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3-17 氷の華




 突如、炎の柱が吹き上がると、結界が消え失せていった。


 大地が揺れ、一気に周囲の温度が上がっていく。


「ハハッ。……アハハハハハッ!!!!!痛いよハルトォーー!!!!!生きてたんだねっ!!!さいっこうだよぉ!!!ハルトは最高だぁ!!!!」


 まるで炎が蛇のようにグネグネと動き回り、クズ勇者の廻りをぐるぐると回っている。


 周辺が夕陽に照らされたような色へと変わり、更に熱気が増していく。


「もう、もう我慢できないよ……。ハルトみたいなやつはいなかったからねぇっ!!!!まるで生きる屍だ!!!何度倒しても蘇ってくる!!しかも……前回とはまるで別人だ!!!あんな危険な真似をしてくれるなんて!!!!ようやく此処まで上がってきてくれたんだね……長かったけど、これまでずっと耐えてきた甲斐があったよ!!!!!」


 クズ勇者は完全にハイになって我を忘れてしまっている。このままここでやり合えば、スカイガーデンが滅びかねない。


「糞クズ勇者。望み通り本気でぶつかってやる!だが、場所を変えるぞ。ついてこい。」


「いいよ、ハルトが本気でやるんだ!!!!!最高の舞台でやろうよ!!!!!!!さぁ!!!!!!」


 クズ勇者はやばい薬でもやってるかのように、目がぶっ飛んでしまっている。

 

 それでも俺がルカを抱いて空へと飛び出すと、しっかりと後をついてきた。


 なり振り構わず戦ってくるわけでは無く、最高の状態で戦いたいと言う、ある意味武士道っぽいものがある辺りは、正直なところ助かる。


 卑怯でずる賢いタイプではないが、戦闘狂ではないと自負していたので、嘘つきではあるな。

 むしろ1番の戦闘狂じゃねぇか。


 こっちは全力で飛んでいるのに、ヒュンヒュン転移しながら、涼しい顔してついてくる。

 

 やがてスカイガーデンから大分離れた山の中腹にだだっ広い場所を見つけたので、俺はそこを決戦の場とすることにした。


「ここが、ここがここがここが!!!!僕たちの華やかなステージとなるんだね!!!!最高だぁ!!!!今まで出したことの無い力を出させてくれよ!!!ハルトォオォォォ!!!!」


 クズ勇者は待ちきれずに、今にも爆発しそうな程に興奮している。


「ルカ、いいかい?」


「いつでも大丈夫です。」


「よし、いくぞ!!!クズ勇者ぁ!!!!!!」


「アハハハハハッ!!!ハルトォ、簡単に死なないでくれよぉ!!!!!!」


 俺がルカを抱いてグングン速度を上げて飛び回る。転移しても、直ぐさま距離が生まれる為、転移に意味は無くなる。


「鬼ごっこがしないのかなー?」


「まぁな!」


 俺は飛行しながら魔法を放っていく。少しは目隠しになるかと思ったが、全く気にも止めていない様子だ。

 やはり適当な魔法じゃ魔力の無駄遣いだな。


「あの…ハルト様のおかげで、力が漲っています。私も魔法を使って宜しいですか?」


「もちろんだよ。」


「ありがとうございます。少しだけ時間を頂いて宜しいですか?」


「任せて。ルカは魔法にだけ集中してていいからね。」


 よし、ルカの魔法楽しみだな。これは頑張って時間を作ってあげないといけないな。


「いくぞクズ勇者!!」


 俺はクズ勇者向けて、以前蝙蝠魔族を葬った雷光砲(ライトニングガン)を放つ。


 バチバチと音を立てながら、光の雷がクズ勇者へと向かっていく。

 

「まぁまぁかなー!!でも、これじゃまだまだ足りない!!!」


 クズ勇者は剣へと魔力を流す。すると蝙蝠魔族を一撃で葬った雷光砲(ライトニングガン)を、軽く避けるとヘラヘラと小馬鹿にした感じで喋り出す。


「雷ならまだわかるけど、勇者に向かって光属性は駄目だよー!!!」


 まぁ、言われてみればその通りなんだが。

 だったら水魔法を使うかといっても、クズ勇者の火力よりも上を行かなければならない。

 デカい津波を放ったとしても、転移で簡単に避けられてしまうだろうし、むしろ普通に蒸発とかさせてきそうだ。

 

「そうみたいだな。」

 

 魔法を突くために一旦立ち止まったクズ勇者へ向けて、次の魔法を放つ。

 次は土魔法で地面から円錐状の石の剣山が勇者に向かって真っ直ぐ生えていく。


「そんな単調な魔法じゃ、一生当たらないよー!!!」


 油断したクズ勇者が、横へ飛び魔法を躱す。俺はそこを狙って更に追い打ちの魔法を放つ。

 

「おっ!?」


 魔力の流れを関知したのか、クズ勇者が一瞬だけ表情を変えた。

 

「痺れちまえ!!!!」


 俺がイメージしていたのは、地球の子供向けゲームであった、ポケモン(ポッケの中のモンテスキュー)だ。


 中でも人気だったのが、生コン系モンスターのデンチューだ。電柱っぽい見た目なのだ。

 そのモンスターの必殺技で、13(アンペア)という技がある。


 俺はそれを真似して、ピガー!ビビビビッ!!っと言わんばかりに放電する。


「空中でも転移出来るの見てるよねー?」


 と、(笑)が付きそうな感じでクズ勇者に指摘されたが、俺の放電には関係ない。

 そう、例え転移のことを忘れてたんだとしてもだ!!


 クズ勇者は前方から後方へと転移して、一歩踏み出そうとするが、放電中の俺は、的をクズ勇者にしか向けていないので、前方へと向かっていた電気ショック的な放電が後方へと瞬時に向きを変える。


 何度も転移していたクズ勇者は、一旦近付くのをやめる。そして距離を取った。


「近付かなければ何てこと無いね、むしろ離れたら遠距離攻撃したい放題だね!!ふざけてるのかなー?……もしかして、時間稼ぎしてるー?」


 いかん。痺れさせて時間を稼ぐつもりが、予想外の方向から目的がバレた。


「ふん、どうやってお前を倒すか色々試してるだけだ!!」


「なるほどねーーーー。」


 全然信用してない顔をして返事を返してきた。ムカつく顔しやがって。ぶん殴ってやりてぇ。


 すると、頑張って時間を稼いだ甲斐あって、ルカの準備が整ったようだ。

 

「ハルト様、ありがとうございました。行きます!」


 ルカの魔法の魔法ってどんなものなんだろうか、めちゃくちゃ気になる。ドキドキが止まらない。

 折角マジッククリエイトがあるのに、俺の想像力の無さが邪魔をしているため、今後の参考にしよう!


 俺が勝手にドキドキしていると、ルカの詠唱が始まった。


「幾千の雪が華と生り、幾億の棘を生む。幾千億の煌めく氷の精よ、彼の者を朱に染めよ。……凍華絶世!!!!」


 ルカが詠唱を終えると、燃える様に熱かった空気が一気に凍りつく。


 まるでスターダストのように、きらきらと輝く氷の結晶が、空間を埋め尽くしていく。


 穏やかだった其れも、やがて牙を剥き始める。


 ふわふわと地面に落ちた直後、薔薇のように美しい氷の花が咲き、それに続いて茨が伸びていく。

 結晶の数が半端じゃないので、あっと言う間に地面は氷の花と茨で埋め尽くされた。


 その一つがクズ勇者の腕に触れた瞬間、花が咲き、茨がクズ勇者の腕に絡みついて、鋭い棘が深々と突き刺さる。


「ぐっ……!!!」


 咄嗟に剣で振り払おうとするが、結晶に触れたところからどんどん花と茨が咲き乱れていく。


 あと少しで腕が千切れるといったところで、結界を破ったときのように炎を身に纏い、その炎を爆発させて、周囲の結晶から逃れた。


 それでもまだまだ結晶は降り注いでいるので、クズ勇者は簡単には動けそうにない。


 それにしても、ルカは魔法まで綺麗なんだなぁ。


 しかし、魔法を鎧のように使うのは異常だとフォル爺が言ってたが、一瞬とは言え普通に使ってきやがった。

 俺だけの必殺技かと思ってたのに。少し悔しいな。


 クズ勇者ランスロットも全力なようで、一気に魔力が練られていく。火力MAXで魔法を放つつもりのようだ。


「アハハ痛いなぁ!!すごい魔法だっ!!こんな最高の魔法見せられたら、僕も最高の魔法を出さないとねっ!!」


 クズ勇者は剣を背中に戻して、目を瞑る。腕の傷を治すこともしないで、どんどん魔力を練っていく。


 流石にこの魔力量はまずい。俺は込められるだけの魔力を込めてから自分とルカの結界を張る。

 


「ハルト…最近手に入れた僕の固有スキルにね、獄炎召喚ってのがあるんだよ。だから少し前から火魔法が特に得意になったんだ。特別に本物の魔法を見せてあげるよ。


 この世界に来て初めて見るやばい魔力だ。悔しいけど、クズ勇者は恐ろしい程に強い。


「お待たせハルト。耐えてみせてね。…四世界を統べし邪悪なる邪神よ力を示せ。いでよ獄炎邪王……オルガルフェルグ!!!!!」


 そして………


 全てが一変した。



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