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10-5 圧倒的な差



「……一体何をした。」


 大天使と名乗ったナルキテラは仲間に試練を与えたと言った。ルカ達に何かを仕掛けたのは言うまでも無い。


「余は言ったであろう。試練を乗り越えてこそ成長するものだ。まぁまず乗り越えることは出来ぬだろうがな。」


「何をしたと聞いてるんだ!!!」


「お前は何をそんなに苛立っているのだ?仲間がそんなに大切か?」


 ナルキテラは未だに椅子から立つことすら無く、それどころか俺の言葉を聞いてからは溜め息混じりに頬杖をついていた。


「当然だろ…。」


「当然?当然なわけがないであろう。全ての者が誕生してから死ぬまで己だけなのだ。それは永遠に変わることの無い摂理であるからな。」


「それはお前の中だけの話だっ!!」


「それこそお前の中だけの話だ。余はこの世の真理を述べただけである。綺麗事ばかりで浅はかな人間の感情論など塵屑以下だ。よってお前はお前の命だけを心配し足掻き、余を満足させる……それだけで良いのだ。」


「うるせぇ!!」


 こいつとは相容れない。話すだけ無駄だと分かった。だから俺は雷の魔力を身に纏う。こいつを倒して急いでルカ達の所へ向かわなくては。


「ほぅ。まずまずの力だな。全力で来るが良い。さぁ!!!」


 身を乗り出し興奮した様子でナルキテラは右手を差し出した。やってやる。そう口にして俺は走り出した。


 金色の雷の鎧を纏い更に剣を創り出して振り抜いた。

 一振りしただけで轟音を鳴らしてナルキテラに雷が襲いかかる。


「これも悪くはないが。」


 ナルキテラは差し出していた右手を振り払う素振りをする。すると万物を焼き尽くしてしまいそうな雷が掻き消えた。


「手は抜こう。だが塵が調子に乗りすぎなのは目に余るものがあるな。」


「…!?」


 魔力感知が働いた。


 ナルキテラが何かをした様子は無かった。


 分からない何かを危惧してナルキテラの背後へ転移する。すると俺のいた場所で爆発が起きた。


 何をしたのかが気になったが、戦闘中にも関わらず未だに優雅に座り油断しきっているナルキテラがそこにはいた。

 今だとナルキテラの首元目掛けて剣を振り下ろす。


「遅いぞ。どれだけ待たせるのだ。」


 ナルキテラは雷で出来た剣をたった2本の指だけで摘まんでいた。


「くっ!!雷光砲(ライトニングガン)!!」


 咄嗟の事態に超至近距離で逆の手を翳し雷光砲を放つ。だが、それさえもナルキテラは障壁をいつの間にか作り上げ容易く防いで見せた。


「ガハッ!?」


 何かが腹に当たる。だがまたしてもナルキテラに動きは無かった。


 何が起きたのかも分からずに吹き飛ばされ、口から血が吹き出る。


「余は楽しませろと言ったのだ。何だその低レベルな戦い方は。」


「……ぐふっ。う、うるせぇ。」


 こんなにダメージを受けたのはランスロット以来だった。急いで回復魔法をかけるが腹や口から血が溢れ出す。どうやら想像していたよりも重傷なようだった。


 痛ぇ……。そう思いながら急いで部位再生の魔法を放ち回復し、ナルキテラへ構え直す。


「ほぅ、死なぬとは驚きだな。まぁ、あの程度で死なれてはつまらなぬが。」


 魔力感知は働いた。だがナルキテラの攻撃は見えなかった。何か種があるはずだ。

 だが未だにナルキテラは椅子から動いてさえいない。


「だが戦闘中にも関わらず戸惑いが隠せていない。だから攻撃が遅れるのだ。何をしたのかが分からなかったようだから教えておいてやろう。」


「余計なお世話だ。」


「単に魔力を込めた羽根を飛ばしただけだ。お前には早過ぎて見えなかったみたいだがな。」


 ただの羽根だけでこれだけのダメージを受けるなど異常な強さにも程がある。このままではナルキテラの出方次第では即死さえ有り得るぞ。


 能力を底上げし即死回避するために、俺は雷の鎧に神力を混ぜていった。


「忌ま忌ましい力だ。鼻が曲がりそうなほどに匂うな。まぁ良い、それで余を楽しませるのであれば我慢しよう。」


「あぁ。お望み通り満足させてやらぁ!!」


 全身が白金に輝き、手に握る剣にも伝わっていく。大声を上げて自分に活を入れ走り出す。

 ナルキテラはようやく椅子から立ち上がった。


「剣か……久しく使っていないが余も剣を使おう。」


 ナルキテラも同じように邪神の力を魔力と融合させて剣を造り出した。

 禍々しい形となった剣を構えナルキテラは鋭く横凪に振り抜いた。

 するとスラッシュのように剣閃が飛び出す。


 剣閃を受けるそぶりだけ見せナルキテラの背後へ転移した。そして今度こそ迷う事無く剣を振り下ろす。


「芸が無い。」


 こちらを見る事も無くナルキテラは剣を受け止めた。そしてすぐに回し蹴りを放つ。


「ぐはっ!」


 腹に受け、吹き飛ばされ地面を転がされる。ナルキテラの攻撃は早過ぎる。そして攻撃力も半端ではない。

 全ての能力が高く未知数……今のところ倒せる気が全くしない。


 神力を使っていなかったら容易く腹が吹き飛んでいたであろう一撃に冷や汗が頬を伝う。


「早く立て。こないのならこちらから行くぞ。」


「くそっ、雷光砲!!!!」


 神力を纏っていた為に通常の雷光砲よりも威力が格段に上がった輝く稲妻がナルキテラに向かっていく。


 ナルキテラは動かない。結界を生み出すこともしない。ただ包むように巨大な黒い翼で前面を覆った。


 激しい音を鳴らして雷光砲はナルキテラにぶつかった。


 だがナルキテラは微動だにせず雷光砲を受け止め、全くの無傷で翼を広げた。


「つまらぬ。……踊ってみせよ。」


 団扇を扇ぐように翼を大きく振るう。すると複数の黒い羽根が飛び出してきた。


 一枚、二枚と躱していくが、構えていても目で捉える事がほぼ出来ずにやがて左腕に当たってしまった。

 先程よりも威力は下がっているようだったが、腕が吹き飛んだように感じる程の衝撃で体が回る。するとすぐに今度は右腕や両の足。そしてまた腕に当たり、本当に踊っているようになる。


 羽根の攻撃が終わった頃には両の手足が使い物にならず、左腕は辛うじて繋がっている状態だった。


「フハハ!!良き表情だ!!見事な舞であったぞ!!!!」


「ぐぁぁっ………。」


 お前に褒められても嬉しくなんかねーぞ。そう口にしたくても声にはならなかった。


 当たった瞬間に爆発を起こす羽根は、手足だけでなく体中を巻き込んでいた。

 神力を混ぜた筈の雷の鎧を吹き飛ばして。


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