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3-20 破滅の焔魔



 

「魔王オルガルフェルグ?はっ。所詮、ただのマグマの固まりだろう?俺のパーティーなら間違いなく封印出来るぜ?1番相性の良い魔王だからな。」


 Aランク冒険者パーティーであるアイスクルーガーのリーダー、クルーガー・ビクトルは、ギルドマスターにそう言い残し魔王オルガルフェルグ討伐へと向かった。


 だが、クルーガー・ビクトル含め、アイスクルーガーのパーティーは、二度と帰ってくることは無かった。





 魔王オルガルフェルグ。


 それは、何の前触れも無く突然現れた。


 魔王が生まれる前兆である、魔物の暴走や凶暴化も起こらなかった為、突然の出現に世界は対応に追われた。


 腕のある冒険者に対応させるが、10組以上のAランク冒険者達に以来したのだが、帰ってきたのはたった一組だった。

 しかも、パーティーの回復職である者、一人だけ。


 大地が歩き、その道には何も残らない。全てが焼かれ、潰され、繁栄した都市が廃墟と化していく。


 まさに地獄のようだった。


 勇者ランスロットは獄炎邪王と呼んでいたが、当時はまた違った呼ばれ方をしていた。


 それは、破滅の焔魔。

 地の底から這い出てきた破滅の象徴となる者。


 魔王オルガルフェルグには敵がいなかった。

 まるで破壊神のような力を持って、数多の国を飲み込んだ。

 そして、他の魔王と違い、魔族や魔物を使役することはなく、単独で、通る道を焼け野原へと変えていった。


 巨人族が赤子のように見える程の体格を持ち、更に常時体を流れるのはマグマ。

 腕を振るだけで、マグマの雨が降り、そしてその巨体から繰り出す圧倒的な破壊力。

 なんとか、足止め出来る者はいたが、魔王オルガルフェルグの灼熱の体を突き破る破壊力を持つ者はいなかった。


 生半可な攻撃では、傷一つ付かないが、実力ある者が全身全霊放った技で何とか指を落としても、すぐにマグマが傷口を包み込む。

 すると何も無かったかの様に指が生えてしまうのだ。


 村が燃えていく。


 森が燃えていく。


 湖が蒸発し、


 国が炭となる。


 魔王オルガルフェルグが通った道は、唯々黒く、そして絶望しか残らなかった。


 


 その時代の勇者であるアルミナスも魔王オルガルフェルグに挑んだ。


 しかし、どれ程時間をかけようと、どれだけ全力で挑もうと、倒すことは出来ず、身も心も削られていく。


 だが、勇者アルミナスは諦めなかった。


 やがて、一人の賢者と一人の魔刀鍛治師と共に、一つの剣を生み出した。


 その剣の名は、魔封剣ヒュンティア。


 魔王を封じる為だけに造られた剣。


 それがヒュンティアだった。


 勇者アルミナスはその剣を背負い、急ぎ、魔王オルガルフェルグの元へと向かう。


 そして、長い戦いが始まる。


 斬り付けた箇所をマグマによる再生を抑え、やがて聖なる力を持つ魔封剣ヒュンティアへと封印していった。


「勇者アルミナス、私は必ず復活し、世界を滅ぼすだろう。」


 命をかけた熾烈な争いの末に、頭だけになりながらも最後にそう言い残して、魔王オルガルフェルグは封印された。


 勇者アルミナスの命と共に(・・・・)






☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 氷のドレスを身に纏い、氷の足場を使い空をかけていく。


 キラキラと輝く姿はまるで、踊る妖精のようだった。


「私は龍人王グナシアの娘、ルカリシア・クラウドバル!!魔王オルガルフェルグ!私が相手です!!!」


 やべぇ、ルカが可愛いのにカッコいい!!クラウドバルって家名だったのか!


 ルカは舞い踊るように氷の礫を飛ばしていく。大したこと無さそうな氷の礫だが、魔王へと着弾すると、爆弾でも投下したかのように爆発していく。


 大千凍々という魔法は補助魔法になるのか?ルカは俺が雷を生むような魔力操作で、どんどん魔力を凍てつかせ、そのまま放っていってるように見える。


「グォオオオオォォォーーーーー!!!!!!!」


 何十発も氷の魔力を浴びせかけ、嫌がるように魔王は咆哮を上げる。


 空気が振動する。魔王の咆哮だけで耳を塞ぎ、立ち止まってしまいそうだ。


 しかしルカは気にする様子も無く、どんどん氷の礫を爆発させていく。


 魔王にぶつかった魔力は纏わり付き、その周囲を凍りつかせていく。

 まるで超巨大なドライアイスのスモッグのようにモクモクと視界が奪われていく。


 魔王も鬱陶しくなってきたようで、苛々しているようだ。


「よし、俺も行「させるわけないだろ…。」っ!!!」


 クズ勇者が転移して、俺を斬り付けてくる。しかし、邪神の欠片が無くなったせいか、転移してくるのも読めたし、剣技も衰えているようだ。


 俺は横凪に振るわれた剣を、一歩後退して避け、今度はカウンターするために一歩踏み出し、刀を下方から振り上げる。


「ちっ!!!」


 すると、クズ勇者の左頬から一筋の血が垂れていく。今までどんな攻撃でも手応えを感じ無かったのに、驚くべき変化だ。

 リスキア…アリスともいう。アリスの成し遂げた仕事はとても大きかったようだ。

 ウーパールーパーにも後でお礼になんかあげよう。


 そんなことを考えていると、後退していたクズ勇者が笑い出した。


「アハハハハッ!!!!……ほんとやられたよ。ハルト、今の僕と君なら良い勝負が出来そうだね。参ったなぁ。」


「随分弱気になったな。」


「そうだね。でもまだ手はあるよ。」


 そう言うと、クズ勇者の魔力が動くのを感じた。そして、クズ勇者の頭上に一本の剣が現れる。


「ハルトは見たことあるよね。聖封剣アルミナス・ヒュンティア。僕の必殺技なんだ。君の愛おしい氷龍姫を貫いた剣だよ。」


 初めてルカと出逢ったとき、クズ勇者が三本の剣をルカに向けて放っていた。あの時の技か。

 ルカは二本は対応出来たが、最後の一本にやられていた。


「僕はね、魔王オルガルフェルグの封印された剣を見つけ、奪ったんだ。そして、邪神の欠片の力で、魔王オルガルフェルグの封印召喚まで成功したんだ。そしたらさぁ、運の良い事に、一人の勇者まで封印されていたんだよ。僕はその力も奪うことが出来た。だから、ある意味本当に勇者だね!!」


 勇者…魔王と共に封印されていたってことは、三勇とは別の勇者か?人柱の様な物だったのだろうか。


「それでね、その剣が魔封剣ヒュンティアというものだったんだよ。そして、僕の力で魔王オルガルフェルグの力と勇者アルミナスの力を混ぜた新たなる聖なる魔剣が生まれたのさ。聖なる力さえも封印する剣。それが聖魔封剣アルミナス・ヒュンティア。」


「流石はクズ勇者だな。」


「アハハハッ!!僕にピッタリでしょー?勇者なのに、聖なる力は封印するんだ。意味わかるかい?神さえも倒す力を手に入れたって事なんだよ!!僕はこの世界を終わらせたら、神を殺すんだよ!!」


 神を殺す。そう言うと、クズ勇者は全てを見透かしていたようにアリスの方を見詰めていた。


「でも、ルカと戦っていたときは三本あったが、邪神の欠片が無い今は一本しかないぞ?くらえば只じゃ済まなくても、一本ならどうとでもなる。」


「アハハハハッ!ハルト-。僕がいつ三本しか出せないと言ったんだい?三本で充分だっただけのことだよー?」


 クズ勇者は話しながら魔力を込めていく。すると、背後に数え切れない程の邪悪なる剣が浮かぶ。


「邪神の欠片があったときは、魔力がほぼ無限に使えたからもっともっといけたんだろうけどね。今は二千本位が限度かな。転移も上手くいかないし、魔力食うしね。ほんと…やってくれたよねー。」


 参ったなぁなんて表情をしているが、どこか余裕を感じる。まぁ、こんな必殺技があればわからなくないが。


『ハルト!!私がリスキアだって事が気付かれてるみたい!!!私戦いは苦手にゃの!!!神界にすぐに戻ることも出来ないから、どうにかして!!!!』


 アリスが慌てた様子で更に距離を取りながら、神託による念話を飛ばしてきた。今回も見事に噛んでいる。


『あぁ、分かってる。子ウーパールーパーもいるしな。まぁやれるだけはやる。結界から出るなよ。』


 俺は事前にアリスに張っといた結界へと重複して、結界を張る。

 しかし、龍人を相手に一本で命を奪うことが出来る剣が二千本か。どうにかしたものかな。


 今までだったら、もう半分諦めていただろう。


 しかし、俺は守るべきものの重圧を強く感じながらも、何故か落ち着いていられた。


 必ず、この山場を乗り切ってやる。

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