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3-19 アリス・イン・地上



「早速来ちゃった!」


 背中から首に手を回ししがみつき、顔を覗かせながら、突然こいつは現れた。

 一瞬誰だ?と思ったが、桃色のウェーブヘアーと赤みがかった大きな瞳に透き通るような白い肌。天然系女神だ。


 しかし、間違いなくリスキアなのだが、神界で会ったときと雰囲気も見た目も違う。

 しかも、何故リスキアが地上にいるんだ?


「あれ?そういえばリスキ「私はアリスよ!!間違えないでね!!」……。」


 何故かリスキアは睨みをきかせながら名前を偽装してきた。

 どうやら女神だって事を知られてはいけないっぽいようだ。仕方ないのでリスキアに乗ってあげることにする。


「あぁ、悪いアリス。で、どうして此処に?あと背もどうした?」


 リスキアは元々童顔だったし、背も低く150センチ位しか無かったが、今の姿はまるで4、5歳児だ。美幼女になってしまった。


『そーゆー話は神託の種の念話で話してくれる?』


『すまん。でどうした?直接は参加しないって言ってなかったか?』


『もちろんしないわよ。戦闘にはね。』


 なんか話し方まで変わってしまってる気がする。女神っぽさが消え失せている。フレンドリーだ。


 いかん、ついつい突然の出来事でルカをスルーしてしまっていた。


「ルカ、ごめん。こいつは俺の知り合いのアリスだ。」


「はぁ。初めまして…アリスさん。それよりもハルト様、こんな所に来てはアリスさんが危険なのでは?」


「大丈夫……だと思う。むしろ、援軍なんだよ。」


「ルカちゃん、よろしくね!私も頑張るよ!!」


 とてとてとアリスが歩み寄り、ルカに手を出し握手を求める。ルカも呆気に取られながらも手を取り握手をする。


 見た目は似ていないが、見ていてほのぼのする二人だな。二人とも可愛いし。まぁ可愛さに違いはあるが。

 しかし、さんとちゃんの付け方が逆じゃね?


 そういえば、クズ勇者が静かだが、どうしたんだろう。


 そう思いクズ勇者を見てみると、下を向きブツブツと何かを呟いていた。


 あれ?そういえば大気の熱さが和らいでる。結界へのダメージよりも修復する方が大分早まっていた。


 すると、突然顔を上げ叫びだした。


「何をした…………何て事をしたんだぁぁぁあぁーーー!!!!!」


 むしろ、こっちが何があったか聞きたいところだが、ふとクズ勇者の足元に、一つのネックレスが落ちているのに気付いた。

 そして、そのネックレスに填め込まれていた黒い石が砕けている。


 クズ勇者がつけていた物だ。鑑定を阻害したのもあのネックレスだった為、そういう機能のある魔道具かと思っていたが、もしかしたらあれが邪神の欠片だったのか?


 俺がクズ勇者に言い返そうとすると、アリス(リスキアだよ)に制止される。そして、アリス(リスキア小)がクズ勇者に話し出した。


「ズルしちゃだめよ。その石は私が預かるわ!」


 クズ勇者は、わなわなと震えながら未だに動き出さない。


 そう言うと、クズ勇者の足元で白い何かが動いた。そして、砕けた黒い石を咥えるとアリス(リスキアだね)の元へと運んできた。


 動きが早くてよく見えなかったので、ついつい鑑定を使ってしまった。そしたら、なんとウルフィナスと出た。


「え?あの時の子供ウーパールーパー?」


 間違いなく太古の森で、親ウーパールーパーの背中に張り付いていたやつだ。何故リスキ…アリスに従ってるんだ?


『詳しい話は後でね。そろそろ勇者ランスロットが動き出しそうよ。』


『分かった。因みに、邪神の欠片の力ってのは、どうにかなったのか?』


『バッチグーよ!私は戦い向きじゃ無いから、後は頼んだわ!!ちびちゃん、下がるわよ!おいで!!』


 なるほどね。どうりで熱さが和らいでいたんだな。仕事が早い天然女神だ。

 それにしてもバッチグーか……もう死語だろ。久しく聞いてないぞ。


「……許さない。其れを手に入れるためにどれだけ苦労したと思ってる。全てを捨てて…漸く手に入れたのに……コロス…………皆殺しだぁ!!!!!!」


 クズ勇者の叫びと共に大地が揺れ、地面の中から鼓膜が破れそうな程の咆哮が聞こえる。

 

 地面が破ける爆音が響き渡ると、大きな穴が地面に空き、そこから真っ赤に燃える岩の巨人が這い出してきた。


 40メートルはゆうにあるであろう、魔王オルガルフェルグは目や口が燃え盛る火焔のように赤く、人型の黒い岩塊のような体は、ところどころマグマが血液のように流れ出している。


「……こ、これが魔王?」


 …は?…いくら何でもデカ過ぎんだろ!!!!


「ハルト様!!!!」


 魔王オルガルフェルグは這い出した後、クズ勇者の怒りに呼応するように怒りの咆哮を上げ、大きな弧を描き腕を振ると、大量のマグマが噴出された。


 すると、慌ててルカが俺を庇うために前に出てしまった。


「な、流るる氷の奔流よ。迫り来る脅威を攫い給え。アイス・タリーバー!!!」


 ルカが両手を前に出し魔法を唱えると、氷で出来た水流が空中に生まれる。そしてすぐに途轍もない濁流へと変わり、大蛇のように空中を動き回ると、魔王オルガルフェルグの放った雨のようなマグマを全てを受け止めていく。


 咄嗟に出した障壁の用途の魔法でこれなんだから、やっぱりルカはすごいな。


 最近気付いたんだが、マジッククリエイトで魔法創るときは、イメージが上手くいかないと性能も落ちている気がする。

 俺もただの薄い結界だと、イメージがショボいから防ぎきれない事が増えてるので、勉強になるな。

 マジッククリエイトも使い方次第だし、慢心せずに常勝出来るようになってやる。


「ルカ、助かった。ありがとう。」


「は、ハルト様の為なら当然です。いつも守られてばかりいるのは私の方ですから…。」

 

 ルカが照れくさそうにはにかみながら答えた。


 ルカは本当に可愛くて良い子だなぁ。


『ハルト。邪神の欠片が無くても魔王は魔王だし、勇者は勇者よ!油断しないでね!!』


『あぁ!分かった!!リスキアもありがとう!!やってやる!!』


 ルカにリスキア、ウーパールーパーまで手伝ってくれている。ここで、やらなきゃ男が廃る。


 俺は急いで戦いの準備をする。

 もう、余計な事は考えないで一番使い慣れている魔法で行こう。


 どんどん魔力を雷の属性に変え、先ほどスカイガーデンに到着したときに使っていた、マジッククリエイトで作った刀ごと、雷を纏っていく。


 Aランク冒険者も驚く金色のハルトの完成だ。



「クズ勇者…準備はいいか?」


「……2度も負けてるくせに…調子に乗るなぁーー!!!!!」


 クズ勇者は前までの余裕が完全に無くなってしまっている。邪神の欠片を失ったのが、相当聞いているようだ。


「いけっ!!オルガルフェルグゥ!!叩き潰せぇ!!!」


 どうやったかは知らないが、魔王とは言え、クズ勇者が召喚魔法で呼び出した為、完全にクズ勇者の言いなりの駒だ。


 魔王オルガルフェルグが一歩前へ踏み出すと、大地は陥没し焼けていく。それだけで、大地震のような地揺れが起きる。


「ルカ、魔王からだ!!クズ勇者の対応は任せろ!!恐らく分断しようとしてくるだろうが、その時は時間を稼いでくれ!無理はせず危険ならばすぐ退避しろ!…絶対に勝つぞ!!!!」


「はい!ハルト様!!!」


 ついついまぢになってる為に、何時ぞやの熱男が出てしまって口調が荒れてしまった。ごめんルカ。


「…遍く生ける吹雪の精よ、凍土を統べし氷精よ、仇なす魔の源を絶つ力を与えよ。白氷武装。」


 流石は戦闘特化した種族の姫なだけある。戦いが始まると、いつもの美しくしっとりと笑うルカが豹変し、凜とした戦乙女といった顔に変わる。


 ルカが唱えたのは白氷武装という魔法。今度はどんな魔法なんだ!とドキドキが止まらない。

 

 ルカは目を閉じ、両手を広げる。すると、ルカの周りに輝く結晶が生まれ、踊るようにくるくると回り出す。

 やがて姿が見えなくなる程に輝いた後、踊っていた結晶達は氷煙を上げていく。


 戦いの最中にも関わらず、あまりの美しさに見とれてしまった。


 ルカは氷の純白のドレスを身に纏い、氷煙が幻想的に立ち上り、灼熱の大地を凍土が押し返していく。


「ハルト様の魔法は、私をこんなに変えてくれるのですね。私も頑張ります。ハルト様と共に…戦いますっ!!」


「俺は補助魔法かけただけだから、全部ルカの力だよ。さぁ、今度こそクズ勇者を負かしてやろう!」


「はい!」



 こうして、俺達対クズ勇者ランスロットと魔王オルガルフェルグの本当の戦いが幕を開けた。



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