最終話 ラスボスとかピンチとか愛とかなんやかんややってたらこんなんなった。
俺はこの闇を照らし消し去る聖なる光をイメージした。
しかし、いくら魔力を練ってもそれは発動しなかった。
最低限の魔力を温存することなど許されない状況なのだと直ぐさま理解した。
どうなるか分からなかったが、体を覆う神魔力もマジック・クリエイトを発動させるために注ぐ。
やがて指先の神魔力が消えると、闇に触れた部分があっという間に紫色になり、やがてミイラのように黒く乾いていった。
痛みはあったが戸惑いは無かった。覚悟していたからか、それどころでは無かったからか。
眩暈は激しさを増し、冷や汗が頬を伝う。
血液が凍ってしまったのではないかと疑いたくなる程の寒気に襲われた。
そして、とうとう魔力が底を尽きた。
体を覆っていた神魔力も両手の分は使ってしまった。
残りの神魔力を使えばすぐに俺は死ぬ。だからそれよりも先に生命力を魔力に変換することにした。
漠然と変換と言ってしまえばそれまでだが、実際生命力が消えていくというのはとんでもない激痛だった。
「うがぁぁあぁぁぁぁぁーーーッ!!!!!!!!」
体力も魔力も限界の状態で襲い掛かる激痛に、意識が飛びそうになる。だが、それを無理矢理手繰り寄せるように叫び声を上げた。
首の皮一枚で繋がっていた景色が刻々と狭まる。
命も残り僅か。焦るという概念さえも魔力に溶け込んで消えていた。
もうピクリとも動けない。
息をしているのかさえ分からない。
皆、ごめん。
生きているという為だけの命を残して、俺は神魔力を解放させた。
足が黒くなる。
痛みはあっても声は出なかった。出す気力も無かった。
そのまま倒れ込み薄れ行く景色の中……突如温かさと眩しさを感じた。
あぁ。何とか魔力が足りたんだな。
みんなごめん。
ーーーでも守ることが出来て本当に良かった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「………あれ。どういう……事だ?」
目が覚めると、今までで最も見覚えのある天井が映っていた。
「まさかなぁ。」
夢だったなんて有り得ないよなと自分に言い聞かせるが、昨日まで普通に生活していたような雰囲気が部屋にはあった。
あんなに長い夢なんてあるのか?まさかずっと眠り続けていたのではないかと思い慌てて体を起こしてみたが、いつも通りのスウェット姿だった。
「まぢかぁ。怪我も無いしなぁ。…………まぢかぁ。」
かなり頑張ったつもりだったのに夢だったなんて。……まぁあんなファンタジー世界で最強の力を手にするなんてそりゃ夢だよな。
あまりの衝撃的な夢にヘコみ過ぎて中々動き出せないでいると、良い香りがしてきている事に気が付いた。
「……ッ!?まさか!嘘だろ!?」
両親が死んでしまった事を思い出す。だがもしかしたらあれも既に夢の世界だったのではないかと胸が高鳴った。
ドキドキして力が抜けた体に鞭を打ちベッドを下りる。見慣れた自分の部屋のドアノブを手に掴み戸を開けると音が聞こえてきた。
トントントントンッ。
まな板に包丁が当たる音が聞こえ、香りも更にはっきりしたものになった。
やっぱり……やっぱり夢だったんだ!
「先にこれから食べてて下さいね。」
女性の声がした。
「母……さん?」
無意識に涙が溢れ出ていた。どんだけ寂しかったんだよと思ったが、独りだった夢を思い出すと当たり前だと納得して笑みが溢れた。
早く逢いたくて、気付けば駆けだしていた。
だが、何故か足がイメージ通りに動いてくれなくて階段を踏み外しゴロゴロと転げ落ちた。
「いてててっ。」
折角夢だったのに、両親に会う前に滑落死しなくて良かったなどとふざけた事を考えていると、リビングから足音がして戸が開かれた。
「………ハルト様ッ!!!!!!」
突如この世で最も心地よい柔らかさが顔を包み込んだ。
……あー、夢じゃなかったか。
「あれ?ルカ……?」
ルカは俺が見ていることも関係ないようで、見たことが無い程に盛大に泣いた。大声を上げてうわーんだった。
「んー?ルカちゃーん、ごはん出来………ご主人たまぁ!!!!!!」
「うそ!!!ハルトさん起きたの!?」
ドタドタと喧しく走り寄るシロとアイナが見えた。
「ちっ。ハルトさんとの感動の場面はお預けくらったかぁ。まぁ本妻がこんだけ盛大に泣いてたら私は行けないもんなぁ。」
「えー、シロは行くよー?」
そう言うとシロはご主人たまぁと叫びながらルパンダイブをかましてきた。
ルカにぶつからないようにサッとキャッチしてシロも抱き締めてやると、アイナもそれに続いて飛んできて、俺は支えきれずビターンと倒れてしまい後頭部をメガヒットした。
「痛ぇ……もう、なにがどうなってんだ?」
「ハルト、全ては貴方のお陰です。」
「リスキア!?」
「ハルトがアイナとの約束に律儀だったからですね。」
リスキアが言うには、マジック・クリエイトで創造した光が闇を消し去るとそのまま俺達を包み込み、気付けば俺の部屋に転移していたらしい。
俺がアイナを地球に戻したい気持ちと皆を手放したくない気持ちが無意識にマジック・クリエイトに乗っかったからじゃないかという見解だった。
うーん、確かに無意識状態だった。だからいつまでたっても発動しなかったのかな。
そして俺は地球に来てから10日間目が覚めずに4人が俺の世話をしていてくれたらしい。
そうして俺が皆をまとめて抱き締めながら1番最初に考えたことは……戸籍とかどうなるんだろう。だった。
とりあえずルカとリスキアで作ってくれていた御飯を食べながら熱い胸の内を語り合い、創造の女神まで含めたハーレムで行くことで決定した。というか既に俺の意思は関係なく決まっていた。
その後これからの生活の事で悩んでいるから相談に乗ってくれとアイナに伝えると、何故か皆ぽかーんとしていた。
「ハルトさん、まさかこのまま地球だけで生活するつもりですか?」
ん?どういうことだ?
「するつもりも何も……って、もしかして魔法生きてる?」
「ハルト、いつまで寝惚けているのですか?魔力だって感知しているでしょう?」
「あっ、ほんとだ。」
「やっぱりハルトさんは天然なんだなぁ。」
「ご主人様は天然記念物だなぁ。」
「もう、しっかりして下さいね。とりあえず御飯を食べ終えたら向こうに連れてって下さい。ハルトが中々起きてくれないので、仕事が溜まっているのです。これでも創造の女神なのですからね?」
「ハルト様、私も一度スカイガーデンに戻りたいのですが……。」
「というか、そんな簡単に行き来が出来るもんなの?」
「出来るでしょう。ハルトは地上で神にもなれるのですから。」
なるほどね。神化してれば出来そうな気がしてきたぞ。つーか出来ない事ってなんだろうか。
すると突如ルカがイスから立ち上がると俺に近付いて唐突に口づけをしてきた。途轍もなく柔らかく温かい唇の破壊力はナルキテラも真っ青だ。
俺もルカも茹で蛸のように真っ赤になったが、戸惑う俺を余所にルカは喋り出した。
「その……ハルト様の強く優しい気持ちのお陰で今の私がいます。いつまでも私を傍に置いて下さい。愛しています、ハルト様。」
俺が愛の返事をしようとすると、そんな間もなく今度はシロが駆け寄り俺の頬にキスをした。シロにされるとなんかこそばゆいし照れ臭いな。
「ご主人様!!!!ぜーーんぶ大好きー!!みんなをいつもいつも大切にしてくれてありがとー!!!!!」
すると今度はアイナが直ぐさま駆け寄り、シロとは反対の頬にキスをした。
「ハルトさん。なんだか恥ずかしくて上手く言えないけど……本当に好きです!!完全に愛しちゃってます!!私を捨てないで下さい!!!!」
アイナらしいなぁと思っていると、最後にリスキアが俺のおでこにキスをした。
「今はおでこですが、二人の時は口にして下さいね?私もハルトを愛してます。そして、みんなまとめて愛して下さいね。」
「……おうよ!!!」
照れ臭くておうよとか言っちゃった。キモイ。それがまた恥ずかしくなって居たたまれないと思ったが、4人に抱き締められてしまったせいですぐに気にするのはやめた。
俺はこの美人で優しい4人を悲しませること無く、絶対幸せにしてみせると心に誓った。
4人を想う気持ちだけは、マジック・クリエイトに頼らずに自分で創り上げていこうとそう決めたのだ。
最後まで読んで下さってありがとうございました。
小説をまともに読んでこなかった奴が初めて書いた小説なので、気になる部分は多々あったかと思いますが大目に見てやって下さい。
また小説投稿しますので出来たら読んで下さい。現在書き溜め中です!
ありがとうございました。




