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3-5 龍人の里にて 




 龍人の里、スカイガーデンはファンタジーだった。


壺のような形に山が抉れて出来ているため、山に周囲を囲まれ上空からの光が上空の木々の間から漏れているが、空から覗いても見えない村があった。


 そこかしこに細い滝が出来ていて、滝から流れてくる湿気があるのか、少しだけ靄ってるが、それが木漏れ日に照らされて雲海に浮かぶ村のようで、とても幻想的な雰囲気になっている。


 ついさっきまで木々が鬱蒼と茂った山々を飛んでいたとは思えない光景だ。


 岩と木で作られた入り口の門へ近寄ると、リザードマン……いや、ドラゴンマンのような青年が現れた。

 これが龍よりのドラゴニュートか。かっこいいな。


「ルカシリア様がお戻りになられたぞ!!!」


 大声でルカの帰還を叫ぶと、青年がルカに近寄り話し掛けた。


「ルカシリア様お帰りなさいませ!族長は御一緒ではなかったのですか?」 


「ゼゼ、ただいま。色々あったの。詳しい話はまずお母様に話します。」


「かしこまりました。ところでその者は…人族?!里に人族など連れてきては不味いのでは!!」


「私の客人です。問題ありません。」


「しかし、人族は信用なりません!」


「初めまして。ルカの友達のハルトです。」


 一応軽く自己紹介をしておく。すると青年がいきなり槍を構え怒鳴りだした。


「ルカシリア様に対して馴れ馴れしい口の利き方を……!客人とはいえ我等の姫に無礼をはたらく事は許さん!!」


「控えなさい。私の大切な人に対して……もう一度口にすれば許さない。」


「くっ……出過ぎた真似を、お許し下さい。……おい!開門しろ!」


 ルカは静かに制してくれた。しかも大切な人なんて言ってくれるとは……感無量だ。調子こいた友達発言が良かったのかな。


 俺はルカの発言に舞い上がっていて、このゼゼと呼ばれた青年が全く目に入らなかった。

 それが余計癪に障ったのか、こめかみがヒクヒクしていたけど、ルカのおかげで特に何も言ってこなかった。


 門が開かれ、俺はルカに続いて入っていくが、結局ゼゼは門が締まるまで俺を睨み続けていた。



「ハルト様、嫌な気持ちになりましたか?」


「え?全然大丈夫だよ。ルカを慕ってるからこその対応だから、むしろ好感が持てるよ。」


「ありがとうございます。ハルト様の心の豊かさにはいつも救われます。早速ですが、お母様の所へ行きたいのですが、ハルト様も一緒に来て頂けますか?」


「もちろんだよ。じゃあ、行こうか。」


 山間の窪んだ大地にある里とは思えない光景に、何度見ても驚かされる。規模で言えば村や里では無い広さの土地に、変わった形の家が並んでいる。

 山間の中央を真っ直ぐ奥に向かって、幅10メートル程の道がある。そのメインストリートを歩いていると、至る所から声が掛けられた。

 ルカはこのドラゴニュートの里で人望が厚いようだ。ルカも少しだけリラックスした表情になっているようで良かった。本当は、全て俺に任せろ!と言ってあっという間に解決したいところなんだが、あのクソ勇者に独りで勝てるかと言われると微妙だ。前回は余裕で敗走してるからな。


 しばらく進むと一際大きな建物が出て来た。木造の3階建てで、外観は不思議な模様が描かれて、ファンタジーに仕上がっている。


「ハルト様、ここが私の家です。どうぞお入りください。」


 ルカがドアを開けて入っていく。中は外観よりも更に広く感じた。ルカは族長の娘なだけあり、お嬢様なんだな。


 2階へ上がり奥の重厚な扉の部屋の前へと来ると、ルカがノックをして声を掛ける。すると、中からエプロンのような物を着た女性が出て来て、ルカの姿を確認するとまたすぐに部屋へ戻って行った。どうやらルカの母の世話をしている人らしい。

 待っているとすぐに「どうぞお入りください」と声が掛けられた。彼女のお母さんに会いに来たみたいでドキドキするとはとてもじゃないが言えなかった。


「ルカ、お帰り。」


 部屋に入るとルカによく似た綺麗な女性がベッドに横になっていた。病気のせいか痩せてしまっているが、それでもかなりの美人さんだ。


「ただいま、お母様。戻ってきていきなりだけど、話があるの。」


 ルカはこれまでの事を説明をした。温和な感じの優しそうな母親の表情も、少し厳しい顔つきになっていた。しかしこたらを向くと、すぐにまた最初の優しい笑みを向けて話し出した。


「ハルト君初めまして。ルカシリアの母のマナシラです。ルカを救ってくれて本当にありがとう。それどころか里まで共に来て助けてくれるだなんて。ルカの英雄ね。」


「とんでもないです。むしろ中々出発させて上げられなくて、こっちが迷惑かけてしまいました。しかも10日もお世話をしてくれて、そのおかげで生きられました。ルカは命の恩人です。」

 

「ルカがお世話をねぇ。ふふっ、でもまさかルカが男の子の友達を紹介してくれる日がくるなんてね。ほんとに嬉しいわ。ハルト君、ルカと仲良くしてね。」


「お、お母様!ふざけてる場合じゃないの!早くお父様を助けに行かないと!」


「ルカ。あの人を助けには行きません。」


「お母様なぜ?!まだ間に合うかもしれないのに!」


「忘れないで。族長のいない今は貴方がこの里や龍人族を導かなければならないの。族長はその為に命をかけたのよ。その想いを無碍してはなりません。それに、グナシアはそんな柔な男じゃないわ。信じなさい。」


 母は強しというのは異世界でも同じなんだな。しかし、ルカの気持ちも分かる。出来たらルカの為に父親を救いたいな。


「分かりました。その代わり、私はこの里でお父様の次に闘う力があります。もし、戦闘となれば一番槍となり出陣します。」


「戦争でもするつもりかしら?それなら尚更控えていなさい。ルカが死ねば、皆死ぬのよ?」


「だけど……だけど。ただ指をくわえて、皆が傷付いていくのを見てるなんて私には出来ない!!」


 うーん。どうしたものか。どちらの気持ちも立場も分かる。だが、お互いの立場が違うため、このままでは決して相容れる事は無いだろう。


「ルカ。話してるところ悪いんだけど、ちょっとだけ時間をもらえる?」


「……はい。」


 俺は少し流れが変わればまとまる気がして、一つ試してみることにした。どのみちやろうとしていた事だが、ルカの母親の病気を治せるか試してみることにした。


「マナシラ様、少し魔法を使わせて頂きたいのですが宜しいですか?」


「ん?いいけど…どうしたのかしら?」


「マナシラ様の病気が治せるか試してみたいのです。」


「ありがとう。でもね、今まで色んな事を試してきたの。有名な治療術士や回復魔法を使う方に見てもらったり、夫が方々を駆け回って調べて、薬草を用意してくれたりもしたわ。でも治らないのよ。」


「分かりました。しかし、念のため試させて頂いてもいいですか?」


「優しい子ね。普通治療魔法は高額なお金を取って行うものなのよ?お願いするわ。」


 そう言って、マナシラ様は治療の許可をくれた。試しに普通にヒールを使ってみるが、特に体調に変化はなさそうだった。次にマジッククリエイトで強力な治療魔法を創造してみる。


 回復魔法では傷や体力は回復しても、体調不良や病気などには対処療法的な効果しかなさそうだったので、根本的なところを解決出来るようにするためだ。


 イメージを固めて魔力を錬る。


「すごいわ……なんて魔力なの。」


 よし、発動だ。すると、マナシラ様の体がぼんやりと光り出した。効いたかな?傷と違っていまいち分からないな。

 そういえば鑑定があったな。敵対されるのが嫌で封印していたんだが……個人情報保護の為に状態異常だけを知ることは出来るのだろうか。


 試しに自分の状態だけを見るつもりで鑑定してみる。すると状態異常なしと出た。これなら大丈夫だろう。


 今度はマナシラ様に状態異常を知る鑑定をかけてみる。すると。




呪いと出た。



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