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10-8 マジック・クリエイト



 これが神化した効果なのだろうか。よく分からないがそれ以外に考えられない。

 他にあるとすれば、死に直結したヤバい場面に瀕してるせいでスローモーションに見えてるだけか。


 何にせよ見えてるなら躱してやる。そう思って後ろに下がろうとして気付いた。俺もナルキテラと同じような速度でしか動けていない。


 このままでは避けきれない。慌てて転移を発動させると魔力の動きもスローモーションになっていて、ナルキテラの剣が当たるギリギリのところで転移が発動した。


 これはこれでかなりの恐怖だなと思い冷や汗をかきつつもナルキテラから数メートル離れた所に転移すると、突如スローモーションが解けた。


 そこでようやく体の異変に気付いた。立ち上がることもままならなかった筈のボロボロの体から湯気のようなものが上がり、回復不能のナルキテラの攻撃で傷付いた体が修復されていってることに。


「痛みが消えていたのはこのせいだったか。」


 てっきり痛みすら置いてけぼりにするほど死ぬ寸前なのかと思っていた。


「……何故だ。何故立っていられるのだ!!」


「知らねぇよ。ただ分かってるのはこれから反撃開始だって事だ。」


 ナルキテラは今までの焦りとは違う顔をしていた。それは恐らく恐怖を感じた表情だったのだろう。


「ふん。お前を殺し創造の女神を殺して余が頂点に立つ!良き踏み台だ!!」


「言ってろ駄目天使。」


 一瞬見せた恐怖を無理矢理ねじ伏せて怒気に変えたナルキテラは、飛ぶように向かってきた。

 流石のスピードで、ただ単に移動しているだけなのに視認が難しかった。だが今までとは違い上段に剣を構えたのが見えた。


 そしてお互いの距離が一メートル程になったところで再度スローモーションが発動した。


 この距離ならいける。振り下ろし始めた所で剣筋から体を捻り回避する。剣がスレスレの所を通過するのと同時にナルキテラの顔面目掛けて拳をねじ込んだ。


 初めてまともに捉えた感覚を拳に感じ、潰れていくナルキテラの鼻を見ながらそのまま全力で振り抜いた。


 仰け反り、拳からナルキテラの顔面が離れていくと、やがてスローモーションが解けた。

 世界が通常の早さに戻ると、ナルキテラは吹き飛んだが結界に当たる前に体勢を整え空中で止まったのだが、押さえる鼻からはドバドバと鼻血が出てきていた。


「くっ。……余が血を流すだと?有り得ぬ!!……許さん!!ゆるさんぞぉ!!!!」


「……許さねぇのはこっちだ。よくも俺の大切な仲間を傷付けてくれたな。死んで償え。」


「ほざけ小僧がぁあぁぁぁーーー!!!!!!!」


 一段と濃密な魔力を纏いナルキテラは両手を前に翳す。そして翳した両手の前に魔力が集まっていく。

 黒い拳大の魂は一気に膨れ上がっていき、結界内では窮屈そうな大きさになった。


「余の魔力の前に絶望しながら消えてゆくがいい!!!しねぇぇぇッ!!!!!!!」


 神魔力は何故か普通の魔力とは違い、操作している感覚が無かった。ナルキテラの魔力が集まっていくのを見て、慌てて同じように魔力を練り上げようとしたがそんな必要もなく、手には一振りの刀が現れた。


 それと同時にナルキテラは漆黒の闇を具現化したかのような魔力を放つ。


「これで……斬れるのか?」


 真っ白い刀は雷の魔力で作った剣より派手さはないが、柄を握っただけでその力強さが伝わってきた。


「斬るしかねぇか。頼むぞ白刀!!!」


 ナルキテラの魔力塊に向かい浅く一歩踏み出し、アイナの見様見真似で刀を振り抜いた。


 白き刀は一切の抵抗を感じさせぬまま闇を切り裂く。真っ二つに割れた魔力塊は白い輝きを放った後、蒸発するように消えていった。


「ふざけるな……ふざけるなぁ!!!!!!」


 全力の一撃をもってしても倒せなかった事で、ナルキテラはどこか頼りなさすら感じさせる咆哮を上げ剣を構え駆けだした。


「じゃあな。堕天使。」


 心臓を狙い澄まし突き出した刀は、凄まじい勢いで迫るナルキテラの刀を砕き突き進んだ。


 白刀はゆっくり、ゆっくりと進んでいく。


 整った顔立ちが今では悪魔のような形相となっているナルキテラの胸を目掛けて突き進む。


 ズブッ。


 感触が手に伝わる。


 ゆっくりゆっくりと刺さっていく刀に合わせ、ナルキテラの顔が怒りから驚愕に変わっていく。


 そして鍔まで刺さったところで刀は動きを止める。


 見開かれた目が虚ろな目に変わり、戦いは終わったというようにスローモーションが解けた。


「ぐっ……ふ。」


 ナルキテラは口から血を流しながらも、自ら刀から体を離していく。すると漆黒の翼が灰のようになり崩れ落ちていく。


「見事……だ。だが……終わりなのはお前も同じ……だ。」


 ナルキテラは突如穴の空いた胸に手を突き入れて引き抜いた。そしてその手には闇のオーラをゴボゴボと溢れ出させる黒い宝玉のような物が握られていた。


『ハルト!』


『リスキア!!』


『通じた!!!!それは邪神となったナルキテラの核よ!!!使わせたら世界が闇にーーーーー』


 パキンッ。


 リスキアの念話が最後まで届くよりも先にナルキテラは核を握り潰した。

 そして核は爆発を生んだ。闇を生みこの世の全てを呑み込むべく黒い爆発を。


「ハハハッ!!……ハーッハッハ!!!!」


 翼と同様に、徐々に体が灰と化していくナルキテラは高らかに笑った。それはまるで勝ち鬨を上げているかのように誇らしげに満足そうに。

 

 笑い声が途絶えた頃には結界内が暗闇に染まっていた。何も見えなくなってきたが神魔力で輝く自分の体だけは見える。

 そして一つだけ確かに感じたのは、神魔力が抵抗していることだった。

 体を巡る神魔力が無かったら既に死んでいるか、闇に染まり狂っていたのかもしれない。


「ち……ちくしょう。」


 神魔力が抵抗を続けていることで、魔力が一気に削られていってしまい眩暈がする。

 気怠さに襲われ、このまま時間が経過すれば魔力が切れて倒れるのは明らかだった。


「魔力を消費してでも……賭けに出るしかないか。今までだって乗り越えてきたんだ。」


 この世界で出会ってきた人達を守りたい。


 ルカとシロとアイナを守りたい。


 リスキアの為にこの世界を守りたい。


 やってやる。


 絶対成功させてみせる!


「…………マジック・クリエイト!!!!!」



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