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3-21 創造神の加護




 ハルト様の暖かい魔法で、私は何時になく調子が良い。


 体は軽く、力が漲る。魔力の流れまで昨日とはまるで違う。


 ハルト様に力を与えてもらったら、まるで私の心を映し出すように魔法まで変わってしまった。


 凍華絶世や白氷武装。沢山の精霊さんの力を借りて、漸く使える私の最大の魔法。


 しかし、凍華絶世があんなに美しい大量の花を咲かせたことは一度も無かった。

 白氷武装は、本来は氷の鎧を身に纏い、バランスの取れた戦いが出来る魔法。それなのに、氷の美しいドレスになってしまった。


 しかし、今までの氷の鎧よりも何故か安心する。まるで、ハルト様に守られているかように。


 私はハルト様に恩返しがしたい。


 役に立ちたい。


 だから、私なんかでは魔王には敵わないとしても、ハルト様が少しでも魔力を温存出来るように。少しでも戦い安いように。全身全霊の力で立ち向かう。


 ハルト様の為なら、全てを捨てても…構わない!


「魔王オルガルフェルグ!今一度、暗い地の底へ帰るがいい!!!」


 私は氷の足場を空中に作り、駆け上がる。以前ならこんな武技は持ち合わせていなかった。

 でも、何故かそれが出来るというのがわかる。


 ハルト様は一体どういう方なのだろうか。


 神とも違う。でも、私の願いを叶えてくれる。


 希望。そう……ハルト様は私の希望。

 

「ヘヴィレイン!」


 農耕魔法が、まるで巨大な大瀑布のように流れて出す。更に攻めの手を止めること無く魔法を放つ。


「アイスホライズ!!!」


 ヘヴィレインで魔王を包み、魔王ごと滝を凍りつかせる。


「ヌォオオオオォォォーーーーー!!!!!!!」


 しかし、魔王オルガルフェルグは巨体で暴れ、その破壊力を持って凍りつく先から砕いていく。


 私は両腕を振り上げる。そして魔力を頭上にどんどん流し込んでいく。


「…………青氷の断罪。」


 作ったのは氷の杭。多量の魔力により、硬度も大きさも巨大な魔王だとしても充分。


 青白い巨大な氷の杭は魔王オルガルフェルグの心臓を目掛けて突き進む。


「オオオォーォーーーーー!!!」


 魔王は己の力に少しの疑いも無いようで、杭を打ち砕くべく、拳を打ち出した。


「でも……今の私にはハルト様がいるの。貫きなさい!!!」


 私の声が願となり、杭は更に勢いを増していき、魔王の拳を突き破ると、深々と胸に突き刺さった。


「ヌァォオオオオォォォーー!!!!」


 魔王は巨大な杭の勢いを逃がすこと無く胸に受けると、そのまま後ろへと倒れ込んだ。


「まだです!!!!……ウルアイスガルナ!!!」


 私は氷の鎖を作り出し、魔王を締め上げる。手足はもちろん、頭や胴体を地面に貼り付けるように。


 さらに、私はいつも使っている氷の剣よりも遙かに巨大な氷の剣を作り出す。


「ハァハァッ………これで終わりです!!…………凍刹一閃!!!!!」


「ヌォオオオオォォォーーーーー!!!!!!!!!!」


 魔王の額を狙って、私は剣技を放つ。 


 そして、魔王の巨大な頭部を剣が貫く。


 魔王は地面に張り付いたまま動かなくなった。


 私は、全力で戦った。


 そして、とうとう魔王オルガルフェルグを倒したのだ。



「ハアハアハアッ………………なっ?!」


 

 確かに胸を杭が貫き凍てつかせ、額を巨大な剣が貫いたのだ。


 それなのに。


 それなのに、魔王オルガルフェルグは私の氷の杭と剣を溶かして、貫いた穴を塞ぎ、動き出した。


「そ、そんな……。」


 これ以上、私の力ではどうにもならないのだろうか。


 漸くハルト様の役に立てたのだと、そう思ったのに。




☆ ☆ ☆ ☆ ☆



 空へ浮かび上がる数多の剣。


 クズ勇者はルカだけで無く、リスキアも標的にしているのだろう。


「本当はもっと楽しみたいんだけどね。僕も魔力に余裕があるわけじゃないからね。これで決めさせてもらうよ。」


 すると、ガタガタと音を立てて剣がクズ勇者の魔力に呼応して、震え始めた。


「因みにこれは魔法じゃなくて、魔剣が封印していた勇者の力を使ったこの剣専用の武技なんだよ!良いお宝を見つけたでしょー?」


 ケタケタ勇者は笑っているが、魔力の使いすぎのようで様子がおかしい。

 顔は血の気が引いているように青白く、冷や汗が流れ出ている。この技には相当な魔力が込められているようだ。


「あぁ、確かに凄い技だな。」


「アハハハハッ!でも全然諦めたって顔してないよー?むしろ、絶対に負けてたまるかっ!て感じだね!やっぱりハルトは最高だ!!!」


 確かに負けてたまるかとは思っているが、そんな簡単な心境ではない。


 二千本の剣にはそれ以上の数の魔法を放てばいいだけだが、前にルカは全力で氷の魔法を放ち、一本の剣を止めていた。

 しかし、あれだけの魔法じゃないと止められないとなると、流石に二千など放つことは出来ないだろう。

 

 せめてクズ勇者に苦手な属性でもあればいいんだが。氷や水でも簡単に蒸発させてくれるしな。

 前に光属性の混ざった雷光咆(ライトニングガン)使った時には、光属性は勇者には意味ないみたいなこと言ってたしな。


『ハルト!』


 時間にしては一瞬だが、俺が悩んでしまっているのに、アリスが気付き声をかけてくる。


『どうした?』


『私の加護を使って!!』


 加護?あぁ、そういえば神界から落とされる直前に、創造神の加護を与えるとか言ってたな。


 加護加護加護……自分の中にある創造神の加護を意識する。


『胸に手を当てて。淡く光る暖かいものを感じるはず。神力……聖なる神の力よ。光属性とは比べ物にならないわ!』


 言われたとおり、胸に手を当ててイメージする。すると胸に淡く光だけのものが、体中に行き渡るのを感じる。


『おおっ!これが…神力か。なんだか不思議な感覚だな。』


『そうでしょうね。本来は私の加護を授ける事なんて有り得ないんだけど、ハルトには想像していたよりも重大な仕事を頼んでしまったみたいだから特別ね。』


『それで、どうやって使えばいいんだ?』


『神力は聖なる力と言ったでしょ?魔と戦う為の力。勇者ランスロットや魔王と戦うにはこれ以上のものはないわ。』


 あれ?でもクズ勇者は光属性なんて無駄だとか言ってたけどな。

 

『勇者にも通じるのか?』


『えぇ。勇者ランスロットなら(・・)ね。彼は気付いてないのかも知れないわ。魔に落ちたことに。でも一つだけ注意して。私の加護は日に三回までしか使えないから。』


『分かった。やってみる。』


『ハルトなら出来るわ。神力を意識して、あとはいつも通りに戦えばいいにょよ。……………………頑張ってね。』


 アリスは、最後に噛みながらも応援してくれた。アリスになってもリスキアの少しドジっぽいところは変わらないらしい。


「…やっぱりね。ハルトは神の力を手にしていたんだね。だったら僕は……ここでハルトを殺して、神殺しへと一歩近づく!!!!!」


「ルカもアリスも誰も殺させない!!お前なんかには絶対に負けない!!!」


 みんなを守りたい。


 みんなに傷付いて欲しくない。


 クズ勇者なんかに負けたくない。




 俺は自分の高ぶる気持ちをクズ勇者へとぶつけ、創造(・・)を始めていく。

 

 


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