3-1 夢
目が覚めたら、地球にいて自分の部屋にいる。
「あれ?なんで?夢でも……見てたのかな。」
自分が異世界へ行き、中途半端なところで死んでしまう夢を見た。
見慣れたパソコンの画面には異世界へ行く前にやっていたゲームの、FF10が写っている。
すると、突然リビングから声が聞こえてきた。
「悠人-!ご飯出来たわよー!」
「え?か、母さん?!」
突然立ち上がった為、ガタンと音を立てて椅子が倒れる。慌てて部屋を出て、階段を駆け下りる。
リビングの扉を開くと、
「悠人-。遅いぞ。いつも寝坊してるが今日はいくら何でも酷すぎるな。」
「父さん!!!」
「どうしたの?早くご飯食べなさい。」
そんな。父さんも母さんも死んだはずなのに。やっぱり夢だったんだ。生きてたんだ!!。
俺はどうして両親が死んだなんて思ってたのだろう。安心したら、突然涙が出てきた。
「あらあら、どうしたの?何か辛いことでもあったの?」
「まだまだ悠人はガキだなぁ。」
母さんに抱きしめられて思い出す。ひとりぼっちじゃないという幸せを。
「大丈夫よ。いつも私達が傍に居るわ。」
俺は突然恥ずかしさが込み上げてきて、母さんから離れて椅子に座る。
「いただきまーす!」
何故か久しぶりに感じる朝ごはんに舌鼓を打ちながら完食する。不思議な感覚に襲われながらも、この幸せを噛み締めていると、テーブルの向に座る父さんが話し掛けてきた。
「なぁ悠人。俺も母さんもお前の良いところを沢山知っている。だから俺達の為に、無理して格好良いとこ見せようなんてしなくていいんだぞ。これからは特にな。」
何故か父さんは俺を見て、ニヤニヤとしている。
「そうよ。良い子を見つけたじゃない。悠人には勿体ない子よ。その内、紹介しなさいね。」
二人とも何を言ってるんだ。誰の話をしているんだろう。
「お前はお前らしくしていればいい。自分の信じた生き方を貫いていけばいい。それがどんな結果になろうとも、俺はお前の味方だ。そして、あの子の為に命をかけたお前を誇りに思う。」
「母さんだってそうよ。いつだって悠人のことを想ってる。だからもう安心して、早くあの子の所へ戻ってあげて。あの子、とても心配しているわ。健気な子、ほんと可愛いわ。」
ねぇ父さん、母さん。どういうこと?
「先に逝っちまって本当にすまん。苦労かけたな。でも、これからは独りじゃ無い。守ってやれよ。」
「悠人の幸せをいつも願ってる。さぁ、もう時間もないわ。起きなさい。」
やっぱり二人とも死んじゃったんだね。
「父さん、母さん。俺は二人の子供で幸せだったよ。今まで本当にありがとう。」
「「悠人。愛してる。」」
二人とも、とても優しい笑顔で、俺を見詰めてる。
「俺、頑張るから!安心して見守っててくれよ!!じゃあ、行ってきます!!!」
俺は薄れ行く意識の中、両親に一生懸命想いを叫んだ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
薄らと日の光を感じる。水の流れる音がする。
俺は生きていたんだな。
今度は夢と違い生を実感出来ている感覚がハッキリとある。だが、起き上がろうとするが身体が鉛のように重く動かない。
その時、突然声がした。
「うぅ…辛いよ……お母様……。」
顔を向けると、あの時の女の子が居る。ボロボロと泣き崩れて、俺に気付いていない。二人とも助かったんだ!良かった!でも泣いているので、俺のせいで怪我でもしてるのかと焦る。
「だ、大丈夫?!どこか痛いの?!」
俺は慌てて話し掛けると、どうにか起き上がろうとした。
すると、いきなり彼女は俺に飛びつくように抱き付き、泣き始めた。
気を失ってる間に一体何があったんだろう……。どうしてこんな美少女が俺に抱き付いて泣いてるんだろう。
考えるが全く答えに辿り着けないので諦めて、この子が落ち着くように頭と背中を撫でて落ち着かせるように努める。
結局彼女が落ち着くまでに30分かかった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ごめんなさい。本当にごめんなさい。」
「謝らないでよ。俺だって迷惑かけちゃったみたいだし。話戻すけど、何か辛いことでもあったの?」
そう聞くと、彼女はカーッと真っ赤な顔をして下を向いてしまった。聞いては不味かったのだろうか。
「ご、ごめんごめん!話したくないことは話さなくてもいいから!えーっと、そうだ!名前を教えて!俺の名前はハルトです!」
「ハルト……様。私のことはルカって呼んで下さい。」
まだ下を向いたままだ。
「ルカさんね!よろしく!あっ、様は付けないでよ!ハルトでいいから!」
「ルカでいいです。ハルト…………様。」
むむ。俺ってば嫌われてるのかな。未だにこっちを見てくれない。そういえば此処は何処なんだろう。何か少し気まずいから、話題を変えてみよう。
「そういえばここってどこ?あと、もし分かるならあれからどうなったか聞いてもいいかな?」
「ここは…分かりません。ごめんなさい。」
わからない?何故なんだ?
「ハルト…様の魔法の余波で山から落ち川に流されました。ハルト様の作った結界の中にいた為、私の力では外に出れずに一日以上流されてしまいました。ごめんなさい。」
俺のせいじゃねぇか!しかも結界が気を失っても保たれるとは驚きだな。
「だから謝らないでよ!ルカのせいじゃないんだからさ。じゃあ、俺は一日以上気を失っていたんだ。むしろ迷惑かけてこっちがごめんなさいだね。」
「正確に言うと10日以上です。でも、その間のお世話はちゃんと…。」
最後の方は声が小さくて聞き取れなかった。10日以上?まぢかよ。
「何か……本当にすみませんでした。」
10日以上寝たきりでよく目を覚ましたな。ルカが面倒見てくれたおかげなんだろうな。父さんと母さんも夢で言ってたし。
「ハルト様。あの時は……本当にごめんなさい。私の魔法に…巻き込んでしまって。あと、命を救って頂き、ありがとうございました。その…あの……。」
ルカはこちらをむいて謝罪と感謝を伝えてきたが、また下を向きモジモジして黙ってしまった。
ルカは本当に美人さんだ。美少女?歳は18位だろうか。腰まで真っ直ぐ伸びた綺麗な真っ白い髪。地球では見たことの無いほど整った顔立ちで、大きな瞳は吸い込まれるような蒼。160センチほどで、少し民族衣装のような白いワンピースを着ている。まるで天使のようだ。因みに胸はDカップはありそうだ。
俺は沈黙を破り、気になっていた事だが聞いて良いことかわからない質問をする。
「あのさ、これも答えられたらでいいんだけど。どうしてあいつに狙われていたの?」
「ご迷惑をかけたので……ハルト様には……ちゃんとお話します。」
そう言うとルカは向きを直し、俺の目を真っ直ぐ見て話し出した。