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10-6 集結



 神力を混ぜた鎧が気付けば消え去っていた。強烈な灼けるような痛みが全身を走る。

 右手は肘から先が殆ど千切れかかっている。脇腹からは肋骨が飛び出し、残りの手足もあらぬ方向へ折れ曲がっていた。


「終わりか?終わりなら楽にさせてやるが。」


 ナルキテラは手を翳す。魔力感知が無くとも具現化された魔力が集まっていき攻撃をしようとしているのが分かった。


「ふん、返事も出来ぬか。時間の無駄だな。死ぬが良い。」


「誰が……死ぬかぁ!!」


 深傷により未だ起き上がることも出来ていないがマジック・クリエイトを発動させる。

 一瞬で創れるギリギリの魔力で創造したのは、ナルキテラの手から放たれた黒い波動に破られないシールドだ。


「ほう、奇怪な魔法を使うか。いつまで耐えられるか見物だな。」


 バチバチと音を立て耐えるシールドの向こうでナルキテラが感心したような表情をしているのが見えた。


 ちくしょう。負けてたまるか。


 今のうちに回復魔法を使おうと魔力を練った時、ふと複数の黒いものが視界に移った。


「無能……だな。」


 俺を囲う無数の黒い羽根は一斉に飛び出す。急いで防ぐ手立てを考えたが、何も出来ぬまま全て体で受け止めた。


「ぐあぁぁぁーッ!!!」


 自分の手や足が宙を舞っているのが見えた。腹には風穴が空き、溢れる血のせいで呼吸が出来なかった。


「や、やっと見つけたわよ!!!」


 視界が明滅する。寒い。冷たい。血が流れすぎた。


「はっ!ふははははっ!!まさかこんなに早く創造神様に会えるとは思っていなかった!!自ら死にに来るとはな、手間が省けたぞ!!」


『ハルト。ごめんね、もう少しだけ頑張ってね。』


 死の瀬戸際を彷徨っているせいで、突如聞こえたリスキアの声が現実のものかどうか判別がつかなかった。

 だがぼやけて見える姿は間違いなくリスキアだった。


「創造の女神は全てを創りし者……貴方も含めてね。簡単には死ねないわ。」


「だが余は既に貴様が創れるものの域を遥かに超えているのだ。さぁ、神界でだらけている全ての神々をここへ呼べ。然もなくば世界を破滅に追いやるぞ。」


 どのみちそのつもりでしょと言った後にリスキアは手に持つ杖を翳す。すると魔力が動き出し、杖の先端が輝きだした。


「行使封印……おのれリスキアーッ!!!」


 ナルキテラが叫ぶと同時に杖の輝きが解き放たれる。行使封印と呼ばれた光はこの空間全てへ満たされ視界が消え去る。


「はぁ、はぁ、ハルト……ごめんね。すぐに治すからね。」


 眩しくてよく見えないが、辛そうに息を切らし俺の頬を撫でるリスキアを感じた。

 そして口に柔らかくて温かい感触がすると、魔力が流れ込んできたのが分かった。


「はぁ、はぁ、はぁ……。」


 より激しくリスキアの呼吸が乱れていた。よほど魔力を行使したのだろう。


 すると温かい感覚が体中を巡る。痛みも激しかったが、それ以上にふわふわとした心地よさを感じた。

 体があっという間に楽になり軽くなった瞼を開くと、涙を滲ませたリスキアが微笑んでいた。


「こんなに辛い思いさせてごめんね。さぁ、今のうちに一旦逃げまーーーーー」


「力があり過ぎるというのは悲しいものだな。自分を創った母なる存在が切り札である神の権利を行使したところで、傷一つ付かぬのだからな。」


「リ、リスキア!!」


 俺の手を引き立ち上がろうとしたリスキアの胸から漆黒の剣が飛び出し、背後では憐れむかのような表情を浮かべナルキテラが見下ろしていた。


「くふっ……。」


 剣を引き抜かれたリスキアは口から血を吐き出し、倒れ込んで来たのを受け止める。


「リスキア!!リスキア!!!!」


 声をかけるが目を閉じて動かなくなってしまったリスキアに急いで回復魔法をかける。だが、胸の傷が塞がる事は無かった。


「足掻いても傷は塞がらぬぞ。クロトワに与えた力だが、余がクロトワと同じ力だと思わぬ事だな。それよりも回復したのなら再び戦いを始めるぞ。」


 許せない。よくもリスキアを……。


 黒い何がか心臓を鷲摑みする。


 漆黒の闇の中から湧き上がる力に全てを委ねたくなる。怒りに我を忘れそうになりながら拳を握り締めた。


『狂気に……のまれないで。』


『リスキア。』


 吐血しながらうっすらと瞳を開けたリスキアから念話が届く。その瞳から一筋の涙が零れ落ちた。

 この状況でも狂気にのまれないで欲しいとリスキアは懇願しているのだ。


 震える体を無理矢理抑え込み、どうにか怒りに感情を飲まれないようにしていると、突如体の震えとは違った振動を感じた。


「ちゅりゃぁーっ!!!!!」


 リスキアの魔法によりナルキテラの作り上げた結界のような空間は消え去り、巨大な石造りの空間のようなものが見えた。

 その天井を突き破り、俺の大好きな声が聞こえてきた。


「ハルト様ぁッ!!!!!!」


「転移!!!!」


 ナルキテラの向こう側からアイナの転移で俺の背後に3人が現れる。


「リスキア様?!」


 血を吐くリスキアを見た3人は詰め寄り、ナルキテラをキッと睨み付ける。


「ほぅ。まさか乗り越えるとはな。それだけで無く自力でここまで辿り着くとは驚きだな。」


「よくもリスキア様を……赦しません!!!!!」


「ルカ!全身全霊本気の全力でぶっ飛ばすよ!!!」


「ご主人様-!リスキア様をお願いねー?シロ頑張るよー!!!!!」


 俺の意思を差し置いて3人ともすぐに魔力を練り上げ戦闘態勢へ入った。

 シロの言葉が全てを語り、まるで以心伝心しているかのように3人の様子に動揺はみられなかった。


「創造神を救うことも、お前ら羽虫如きが余に盾突く事も全て無駄だぁ!!!」


「神龍剣・蒼波衝!!」


 怒気ともとれるナルキテラの魔力の暴走に対してルカは地面に剣を突き立てた。

 すると青い氷の衝撃波が広がっていき、ナルキテラの魔力を相殺する。


「小癪な!!」


「こしゃくじゃないよー?シロだよー?ちゅりゃりゃりゃりゃりゃりゃぁー!!!!!」


 距離を取ったナルキテラにシロが追撃を仕掛ける。純粋な神力だけの多量の手弾がナルキテラに迫る。

 だが、その全てをナルキテラは受け流した。


「……レリズラルグスラーッシュッ!!!!!!」


 アイナが限界まで鞘の中に蓄積させた魔力を解き放つ。神力の乗った魔力が剣閃となりナルキテラに迫る。

 

「ハァッ!!!!」


 漆黒の剣を即座に振り抜き、ナルキテラはアイナと同じように剣閃を生んだ。

 するとアイナ渾身の一撃を一振りの元に消し去ったのだった。


「まだです!神龍剣・氷天牙龍!!」


 ルカは氷の魔力で周囲を凍て付かせながら、巨大な氷の龍を生み出す。


「無駄だと言うことが……まだ分からぬかぁ!!!!!!」


 咆哮を上げるようにナルキテラは叫ぶ。そして両手を前に翳し、巨大な漆黒に染まった魔力の塊を放った。


 氷の龍は翼をはためかせ、歪な形をした魔力の塊へ食らい付く。引くこと無く鬩ぎ合い、最後には互いに爆音を生み消え失せたのだった。

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