れられているようですが、普通のSランクモンスターと呼ばれる魔物とは比べ物にはなりません。」


「普段は力を隠してて、それでもSランクだとかそーゆーことか?」


「まぁ、それもありますが、不穏な動きをする魔に染まった者しか、神使には手を出さないのです。神使もそうです。そして、神使には神力が備わっています。ですから、Sランクモンスターを簡単に倒せる魔王でも、神使と戦うとなると全く別の話になるのです。」

 

「なるほどな。じゃあ、なんで神使たちをクズ勇者との戦いに向かわせなかったんだ?」


「基本的に神使は神道を護るための存在です。神道を離れるわけにはいきませんから。それに、戦争をするために生み出した存在でもありません。ただ、今回はウルフィナスが子を産んだので、この子を借りてきたのです。」


 リスキアがそう言うと、40センチ程の白い生き物がリスキアの肩に現れ、俺目掛けて飛び付いてきた。


「ウフフッ、随分気に入られてるのですね。あっ、そういえばハルトに焼いたオヤツを貰ったと嬉しそうに言っていました。」


「モゴゴ……。」


 そういえば、焼いた虫を洞窟に置いてきた記憶がある。あんなデカイ虫がオヤツか。やはり、ウルフィナスは強いんだろうな。


 俺の顔に張り付いてきた子ウーパールーパーを何とか引き離すと、離せとばかりにジタバタと手足を動かす。


「こいつ話せるのか?」


「私となら話せますよ。……この子、ハルトに付いていくっていっています。どうしますか?」


 どうしますかって。凄いことをサラッと言ってくるな。


「うーん…でも目立ちそうだしなぁ。」


「ウルフィナスは太古の森の神使ですから、知る者は殆ど居ないはずです。役に立つと思いますよ。可愛いですし。」


 まぁ神使の子供だから、いずれ凄いやつにはなるんだろうけどな。


 すると、俺の手をすり抜けた子ウーパールーパーはペタペタと俺の背中を進み、肩の上に乗ると居心地の良さそうな表情で落ち着きだした。


「はぁ。わかった。」


「ウルフィナスには私から伝えます。その子も嬉しそうです。」


 子ウーパールーパーの尻尾が揺れている。喜んでもらえて何よりだ。


「そういえば、その子には名前がありませんので、ハルトが名付けてあげて下さい。」


 本来はウルフィナスが名前のようだが、子供が産まれるのは極稀で大体一世代で終わる為、個別の名前はつけないらしい。


 んー、プックル、チロル、ゲレゲレ……。


 突然言われても中々思い付かない。


 子ウーパールーパーだからコパ。


 うーん…ウルフィナスだから、ルフィ…。


「駄目だ。俺にはセンスが無い。皆無だ。ルカ、何か思い付かない?」


「可愛いので、愛らしい名前がいいかと…。」


 なるほどね。参考になったぜ!!!!


 じゃあ、可愛い名前にしよう。


「じゃあ、シロにしようかな。白いし……。」


「………シロ。良い名前ですね。」


 怒られるかとも思ったがそんなことは無く、ルカはシロに掌を寄せる。するとシロは肩からルカの手をペタペタと進み、抱っこされている。

 羨ましい。


 ルカは優しい天然なのかもしれない。


「あっ、時間切れです。」


 そう言うと、リスキアは光に包まれてアリスの姿になってしまった。


「どうしたんだ?」


「地上にいる時に神の姿で長時間は過ごせないのよ。」


 まぁ、それは分かるんだが何でアリスの姿になると口調まで変わるんだろうか。


「あと、邪神の欠片とかの話も聞いておきたいんだが。」


「そうね。まずは邪神という存在についてかしら。少し座りましょ。」


 そう言うとリスキアは、傍にあった切り株へと腰掛けた。俺とルカも座りやすそうな石の上へと腰掛ける。


 ついでに、インベントリーに収納しといたお茶も皆で飲もう。


「神界には私の他にも神が居るの。それぞれ役割は違うわ。」


「へー。あそこに皆で住んでるのか?」


「そんなわけないでしょ。あそこは私のプライベートスペースよ。まぁ、繋がってはいるけどね。」


 あそこから他の神の所へ行けるのか。どんな所でどんな神が居るのか興味はあるな。


「かなり昔の話だけど……豊穣の女神ナーナ・スシナという神が居たの。その神はとても心優しく、慈愛に満ちた神だった。彼女が神をしている内は飢饉なんて起きないし、地上は緑で溢れていたわ。」


 リスキア曰く、神とはいえ長い間それを保つのは相当な根気のいる作業らしく、しかも常に地上を管理していないと出来ない位の事らしい。


「しかし、彼女は長い間無理をし過ぎていたせいか、少しのミスをしたの。そのせいで一つの村が壊滅しかけた。」


「ミス?」


「そうよ。その村に豊穣の為の魔素を送りすぎて、実った穀物や野菜が魔物化してしまったの。」


「まぢか。」


 なんてこった。完璧主義っぽいが大丈夫なのか?大丈夫じゃないから話題に出てるんだろうけど。


「彼女も私と同様戦いは得意じゃ無いんだけれど、慌てて地上に向かって、自分の与えた魔素を操作してどうにか魔物の沈静化に成功したの。本来そのような事では地上に起こした事象を地上で操作するなど、許される事では無いのだけれど、真面目な彼女が起こした初めてのミスだったから動転していたのでしょうね。しかし、村は全滅してしまっていた。間に合わなかったのよ。」


 あっ、これヤバいパターンのやつや。自分追い込んで狂っちまうんじゃね?


 リスキアは少し言いにくそうに下を向きながら、続きを話し出した。


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